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資料1-2-13診断基準等のアップデート案(第49回指定難病検討委員会資料) (47 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_25626.html |
出典情報 | 厚生科学審議会 疾病対策部会指定難病検討委員会(第49回 5/16)《厚生労働省》 |
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240 フェニルケトン尿症
○ 概要
1. 概要
フェニルケトン尿症(PKU)に代表とされるフェニルアラニン(Phe)の代謝経路の障害によって引き起こされ
る疾患群は、先天性アミノ酸代謝異常症の一種である。Phe は必須アミノ酸のひとつで、正常な蛋白合成を
営むためには体外から摂取する必要がある。この食事中の Phe は蛋白合成に用いられる以外は、主に Phe
水酸化酵素(PAH)によりチロシン(Tyr)に変換され Tyr 代謝経路で分解される。Phe 水酸化反応が障害され
た場合、Phe が蓄積し血中 Phe 値が上昇し、尿中には Phe のほかその代謝産物のフェニルピルビン酸が大
量に排泄されることから PKU と呼ばれている。過剰の Phe とともにこれらの代謝産物は正常の代謝を阻害
し、新生児・乳児期では脳構築障害による精神発達遅滞を代表とする臨床症状を引き起こすが、成人におい
てもさまざまな精神症状を引き起こしたり、酸化ストレスの成因となることが示唆されている。
2.原因
PAH は PAH 遺伝子によりコードされ、PAH 遺伝子の異常により酵素活性の低下を引き起こす。さらに、
PAH は補酵素としてテトラハイドロビオプテリン(BH4)を利用するため、BH4 の合成系あるいは再生系の代謝
経路の異常によっても PAH 酵素活性が低下する。BH4 は PAH の補酵素として利用される以外に、脳内のチ
ロシン水酸化酵素にも利用されるため、BH4 の低下は、ドーパの産生低下を生じ、ドーパミン、ノルアドレナリ
ン、アドレナリンの低下を引き起こす。またトリプトファン水酸化酵素の異常によるセロトニンの低下が起こる
ため、高 Phe 血症による中枢神経障害だけでなく、神経伝達物質の低下による重篤な中枢神経症状が出現
する。わが国で新生児マススクリーニングが開始されてから 2011 年度までの約 30 年間に累積で約 500 人
以上の高 Phe 血症(PKU、BH4 反応性高 Phe 血症、BH4 欠損症を含む)が発見さた。発生頻度は約7万人に
1例で、全国で年間 20 人前後発見される。
3.症状
通常生後数か月から2歳頃までに脳の発達障害を来す。小頭症、てんかん、重度の精神発達遅滞、行動
上の問題などの徴候と症状を示す。特有の尿臭(ネズミ尿臭、カビ臭)、赤毛、色白、湿疹がみられることが
ある。画像所見として脳萎縮、MRI にて白質病変を認めることがある。
4.治療法
新生児では早期に Phe 投与量を適切に制限して、数日のうちに血中 Phe 値が 10mg/dL 以下になるよう治
療する。そして血中 Phe 値が2~4mg6mg/dL(120~360µmol/L)まで低下するように Phe の摂取量を調節す
る。Phe 忍容能は症例により異なるので血中 Phe 値を連日定期的に測定しながら Phe の摂取量を決定する
(具体的には下記の PAH 欠損症の治療指針を参照)。このような初期治療は原則として入院して行う。PAH
欠損症であることが確定できれば、以下 PAH 欠損症の治療指針に従って低タンパク食と治療用特殊ミルク
による治療をすすめる。加えて、BH4 反応性高 Phe 血症は BH4 による薬物療法も適応となる。BH4 欠損症と
診断された場合には、BH4 による薬物療法および神経伝達物質の補充療法が必要となるので注意を要す
る。血中 Phe 値の治療目標は、全年齢で2~6mg/dL(120~360μmol/L)である(診療ガイドライン 2019)。
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○ 概要
1. 概要
フェニルケトン尿症(PKU)に代表とされるフェニルアラニン(Phe)の代謝経路の障害によって引き起こされ
る疾患群は、先天性アミノ酸代謝異常症の一種である。Phe は必須アミノ酸のひとつで、正常な蛋白合成を
営むためには体外から摂取する必要がある。この食事中の Phe は蛋白合成に用いられる以外は、主に Phe
水酸化酵素(PAH)によりチロシン(Tyr)に変換され Tyr 代謝経路で分解される。Phe 水酸化反応が障害され
た場合、Phe が蓄積し血中 Phe 値が上昇し、尿中には Phe のほかその代謝産物のフェニルピルビン酸が大
量に排泄されることから PKU と呼ばれている。過剰の Phe とともにこれらの代謝産物は正常の代謝を阻害
し、新生児・乳児期では脳構築障害による精神発達遅滞を代表とする臨床症状を引き起こすが、成人におい
てもさまざまな精神症状を引き起こしたり、酸化ストレスの成因となることが示唆されている。
2.原因
PAH は PAH 遺伝子によりコードされ、PAH 遺伝子の異常により酵素活性の低下を引き起こす。さらに、
PAH は補酵素としてテトラハイドロビオプテリン(BH4)を利用するため、BH4 の合成系あるいは再生系の代謝
経路の異常によっても PAH 酵素活性が低下する。BH4 は PAH の補酵素として利用される以外に、脳内のチ
ロシン水酸化酵素にも利用されるため、BH4 の低下は、ドーパの産生低下を生じ、ドーパミン、ノルアドレナリ
ン、アドレナリンの低下を引き起こす。またトリプトファン水酸化酵素の異常によるセロトニンの低下が起こる
ため、高 Phe 血症による中枢神経障害だけでなく、神経伝達物質の低下による重篤な中枢神経症状が出現
する。わが国で新生児マススクリーニングが開始されてから 2011 年度までの約 30 年間に累積で約 500 人
以上の高 Phe 血症(PKU、BH4 反応性高 Phe 血症、BH4 欠損症を含む)が発見さた。発生頻度は約7万人に
1例で、全国で年間 20 人前後発見される。
3.症状
通常生後数か月から2歳頃までに脳の発達障害を来す。小頭症、てんかん、重度の精神発達遅滞、行動
上の問題などの徴候と症状を示す。特有の尿臭(ネズミ尿臭、カビ臭)、赤毛、色白、湿疹がみられることが
ある。画像所見として脳萎縮、MRI にて白質病変を認めることがある。
4.治療法
新生児では早期に Phe 投与量を適切に制限して、数日のうちに血中 Phe 値が 10mg/dL 以下になるよう治
療する。そして血中 Phe 値が2~4mg6mg/dL(120~360µmol/L)まで低下するように Phe の摂取量を調節す
る。Phe 忍容能は症例により異なるので血中 Phe 値を連日定期的に測定しながら Phe の摂取量を決定する
(具体的には下記の PAH 欠損症の治療指針を参照)。このような初期治療は原則として入院して行う。PAH
欠損症であることが確定できれば、以下 PAH 欠損症の治療指針に従って低タンパク食と治療用特殊ミルク
による治療をすすめる。加えて、BH4 反応性高 Phe 血症は BH4 による薬物療法も適応となる。BH4 欠損症と
診断された場合には、BH4 による薬物療法および神経伝達物質の補充療法が必要となるので注意を要す
る。血中 Phe 値の治療目標は、全年齢で2~6mg/dL(120~360μmol/L)である(診療ガイドライン 2019)。
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