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【参考資料2】長谷川参考人提出資料 (21 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_49021.html
出典情報 精神保健医療福祉の今後の施策推進に関する検討会(第4回 1/15)《厚生労働省》
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精神科病院における身体的拘束

てよいとの誤解を招いてきた」とし、同要件そのものの削除を求めた(92)。
なお、告示 130 号基準の改正のその後の動向は、令和 6(2024)年 4 月末現在において報じ
られていない。



諸外国の精神科病院における身体的拘束

本章では海外に目を転じ、ドイツ、イギリス、イタリアにおける、身体的拘束に関する近年
の動向を述べる。ドイツ及びイギリスでは、近年、身体的拘束に焦点を当てた法改正や立法が
行われており、その概要を中心に紹介する。また、精神医療改革で名高いイタリアにおいても、
一般病院の精神科病棟等における身体的拘束が問題視されており、その現状について述べる。


ドイツ
ドイツにおいて精神科病院による身体的拘束は高い実施率を示しており(93)、その在り方に

ついては従来から論議されてきたところである。2018 年、連邦憲法裁判所は、身体的拘束が
基本権を侵害しているとし、身体の自由を継続的に剥奪するには裁判官の決定が必要であると
の判決を下した。この判決を受け、連邦、バイエルン州及びバーデン・ヴュルテンベルク州は
2019 年に法改正を行った。一連の経緯について以下に述べる。
(1)身体的拘束の法律上の規定
ドイツにおける精神障害者等の身体的拘束は、民法(94)及び公法によってそれぞれ規定され
ている。概要は表 6 のとおりである。
表6

ドイツにおける身体的拘束に係る法律上の規定

法律

身体的拘束に関連する規定

民法

病院、老人ホーム、介護施設、精神科病院又は病棟等に滞在する者が、以下の①又は②の要件(注 1)を
満たす場合、世話人の同意及び裁判所の許可に基づき、機械的装置(注 2)、薬物又はその他の方法によっ
て、長期間又は規則的に自由を剥奪することができる(ドイツ民法第 1831 条第 4 項)。
①自傷の危険性がある場合(ドイツ民法第 1831 条第 1 項第 1 号)。
②治療上の必要性がある場合(ドイツ民法第 1831 条第 1 項第 2 号)。

公法

各州が法律を制定する権限を有する。対象者が、精神の疾患や障害により自身や他者を危険にさらす
場合、裁判所は行政庁の申請に基づき対象者の収容(強制入院)を許可する。
【例】バーデン・ヴュルテンベルク州の「精神障害者支援保護法」は、精神障害により自身の生命・健
康又は他者の利益に著しい危険をもたらす者は、他の方法で回避できない場合、収容を必要とすると
し(第 13 条第 3 項)

収容中に身体的拘束が行われる可能性がある(第 25 条第 2 項第 4 号)としている。

(注 1)要件は①及び②のみであり、他者に危害を加える場合等については要件に含まれない。
(注 2)「機械的装置」による方法とは、隔離、夜間のドアの施錠、ベルトや足かせによる拘束などを指す。
(出典)神野礼斉「強制入院と身体拘束に対する法的規制―ドイツ法を中心として―」『法と精神医療』31 号, 2016,
pp.37, 39-41; 柑本美和「精神科医療における行動制限―身体的拘束について―」『法と精神医療』36 号, 2022,
pp.101-103; BGB; Psychisch-Kranken-Gesetze vom 25. Juni 2019 (GBI. 2019 S. 230), <https://www.landesrecht-bw.de/
bsbw/document/jlr-PsychKGBWrahmen> を基に筆者作成。
 「令和 4 年度推進事業「精神科医療における行動制限最小化に関する調査研究」報告書に記載を求める事項」
2023.3.17. 全国「精神病」者集団ウェブサイト <https://jngmdp.net/2023/03/17/20230317/>
 Ⅰの 2(3)の表 3 に示した国際比較研究においては、
ドイツは日本に次いで身体的拘束の実施率が高いとされる。
 Bürgerliches Gesetzbuch in der Fassung der Bekanntmachung vom 2. Januar 2002 (BGBl. I S. 42, 2909; 2003 I S. 738),
das zuletzt durch Artikel 34 Absatz 3 des Gesetzes vom 22. Dezember 2023 (BGBl. 2023 I Nr. 411) geändert worden ist.

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レファレンス

884 号

国立国会図書館 調査及び立法考査局

2024. 8

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