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第2章 こどもの自殺の状況と対策 本文 (10 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/jisatsu/jisatsuhakusyo2024.html |
出典情報 | 令和6年版自殺対策白書(10/29)《厚生労働省》 |
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COLUMN 1
ゲートキーパーのサポートを
社会全体に広げてこどもの危機を守る
(岩手医科大学神経精神科学講座 教授 大塚耕太郎)
動機・原因
令和4年版自殺対策白書の第2章第3節学生・生徒等の自殺の分析(82ページ、83ページ)で
は学生・生徒等の自殺の原因・動機を示している。原因・動機で高い割合を占めるのは、小学生で
は家庭問題(男子35.9%、女子38.3%)、次いで学校問題(男子21.9%、女子21.7%)、中学生では
学校問題(男子31.0%、女子38.6%)
、次いで家庭問題(男子19.8%、女子26.0%)、高校生は男
子が学校問題(35.6%)、健康問題(15.5%)、女子は健康問題(31.8%)、学校問題(27.9%)で
ある。これらの結果は、こどものライフステージやこころの発達段階と課題や状況、立場と自殺の
発生が少なからず関連している可能性を示している。
第2章
自殺の危険因子、自殺念慮や心理状態
こどもの自殺の状況と対策
自殺の危険因子として、自殺企図歴や自傷行為歴、喪失体験や苦痛な体験、学校問題や生活問題、
精神疾患の既往や、サポートの欠如、企図手段への容易なアクセス、自殺につながりやすい心理状
態、望ましくない対処行動、そのほか個別なリスクなどが知られている(自殺の危険因子と防御因
子(ゲートキーパー養成研修テキストより))。自殺を考えている人の心理として、絶望感や孤独感、
自己否定感、将来の希望がないという見通しのなさなどがそれぞれの状況で生じる。そして、諦め
や失望などから、自殺以外に問題を解決する手段はない、生きている意味がないと考え、自殺念慮
が生じ、不安焦燥感が加わり、自殺行動に至ってしまう。
こどものSOSへの感度を上げる
こどもの心理では、悩み、ストレスにさらされると、心はまだ未成熟であり、抑圧、否認、行動
化など、様々な防衛機制が働く場合が少なくない。悩むときには追い詰められ、抱えている深刻さ
が直接的に表現されない可能性を想定しておく必要がある。周囲がこどものSOSのサインに対する
感度を上げることが求められる。
衝動性と迅速な対応の必要性~こどもの自殺の原因・動機は「不詳」が多い
こどもや若年の自殺企図の特徴の一つとして、衝動性が高い傾向が挙げられる。したがって、こ
どもや若年で自殺を考えている場合には、それほど時間がたたないうちに自殺を図ってしまう傾向
が成人よりも顕著である。先述した令和4年版自殺対策白書では、原因や動機が不詳の割合は、小
学生が男子46.9%、女子41.7%、中学生が男子43.4%、女子28.6%、高校生が男子31.2%、女子
23.5%であり、特に小学生及び中学生で割合が高く、男子は女子より割合が高い。このことは、こ
どもが周囲に抱えていることを話せないことや、つらいことや悩みを一人で抱えることの困難さも
示唆している。したがって、周囲はこどものサインを見逃さずに、自殺のリスクに気付いたら、迅
速な対応やサポートの体制を構築し、連携を図ることが重要である。そして、いじめや不登校など
の学校問題や、生活困窮や児童虐待、ひきこもりなどの生活上の問題をなくすことや対応すること、
健康問題に早めに気付き、連携することなど、地域社会全体を通した対策が求められる。
ゲートキーパーのサポートを社会全体に広げる
核家族、両親の共働き、ひとり親家庭などをはじめとして、様々なこどもを支える困難さがある。
社会全体がこどもや家庭に対する支援を広げていくことが求められる。こころの悩みや病気のある
