ＯＤＡの現状

資料Ⅱ－９－６

◯ ＯＤＡ事業の中には、計画の不備などにより、多額の資金を投入しながらも期初の成果を上げられていない事業が存
在。円借款であっても、相手国側の負担する総事業費の大幅な上振れや慢性的な赤字につながっている例もあり、被
支援国の国民に資金返済と併せて財政負担を生じさせている。相手国への直接的な裨益のみならず、事業完成後も、
被支援国の将来的な自立に向けて中長期で見て相応しい事業になっているか、事業選定の理由も含め精査が必要。
事例① 魚市場の建設計画（アフリカ、無償）
○供与額：10億円
○プロジェクト概要：流通過程での鮮魚の
鮮度低下を防ぐため、荷捌場などの建設、
製氷機・貯氷庫などの調達を支援。

・ 2011年に完成し、製氷機での氷生産
は開始されたものの、2018年時点でも
魚の販売が始まっていなかった。現在も
コロナ等の影響で調整が停滞。
【原因】・ 市街地や既存市場から遠く交通の便が悪い。（川を挟み10km以上）
・ 既存市場の利用者が移転後の顧客確保に対して不安。 等

事例③ 広域防災システム整備計画（アジア、無償）
○供与額：10億円
○プロジェクト概要：当該国の全土におい
て、地震・津波等の観測機器や、排水ポン
プ車等を整備。

・ＩＴ震度計を200ヶ所設置予定だっ
たが（予備含め240式を調達） 、2014年
の完成後、今年になるまで未設置。その
後フォローアップし10月末時点で99台設置。

【原因】・ 設置時になりデータ伝送できない箇所がほとんどと判明し、回収。
(参考)・ 別の技協でも同じ機材が調達されており、不具合は判明していた。

事例② コンテナ港の開発事業（中南米、有償）
○契約額：112億円
○プロジェクト概要：コンテナ貨物のターミナル、
航路、アクセス道路等の施設整備を支援。

・ 2013～15年のコンテナ貨物取扱量ゼロ。
・ 事業期間は３年４ヶ月遅延、総事業費
は150億円から233億円に上振れ。
・ その後も年1千万ドル以上の赤字（円借
款の利払い等を含む）。
【原因】・ 途中の計画変更でコンテナ積み降ろしクレーンを事業範囲外に。
・ 予想以上の土砂で航路が埋没し、小型船しか利用できない。

事例④ 空港の保安計画（アジア、無償）
○供与額：19億円
○プロジェクト概要：国際空港で受託手荷物
爆発物検知装置や車両用X線検査装置など
セキュリティ検査機材の整備を支援。

・2016年の事業完成後、３年後の2019
年においても大部分の機材が非稼働。
【原因】・ 現場の空港保安隊は、「計画段階で機材の仕様が空港管理者となる
行政庁を中心に検討され、ユーザー部門である同保安隊や空港利用者
から見て最適と言えない機材が導入された」と主張。