よむ、つかう、まなぶ。
【参考資料2】長谷川参考人提出資料 (12 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_49021.html |
出典情報 | 精神保健医療福祉の今後の施策推進に関する検討会(第4回 1/15)《厚生労働省》 |
ページ画像
ダウンロードした画像を利用する際は「出典情報」を明記してください。
低解像度画像をダウンロード
プレーンテキスト
資料テキストはコンピュータによる自動処理で生成されており、完全に資料と一致しない場合があります。
テキストをコピーしてご利用いただく際は資料と付け合わせてご確認ください。
精神科病院における身体的拘束
行動」が多いことから、入院患者に占める高齢者や認知症の割合の増加や医療安全意識の高ま
りが、身体拘束件数の増加につながっているのではないかとの推察がある(28)。認知症を含む
器質性精神障害との診断を受けた患者及び 75 歳以上の患者において、身体的拘束を実施され
る割合が有意に高いとする研究もある(29)。
厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部が、精神病床における隔離・身体的拘束の実態調査(30)
を分析して令和 3(2021)年にまとめた結果も、高齢者における身体的拘束の増加や、主診断
における認知症等の器質性精神疾患の増加を踏まえ、身体的拘束指示の増加の背景には高齢化
に伴う認知症等の増加が影響している可能性があるとしている(31)。
他方、認知症の増加だけでは認知症入院者の入院形態として想定しにくい任意入院において
も身体的拘束が増加傾向であるため、身体的拘束の増加要因は説明できない可能性があるとの
指摘もある(32)。その場合、考え得る他の要因として以下が挙げられる。
2
精神科病院の人手不足
日本の精神科病院における病床数は精神科医の人数に比して非常に多く、入院治療に頼る医
療形態になっているとの指摘がある。日本の人口 10 万人当たり精神科医師数は他国と比べて
著しく少ないわけではないものの、人口 10 万人当たりの精神病床数は突出しており、精神科
医師 1 人当たりの負担は大きいと考えられている(33)。
精神病床数は、昭和 35(1960)年には約 9 万 5000 床であったのに対し、平成 6(1994)年
には約 36 万床にまで増加した(34)。こうした増加の要因としては、「精神衛生法」(昭和 25 年
(35)
の制定及び精神病院増設に向けた政府の施策が挙げられる。昭和 25(1950)年、
法律第 123 号)
精神衛生法の制定によって従来の私宅監置制度(36)は廃止され、長期にわたって束縛する必要
のある精神障害者は原則として精神病院又は精神病室に収容することとされた(37)。
政府は昭和 29(1954)年に民間精神科病院に対する国庫補助を、昭和 35(1960)年には医
療金融公庫による精神科病院建設への融資を開始し(38)、また昭和 36(1961)年には措置入院(39)
に対する国庫負担率を引き上げ、精神科病院の増加を後押しし、精神科病院の新築又は増築ラッ
シュを招来したとされる(40)。
㉘
三宅美智ほか「精神病床における拘束に関する 15 年間の変化」『日本精神科看護学術集会誌』60(2), 2018,
pp.129-133.
㉙ 加藤博之・長谷川利夫「「精神保健福祉資料」(630 調査)から考える精神科病院の身体拘束実施状況」『川崎市
立看護短期大学紀要』25(1), 2020.3, pp.6, 8, 13-14. <https://kawa-ccon.repo.nii.ac.jp/record/617/files/25-1.pdf>
㉚ 山之内 前掲注⑹
㉛ 「精神病床の隔離・身体的拘束で実態調査分析結果 指示の背景に高齢化や認知症の増加も影響」『週刊保健衛
生ニュース』2107 号, 2021.4.26, pp.49-50.
㉜ 東 前掲注⑽, pp.947-948.
㉝ 医療問題弁護団「精神科医療における身体拘束に関する意見書」2018.7.18. <https://iryo-bengo.com/wp/2018/07/18/>
㉞ 長谷川利夫「「身体拘束」からみる日本の人権状況」『世界』921 号, 2019.6, p.187.
㉟ 同法は昭和 62(1987)年に改正されて「精神保健法」となり、さらに平成 7(1995)年の改正によって精神保
健福祉法となった。
㊱ 私宅監置とは、精神障害者を自宅の一室や敷地内の小屋などに監禁する措置をいう。
㊲ 藤野ヤヨイ「我が国における精神障害者処遇の歴史的変遷―法制度を中心に―」『新潟青陵大学紀要』5 号,
2005.3, pp.205-207. <https://doi.org/10.32147/00001144>
㊳ 井上新平「精神医療の動向」『公衆衛生研究』47(2), 1998.6, p.83. <https://www.niph.go.jp/journal/data/47-2/1998
47020002.pdf>
㊴ 自身を傷つけ、又は他人に害を及ぼすおそれがあると都道府県知事が認めた精神障害者について、本人及び関
係者の同意なしに強制的に入院させることができる制度。
㊵ 藤野 前掲注㊲, p.207.
