よむ、つかう、まなぶ。

MC plus(エムシープラス)は、診療報酬・介護報酬改定関連のニュース、

資料、研修などをパッケージした総合メディアです。


【参考資料2】長谷川参考人提出資料 (26 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_49021.html
出典情報 精神保健医療福祉の今後の施策推進に関する検討会(第4回 1/15)《厚生労働省》
低解像度画像をダウンロード

資料テキストはコンピュータによる自動処理で生成されており、完全に資料と一致しない場合があります。
テキストをコピーしてご利用いただく際は資料と付け合わせてご確認ください。

精神科病院における身体的拘束

なお、現状では精神保健施設が慢性的に逼(ひっ)迫しており、多くの精神疾患の患者が一
般病棟において治療を受けつつあるため、力の行使法が精神保健施設での拘束のみを対象とし
ている点に懸念を示す意見がある(120)。


イタリア

(1)精神医療改革と機械的拘束
イタリアでは、広く知られているとおり、1978 年に制定された法律第 180 号「自発的及び
義務的な評価及び治療(Accertamenti e trattamenti sanitari volontari e obbligatori)」によって、精
神科病院の新設、既存の精神科病院への新規入院、1980 年以降の再入院が禁止され(121)、精神
医療サービスの提供基盤は地域に移行された(122)。以後、全ての精神科病院は 1999 年までに閉
鎖された(123)。各地域には精神科病院に代わって、精神保健センター(124)、デイケアセンター、
居 住 施 設、「 診 断 と 治 療 の た め の 精 神 科 サ ー ビ ス(Servizio Psichiatrico di Diagnosi e Cura:
SPDC)」などから成る精神保健サービスネットワークが構築された(125)。
このうち SPDC は、急性期の患者のために総合病院の中に設置された救急病棟であり、1 病
院当たり 15 床以下の病床を備えている(126)。
イタリアの精神医療改革は精神科病院の閉鎖と地域の精神保健サービスの構築に集中し、拘
束の問題が焦点化されることはなく(127)、精神科病院が全面的に廃止された後も、多くの精神
医療サービスにおいて、機械的拘束は継続して実施された(128)。機械的拘束がイタリアにおけ
る精神保健サービスの重要な課題として認識され始めたのは、1990 年代の終わりから 2000 年
代の初めとされる(129)。
(2)法律上の規定及び判例
患者の身体的拘束に関する精神科医の権限について具体的に定めた法律はイタリアに存在せ
ず、この権限をいつ、いかなる目的で、どのように行使することができるかも定められていな
い(130)。破毀院が 2018 年に下した判決は、刑法第 54 条に照らしつつ、機械的拘束の使用が正
ギリス人の患者が、それ以外の患者よりも負傷する可能性が高かったというわけではない」と報じている。Nic
Murray,“Steep rise in black mental health patients injured while restrained by police,”Guardian, 17 Feb, 2024. <https://
www.theguardian.com/uk-news/2024/feb/17/black-mental-health-patients-more-likely-injured-police-england>
(120) Olivia Blake,“Shutting wards to restrain patients is harrowing,”Independent, 2 May 2023.
(121) Accertamenti e trattamenti sanitari volontari e obbligatori. Legge 13 maggio 1978, n.180. <https://www.trovanorme.salute.
gov.it/norme/dettaglioAtto?id=36714>
(122) 谷本千恵「イタリアの精神保健システムの発展過程とその現状 ―日本におけるイタリアの先進的な地域精神保健
システムの導入の検討―」
『石川看護雑誌』16 号, 2019.3, p.92. <https://ipnu.repo.nii.ac.jp/record/282/files/%E7%AC
%AC16%E5%B7%BB_10.pdf>
(123) 同上
(124) 外来診療、リハビリテーション、住居・就労支援、訪問サービス等を担う施設。
(125) “La rete dei servizi per la salute mentale.”Ministero della Salute website <https://www.salute.gov.it/portale/saluteMentale/
dettaglioContenutiSaluteMentale.jsp?lingua=italiano&id=168&area=salute%20mentale&menu=vuoto>
(126) 谷本 前掲注(122), p.93.
(127) ジョバンナ・デル・ジューディチェ(岡村正幸監訳, 小村絹恵訳)『いますぐ彼を解きなさい―イタリアにおけ
る非拘束社会への試み―』ミネルヴァ書房, 2020, p.94.(原書名 : Giovanna Del Giudice, Slegalo subito, Merano: AB,
2015.)
(128) 同上, p.95.
(129) 同上, p.94.
(130) Clementina Salvi,“È il momento di slegare,”p.7. Diritto Penale e Uomo website <https://dirittopenaleuomo.org/wpcontent/uploads/2022/01/Salvi_DPU.pdf>

国立国会図書館 調査及び立法考査局

レファレンス

26

884 号

2024. 8

85