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【参考資料2】長谷川参考人提出資料 (8 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_49021.html
出典情報 精神保健医療福祉の今後の施策推進に関する検討会(第4回 1/15)《厚生労働省》
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精神科病院における身体的拘束

アイルランド、オランダが加えられ、計 9 つの国又は地域における身体的拘束の実施率が比較
されている(表 3)。この研究においても、やはり日本における身体的拘束の割合が最も高い
ことが示されている。
表3

身体的拘束を受けた人数(1 年当たり、人口 10 万人当たり)


統計取得年次

人数

日本

2017

120 人

アメリカ

2017

18 人

イングランド

2017 - 2018

1.9 人

ウェールズ

2013

0人

ドイツ

2013

81 人

アイルランド

2020

3.1 人

オランダ

2013

22 人

オーストラリア

2016/2017

6人

ニュージーランド

2016/2017

0.72 人

(出典)Martha K. Savage et al.,“Comparison of coercive practices in worldwide mental healthcare: overcoming difficulties
resulting from variations in monitoring strategies,”BJPsych Open, 10(1), 2024 Jan 11. <https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/
articles/PMC10790218/pdf/S2056472423006130a.pdf> を基に筆者作成。



身体的拘束の問題点
身体的拘束には憲法で保障された権利を侵害するおそれがあるばかりでなく、拘束を受けた

患者の身体の健康を損ない、甚だしい場合には患者を死に至らしめる可能性もある。また、身
体的拘束は患者の尊厳を奪い、精神的苦痛をもたらし、精神疾患を悪化させる危険がある上、
患者の家族や看護師等のメンタルヘルスにも悪影響が及ぶ場合がある。さらに、違法な身体的
拘束は病院の社会的信用を損ねることにもなる。身体的拘束がはらむ問題を以下に整理する。
(1)人権上の問題
日本国憲法第 13 条は「すべて国民は、個人として尊重される」と規定しており、個人を尊
重するという考え方が「拘束場面で失われているという可能性を常に意識する必要がある」と
の指摘がある(10)。日本国憲法第 13 条及び第 31 条はみだりに身体を拘束されない自由を保障
しているほか、第 21 条第 1 項は表現活動を、第 22 条第 1 項は移動の自由及び職業選択の自由
を保障しており、憲法上の権利としてのこれらの自由が身体的拘束によって侵害される場合に
は、適正な手続によることが要請される(11)。
また、人権制約が正当化されるのは、その制約が必要性や相当性を充足した場合であり、かつ、
直面する人権の重要性に鑑みれば、その制約の程度も最小限度でなければならないとされる(12)。
こうした考え方を踏まえ、精神保健指定医の判断による形式的要件さえ満たせば違法性が阻却
されるわけではなく、許容性が肯定されるには実体判断が必要であるとの見解がある(13)。


東奈央「精神科医療における身体拘束―人権からの考察―」『精神神経学雑誌』122(12), 2020.12, p.947. <https://
journal.jspn.or.jp/jspn/openpdf/1220120946.pdf>
⑾ 同上, pp.948-949. なお、平成 28(2016)年 12 月に死亡した患者の遺族が病院に損害賠償を求めた訴訟において、
精神保健指定医が命じた身体的拘束の判断は裁量を逸脱していたとの判決により、原告が勝訴した事例がある。
表 4 参照。
⑿ 大谷實『精神保健福祉法講義 新版 第 3 版』成文堂, 2017, pp.113-115.
⒀ 東 前掲注⑽, p.949.

国立国会図書館 調査及び立法考査局

レファレンス

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884 号

2024. 8

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