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参考資料3-2 (66 ページ)
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公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_32513.html |
出典情報 | 厚生科学審議会 感染症部会(第74回 4/12)《厚生労働省》 |
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戦略 5.1 薬剤耐性の発生・伝播機序及び社会経済に与
える影響を明らかにするための研究の推進
背景
○
薬剤耐性(AMR)の伝播経路を断ち切るためには、どの種類の微生物が、どのような機序により
耐性を獲得し、どの経路で、どの程度広がっているのか、という薬剤耐性(AMR)の生態系全体を
正確に把握する必要がある。こうした薬剤耐性(AMR)の生態系を解明する取組が世界的に進めら
れている100。
○
抗微生物剤への耐性機構の解明、新たな予防・診断・治療法の開発など薬剤耐性(AMR)に対
する研究開発を推進するためには、薬剤耐性微生物(ARO)の分離株の保存及び薬剤耐性遺伝
子(ARG)を含むゲノム情報の蓄積が重要である。また、薬剤耐性(AMR)の獲得に至る疫学的なリ
スク因子の同定及びその耐性機序のひも付けが、効果的かつ実効可能な薬剤耐性(AMR)対策
の促進のために重要である。我が国では、2019 年に国立感染症研究所による「薬剤耐性菌バンク
(JARBB)」を設置し、日本では希少な薬剤耐性菌株等についても収集できるよう、海外との協力体
制を構築している。
○
また、疾病負荷(死亡率、合併症発生率、入院期間延長等)、経済負荷(医療費の増大、機会費
用等)など、薬剤耐性(AMR)が社会、経済に与える影響について、米国、欧州などで試算がなさ
れており、こうしたデータを元に、英国の薬剤耐性(AMR)レビュー委員会(オニール・コミッション)
は、このまま対策が取られなければ、2050 年までに全世界における死者数は 1000 万人に上り、
1,000 兆ドルの国内総生産が失われると試算している101。
〇
厚生労働省の研究班で行った診断群分類 (DPC)データを用いた試算によると、メチシリン耐性
黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症症例の入院費用は、非メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感
染症症例に比し、約 3.4 倍、在院日数は約 3.0 倍、死亡率は 3.7 倍であった。この結果を 2014 年
の診断群分類に基づく診療報酬包括支払制度(DPC/PDPS)を導入済みの 1,584 病院全体に外
挿したメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症による疾病負荷は、2,100 億円の入院費用増
加(全入院医療費の 3.41%)、434 万日の在院日数増加(全在院日数 3.02%)、14 万 3000 人の
死亡数増加(全死亡の 3.62%)と推計された102。また、過去に薬剤耐性菌の集団発生を経験した
病院に協力を得た同研究班による調査研究では、集団発生による経済的損失が、封じ込め費用
は最高で 6,980 万円、生産性損失は最高で4億 7,600 万円に上ること、及び早期の情報開示を含
めた対応が損失を抑える可能性が示されている103。
100
D.G. Joakim Larsson
& Carl-Fredrik FlachNature Reviews Microbiology 20, 257-269, 2022
(https://www.nature.com/articles/s41579-021-00649-x)
101
Antimicrobial Resistance: Tackling a crisis for the health and wealth of nations. The Review on Antimicrobial Resistance
Chaired by Jim O’Neill, December 2014
102
Uematsu H, Yamashita K, Kunisawa S, Fushimi K, Imanaka Y. Estimating the disease burden of methicillin-resistant
Staphylococcus aureus in Japan: Retrospective database study of Japanese hospitals. PLoS One. 2017;12(6):e0179767.
Published 2017 Jun 27. doi:10.1371/journal.pone.0179767 平成 28 年度厚生労働科学研究費補助金(政策科学総合研究事
業) 厚生労働科学研究費補助金 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究事業「薬剤耐性菌の蔓延に関する健康
及び経済学的リスク評価に関する研究」
103
Morii D, Tomono K, Imanaka Y. Economic impact of antimicrobial-resistant bacteria outbreaks on Japanese hospitals.