人たちに対して、周囲は偏見(スティグマ)を抱き、「見て見ぬふり」をしてしまうことがある。一
方、こども自身がこころの不調に陥ったときに、「自分はこころの病気なんかじゃない」という偏見
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ゲートキーパーのサポートを
社会全体に広げてこどもの危機を守る
(岩手医科大学神経精神科学講座 教授 大塚耕太郎)
動機・原因
令和4年版自殺対策白書の第2章第3節学生・生徒等の自殺の分析(82ページ、83ページ)で
は学生・生徒等の自殺の原因・動機を示している。原因・動機で高い割合を占めるのは、小学生で
は家庭問題(男子35.9%、女子38.3%)、次いで学校問題(男子21.9%、女子21.7%)、中学生では
学校問題(男子31.0%、女子38.6%)
、次いで家庭問題(男子19.8%、女子26.0%)、高校生は男
子が学校問題(35.6%)、健康問題(15.5%)、女子は健康問題(31.8%)、学校問題(27.9%)で
ある。これらの結果は、こどものライフステージやこころの発達段階と課題や状況、立場と自殺の
発生が少なからず関連している可能性を示している。
第2章
自殺の危険因子、自殺念慮や心理状態
こどもの自殺の状況と対策
自殺の危険因子として、自殺企図歴や自傷行為歴、喪失体験や苦痛な体験、学校問題や生活問題、
精神疾患の既往や、サポートの欠如、企図手段への容易なアクセス、自殺につながりやすい心理状
態、望ましくない対処行動、そのほか個別なリスクなどが知られている(自殺の危険因子と防御因
子(ゲートキーパー養成研修テキストより))。自殺を考えている人の心理として、絶望感や孤独感、
自己否定感、将来の希望がないという見通しのなさなどがそれぞれの状況で生じる。そして、諦め
や失望などから、自殺以外に問題を解決する手段はない、生きている意味がないと考え、自殺念慮
が生じ、不安焦燥感が加わり、自殺行動に至ってしまう。
こどものSOSへの感度を上げる
こどもの心理では、悩み、ストレスにさらされると、心はまだ未成熟であり、抑圧、否認、行動
化など、様々な防衛機制が働く場合が少なくない。悩むときには追い詰められ、抱えている深刻さ
が直接的に表現されない可能性を想定しておく必要がある。周囲がこどものSOSのサインに対する
感度を上げることが求められる。
衝動性と迅速な対応の必要性~こどもの自殺の原因・動機は「不詳」が多い
こどもや若年の自殺企図の特徴の一つとして、衝動性が高い傾向が挙げられる。したがって、こ
どもや若年で自殺を考えている場合には、それほど時間がたたないうちに自殺を図ってしまう傾向
が成人よりも顕著である。先述した令和4年版自殺対策白書では、原因や動機が不詳の割合は、小
学生が男子46.9%、女子41.7%、中学生が男子43.4%、女子28.6%、高校生が男子31.2%、女子
23.5%であり、特に小学生及び中学生で割合が高く、男子は女子より割合が高い。このことは、こ
どもが周囲に抱えていることを話せないことや、つらいことや悩みを一人で抱えることの困難さも
示唆している。したがって、周囲はこどものサインを見逃さずに、自殺のリスクに気付いたら、迅
速な対応やサポートの体制を構築し、連携を図ることが重要である。そして、いじめや不登校など
の学校問題や、生活困窮や児童虐待、ひきこもりなどの生活上の問題をなくすことや対応すること、
健康問題に早めに気付き、連携することなど、地域社会全体を通した対策が求められる。
ゲートキーパーのサポートを社会全体に広げる
核家族、両親の共働き、ひとり親家庭などをはじめとして、様々なこどもを支える困難さがある。
社会全体がこどもや家庭に対する支援を広げていくことが求められる。こころの悩みや病気のある
人たちに対して、周囲は偏見(スティグマ)を抱き、「見て見ぬふり」をしてしまうことがある。一
方、こども自身がこころの不調に陥ったときに、「自分はこころの病気なんかじゃない」という偏見
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