国立国会図書館 調査及び立法考査局
レファレンス
12
884 号
2024. 8
71
行動」が多いことから、入院患者に占める高齢者や認知症の割合の増加や医療安全意識の高ま
りが、身体拘束件数の増加につながっているのではないかとの推察がある(28)。認知症を含む
器質性精神障害との診断を受けた患者及び 75 歳以上の患者において、身体的拘束を実施され
る割合が有意に高いとする研究もある(29)。
厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部が、精神病床における隔離・身体的拘束の実態調査(30)
を分析して令和 3(2021)年にまとめた結果も、高齢者における身体的拘束の増加や、主診断
における認知症等の器質性精神疾患の増加を踏まえ、身体的拘束指示の増加の背景には高齢化
に伴う認知症等の増加が影響している可能性があるとしている(31)。
他方、認知症の増加だけでは認知症入院者の入院形態として想定しにくい任意入院において
も身体的拘束が増加傾向であるため、身体的拘束の増加要因は説明できない可能性があるとの
指摘もある(32)。その場合、考え得る他の要因として以下が挙げられる。
2
精神科病院の人手不足
日本の精神科病院における病床数は精神科医の人数に比して非常に多く、入院治療に頼る医
療形態になっているとの指摘がある。日本の人口 10 万人当たり精神科医師数は他国と比べて
著しく少ないわけではないものの、人口 10 万人当たりの精神病床数は突出しており、精神科
医師 1 人当たりの負担は大きいと考えられている(33)。
精神病床数は、昭和 35(1960)年には約 9 万 5000 床であったのに対し、平成 6(1994)年
には約 36 万床にまで増加した(34)。こうした増加の要因としては、「精神衛生法」(昭和 25 年
(35)
の制定及び精神病院増設に向けた政府の施策が挙げられる。昭和 25(1950)年、
法律第 123 号)
精神衛生法の制定によって従来の私宅監置制度(36)は廃止され、長期にわたって束縛する必要
のある精神障害者は原則として精神病院又は精神病室に収容することとされた(37)。
政府は昭和 29(1954)年に民間精神科病院に対する国庫補助を、昭和 35(1960)年には医
療金融公庫による精神科病院建設への融資を開始し(38)、また昭和 36(1961)年には措置入院(39)
に対する国庫負担率を引き上げ、精神科病院の増加を後押しし、精神科病院の新築又は増築ラッ
シュを招来したとされる(40)。
㉘
三宅美智ほか「精神病床における拘束に関する 15 年間の変化」『日本精神科看護学術集会誌』60(2), 2018,
pp.129-133.
㉙ 加藤博之・長谷川利夫「「精神保健福祉資料」(630 調査)から考える精神科病院の身体拘束実施状況」『川崎市
立看護短期大学紀要』25(1), 2020.3, pp.6, 8, 13-14. <https://kawa-ccon.repo.nii.ac.jp/record/617/files/25-1.pdf>
㉚ 山之内 前掲注⑹
㉛ 「精神病床の隔離・身体的拘束で実態調査分析結果 指示の背景に高齢化や認知症の増加も影響」『週刊保健衛
生ニュース』2107 号, 2021.4.26, pp.49-50.
㉜ 東 前掲注⑽, pp.947-948.
㉝ 医療問題弁護団「精神科医療における身体拘束に関する意見書」2018.7.18. <https://iryo-bengo.com/wp/2018/07/18/>
㉞ 長谷川利夫「「身体拘束」からみる日本の人権状況」『世界』921 号, 2019.6, p.187.
㉟ 同法は昭和 62(1987)年に改正されて「精神保健法」となり、さらに平成 7(1995)年の改正によって精神保
健福祉法となった。
㊱ 私宅監置とは、精神障害者を自宅の一室や敷地内の小屋などに監禁する措置をいう。
㊲ 藤野ヤヨイ「我が国における精神障害者処遇の歴史的変遷―法制度を中心に―」『新潟青陵大学紀要』5 号,
2005.3, pp.205-207. <https://doi.org/10.32147/00001144>
㊳ 井上新平「精神医療の動向」『公衆衛生研究』47(2), 1998.6, p.83. <https://www.niph.go.jp/journal/data/47-2/1998
47020002.pdf>
㊴ 自身を傷つけ、又は他人に害を及ぼすおそれがあると都道府県知事が認めた精神障害者について、本人及び関
係者の同意なしに強制的に入院させることができる制度。
㊵ 藤野 前掲注㊲, p.207.
国立国会図書館 調査及び立法考査局
レファレンス
12
884 号
2024. 8
71