Am J Infect Control. 2020;48(10):1195-1199. doi:10.1016/j.ajic.2019.12.006 2019 年度厚生労働行政推進調査事業費補
助金(新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究事業)「薬剤耐性(AMR)アクションプランの実行に関する研究」
薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン(2023-2027) | 66
える影響を明らかにするための研究の推進
背景
○
薬剤耐性(AMR)の伝播経路を断ち切るためには、どの種類の微生物が、どのような機序により
耐性を獲得し、どの経路で、どの程度広がっているのか、という薬剤耐性(AMR)の生態系全体を
正確に把握する必要がある。こうした薬剤耐性(AMR)の生態系を解明する取組が世界的に進めら
れている100。
○
抗微生物剤への耐性機構の解明、新たな予防・診断・治療法の開発など薬剤耐性(AMR)に対
する研究開発を推進するためには、薬剤耐性微生物(ARO)の分離株の保存及び薬剤耐性遺伝
子(ARG)を含むゲノム情報の蓄積が重要である。また、薬剤耐性(AMR)の獲得に至る疫学的なリ
スク因子の同定及びその耐性機序のひも付けが、効果的かつ実効可能な薬剤耐性(AMR)対策
の促進のために重要である。我が国では、2019 年に国立感染症研究所による「薬剤耐性菌バンク
(JARBB)」を設置し、日本では希少な薬剤耐性菌株等についても収集できるよう、海外との協力体
制を構築している。
○
また、疾病負荷(死亡率、合併症発生率、入院期間延長等)、経済負荷(医療費の増大、機会費
用等)など、薬剤耐性(AMR)が社会、経済に与える影響について、米国、欧州などで試算がなさ
れており、こうしたデータを元に、英国の薬剤耐性(AMR)レビュー委員会(オニール・コミッション)
は、このまま対策が取られなければ、2050 年までに全世界における死者数は 1000 万人に上り、
1,000 兆ドルの国内総生産が失われると試算している101。
〇
厚生労働省の研究班で行った診断群分類 (DPC)データを用いた試算によると、メチシリン耐性
黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症症例の入院費用は、非メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感
染症症例に比し、約 3.4 倍、在院日数は約 3.0 倍、死亡率は 3.7 倍であった。この結果を 2014 年
の診断群分類に基づく診療報酬包括支払制度(DPC/PDPS)を導入済みの 1,584 病院全体に外
挿したメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症による疾病負荷は、2,100 億円の入院費用増
加(全入院医療費の 3.41%)、434 万日の在院日数増加(全在院日数 3.02%)、14 万 3000 人の
死亡数増加(全死亡の 3.62%)と推計された102。また、過去に薬剤耐性菌の集団発生を経験した
病院に協力を得た同研究班による調査研究では、集団発生による経済的損失が、封じ込め費用
は最高で 6,980 万円、生産性損失は最高で4億 7,600 万円に上ること、及び早期の情報開示を含
めた対応が損失を抑える可能性が示されている103。
100
D.G. Joakim Larsson
& Carl-Fredrik FlachNature Reviews Microbiology 20, 257-269, 2022
(https://www.nature.com/articles/s41579-021-00649-x)
101
Antimicrobial Resistance: Tackling a crisis for the health and wealth of nations. The Review on Antimicrobial Resistance
Chaired by Jim O’Neill, December 2014
102
Uematsu H, Yamashita K, Kunisawa S, Fushimi K, Imanaka Y. Estimating the disease burden of methicillin-resistant
Staphylococcus aureus in Japan: Retrospective database study of Japanese hospitals. PLoS One. 2017;12(6):e0179767.
Published 2017 Jun 27. doi:10.1371/journal.pone.0179767 平成 28 年度厚生労働科学研究費補助金(政策科学総合研究事
業) 厚生労働科学研究費補助金 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究事業「薬剤耐性菌の蔓延に関する健康
及び経済学的リスク評価に関する研究」
103
Morii D, Tomono K, Imanaka Y. Economic impact of antimicrobial-resistant bacteria outbreaks on Japanese hospitals.
Am J Infect Control. 2020;48(10):1195-1199. doi:10.1016/j.ajic.2019.12.006 2019 年度厚生労働行政推進調査事業費補
助金(新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究事業)「薬剤耐性(AMR)アクションプランの実行に関する研究」
薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン(2023-2027) | 66