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【参考資料2】長谷川参考人提出資料 (25 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_49021.html
出典情報 精神保健医療福祉の今後の施策推進に関する検討会(第4回 1/15)《厚生労働省》
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精神科病院における身体的拘束

契機として、精神障害者に対する過剰な力の行使を防止する法案を労働党議員が下院に提出
し(114)、翌 2018 年 11 月 1 日に力の行使法が制定され(115)、2022 年 3 月 31 日に施行された。
(3)力の行使法の概要
力の行使法は、不適切な力の行使を防止するために必要な措置を明確に定め、精神保健施設
における力の行使に関する説明責任と透明性を確保することを目的とした(116)、全 17 条から成
る法律である。身体的拘束の行動制限の在り方に特化した立法は、世界的にも珍しいとされ
る(117)。その概要は以下のとおりである。
力の行使法において、「力の行使」とは、①患者に対する身体による拘束・機械的拘束・薬
品を用いた拘束の実施及び②隔離を指す(第 1 条)。
精神保健施設を運営する医療機関は、施設の責任者を任命する義務を負う(第 2 条)。施設
の責任者は、当該施設で働く職員による力の行使に関して方針を公表しなければならず、公表
された方針は、施設で働く職員による力の行使を削減するためにいかなる措置を講じるかを定
めなければならない(第 3 条)。施設の責任者は患者に対し、職員による力の行使に対する患
者の権利についての情報を提供しなければならず(第 4 条)、また職員に対し、力の行使に関
する適切な教育を提供しなければならない(第 5 条)。
施設の責任者は、当該施設で働く職員による患者に対する力の行使の記録を保管しなければ
ならない(第 6 条)。国務大臣は、施設で働く職員による力の行使に関する統計を毎年末に公
表しなければならない(第 7 条)。
国務大臣は、施設で働く職員による力の行使の結果として生じた患者の死亡に関し、
「2009 年検
死官及び刑事司法改革法」に基づいて作成された報告書を審査し、審査結果を公表しなければな
らない(第 8 条)
。施設の責任者は、当該施設において患者が死亡又は重傷を負った場合、責任者
は関係機関によって作成された死亡又は重傷の調査に関する指針を考慮する必要がある(第 9 条)

警察官は、精神保健施設で働く職員を支援する任務を行う場合、合理的に実行可能である限
り、ボディカメラを装着し、作動させなければならない(第 12 条)。
(4)立法の効果及び反応
『オブザーバー』紙の記事によれば、力の行使法の施行後 1 年間の統計において、ルイス青
年を拘束した際に用いられた地面拘束と手足身体拘束は、非アフリカ系イギリス人の入院患者
に対しては減少(それぞれ 38% と 14%)したのに対し、アフリカ系イギリス人の入院患者に
対しては増加(それぞれ 9% と 20%)したとされる(118)。ルイス青年の遺族は、法の制定は前
進であったが、患者の拘束において人種差別が続いていると指摘している(119)。
(114) Rachel Roberts,“Police officers cleared over death of black mental health patient they restrained with ʻexcessive forceʼ,”
Independent, 7 October 2017. <https://www.independent.co.uk/news/uk/home-news/metropolitan-police-officers-clearedrestraint-death-bethlem-royal-hospital-olaseni-lewis-seni-s-law-steve-reed-a7987531.html>
(115) Mental Health Units (Use of Force) Act 2018 c.27. op.cit.(111)
(116) “Mental Health Units (Use of Force) Act 2018,”7 December 2021. Government of United Kingdom website <https://
www.gov.uk/government/publications/mental-health-units-use-of-force-act-2018>
(117) 高嶋里枝「翻訳:イングランド・2018 年精神保健施設(力の行使)法」『法学研究論集』56 号, 2022.2, p.162.
<http://hdl.handle.net/10291/22181>
(118) “Black mental health patients more likely to be injured at hands of police,”Observer, 17 Feb 2024.
(119) ibid. ただし、拘束による年間の負傷率は、アフリカ系イギリス人の患者が関与した事案では 4.4% に上昇した
のに対し、非アフリカ系イギリス人の患者の事案では 6.7% 上昇しており、『ガーディアン』紙は「アフリカ系イ

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レファレンス

884 号

国立国会図書館 調査及び立法考査局

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