よむ、つかう、まなぶ。
【参考資料2】長谷川参考人提出資料 (41 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_49021.html |
出典情報 | 精神保健医療福祉の今後の施策推進に関する検討会(第4回 1/15)《厚生労働省》 |
ページ画像
ダウンロードした画像を利用する際は「出典情報」を明記してください。
低解像度画像をダウンロード
プレーンテキスト
資料テキストはコンピュータによる自動処理で生成されており、完全に資料と一致しない場合があります。
テキストをコピーしてご利用いただく際は資料と付け合わせてご確認ください。
問う
「身体拘束」を
【判決文】
のはその際に被告病院が、北海道から九州まで
精神科病院の入院患者に対する行動の制限に
の私立精神科病院の理事、院長らの計 56 通も
当たっては、精神保健指定医が必要と認める場
の「意見書」を最高裁に提出してきたことであ
合でなければ行うことができないものとされ
る。
「圧」を感じざるを得なかった。そしてそ
(前提事実(4)
)
、精神医学上の専門的な知識や
の多くの意見書には「(この判決では)日本の精
経験を有する精神保健指定の裁量に委ねられて
神医療は崩壊する」とのくだりが見られた。
いるとしても、行動制限の中でも身体的拘束
しかし 2021 年 10 月 19 日に最高裁は、上告
は、身体の隔離よりも更に人権制限の度合いが
受理申立てを受理しない決定をし、高裁判決が
著しいものであり、当該患者の生命の保護や重
確定したのである。
大な身体損傷を防ぐことに重点を置いたもので
あるから、これを選択するに当たっては特に慎
重な配慮を要するものといえ、上記アないしウ
残された疑問、課題
に照らすと、告示第 130 号の「多動又は不穏
最後に、残された疑問、課題を端的に述べる。
が顕著である場合」(第 4 の 2 イ)又は「精神障
一也さんのこの状況で、強制的な注射による
害のために、そのまま放置すれば患者の生命に
まで危険が及ぶおそれがある場合」(同ウ)に
該当するとして、12 月 14 日午後 1 時 45 分の
薬物投与は必要だったのか?
障害者権利条約の観点からも、そもそも“強
制治療”は許されるのか?
時点で身体的拘束を必要と認めた A 医師の判
一也さんへの関わりの根底には、ある身体拘
断は、早きに失し、精神保健指定医に認められ
束の指針の本に述べられているような「圧倒的
た身体的拘束の必要性の判断についての裁量を
多数で対応することは相手の戦意を喪失させる
逸脱するものであり、本件身体的拘束を開始し
ことにつながる」という考えがあるのではない
たことは違法というべきである。
か?
そこには「ケア」という文脈はあるのか?
以上のような判決により一也さんに対しての
身体拘束は医師の裁量の逸脱があるとして、損
最高裁で判決が確定した 1 か月後、日本精
害賠償請求を認めた。法廷ではいつも冷静で穏
神科病院協会は会長自らが記者会見をし、本判
やかな女性弁護士が涙を流していた。会見で父
決を「到底容認できない」という声明を発出し
の大畠正晴さんは「(息子が入院した)12 月 6 日
た。もしも「日本の精神医療が崩壊する」のな
に戻してくれと言いたい」
「あの子が浮かばれ
ら、その崩壊する「医療」とはなんだろう?
るためにも日本の身体拘束はこれっきりにして
厚労省は 30 年ぶりに身体拘束の基準を定め
ほしい」と涙を流して訴えた。笑顔はなかった。
た大臣告示の改定を行う提案を行った。改善さ
れるのかと思いきや、これまでにない「治療が
上告受理申立てを受理せず、
高裁判決が確定
困難」という文言が加わりそうになっているこ
とに、身体拘束の“要件緩和”との批判が起き
日本の司法は三審制である。被告病院は、最
ている。
高裁に上告受理申立てを行ったのだが、驚いた
閲覧情報:医学書院 10001
41
vol.25 no.6 精神看護 Nov 2022
545
2024/12/24 11:32:15
「身体拘束」を
【判決文】
のはその際に被告病院が、北海道から九州まで
精神科病院の入院患者に対する行動の制限に
の私立精神科病院の理事、院長らの計 56 通も
当たっては、精神保健指定医が必要と認める場
の「意見書」を最高裁に提出してきたことであ
合でなければ行うことができないものとされ
る。
「圧」を感じざるを得なかった。そしてそ
(前提事実(4)
)
、精神医学上の専門的な知識や
の多くの意見書には「(この判決では)日本の精
経験を有する精神保健指定の裁量に委ねられて
神医療は崩壊する」とのくだりが見られた。
いるとしても、行動制限の中でも身体的拘束
しかし 2021 年 10 月 19 日に最高裁は、上告
は、身体の隔離よりも更に人権制限の度合いが
受理申立てを受理しない決定をし、高裁判決が
著しいものであり、当該患者の生命の保護や重
確定したのである。
大な身体損傷を防ぐことに重点を置いたもので
あるから、これを選択するに当たっては特に慎
重な配慮を要するものといえ、上記アないしウ
残された疑問、課題
に照らすと、告示第 130 号の「多動又は不穏
最後に、残された疑問、課題を端的に述べる。
が顕著である場合」(第 4 の 2 イ)又は「精神障
一也さんのこの状況で、強制的な注射による
害のために、そのまま放置すれば患者の生命に
まで危険が及ぶおそれがある場合」(同ウ)に
該当するとして、12 月 14 日午後 1 時 45 分の
薬物投与は必要だったのか?
障害者権利条約の観点からも、そもそも“強
制治療”は許されるのか?
時点で身体的拘束を必要と認めた A 医師の判
一也さんへの関わりの根底には、ある身体拘
断は、早きに失し、精神保健指定医に認められ
束の指針の本に述べられているような「圧倒的
た身体的拘束の必要性の判断についての裁量を
多数で対応することは相手の戦意を喪失させる
逸脱するものであり、本件身体的拘束を開始し
ことにつながる」という考えがあるのではない
たことは違法というべきである。
か?
そこには「ケア」という文脈はあるのか?
以上のような判決により一也さんに対しての
身体拘束は医師の裁量の逸脱があるとして、損
最高裁で判決が確定した 1 か月後、日本精
害賠償請求を認めた。法廷ではいつも冷静で穏
神科病院協会は会長自らが記者会見をし、本判
やかな女性弁護士が涙を流していた。会見で父
決を「到底容認できない」という声明を発出し
の大畠正晴さんは「(息子が入院した)12 月 6 日
た。もしも「日本の精神医療が崩壊する」のな
に戻してくれと言いたい」
「あの子が浮かばれ
ら、その崩壊する「医療」とはなんだろう?
るためにも日本の身体拘束はこれっきりにして
厚労省は 30 年ぶりに身体拘束の基準を定め
ほしい」と涙を流して訴えた。笑顔はなかった。
た大臣告示の改定を行う提案を行った。改善さ
れるのかと思いきや、これまでにない「治療が
上告受理申立てを受理せず、
高裁判決が確定
困難」という文言が加わりそうになっているこ
とに、身体拘束の“要件緩和”との批判が起き
日本の司法は三審制である。被告病院は、最
ている。
高裁に上告受理申立てを行ったのだが、驚いた
閲覧情報:医学書院 10001
41
vol.25 no.6 精神看護 Nov 2022
545
2024/12/24 11:32:15