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【参考資料2】長谷川参考人提出資料 (31 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_49021.html
出典情報 精神保健医療福祉の今後の施策推進に関する検討会(第4回 1/15)《厚生労働省》
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問う
「身体拘束」を

おそらくは本稿を読まれる方は、日々の看護

すぐに身体拘束を受けることになる。その時の

実践の向上を目指し、自分の時間に雑誌を手に

状況は同行した兄のパットさんの言葉を借りる

取り、研鑽を積まれている方々だと思う。私自

と「ケリーは暴れずに隔離室で命令に従って

身、素敵な看護師さんを多く知ってもいる。

ベッドに寝たにもかかわらず身体拘束された」

しかし、その“思い”や“志”があっても、

とのことであった。身体拘束をしようとするス

いったん病院、専門性という殻に守られてしま

タッフに兄はすかさず「その必要はないです

うと、時として奪った人の命や尊厳、そしてそ

よ」と言ったが「しばらく拘束するのでオムツ

の悲しみさえもなきものにしようとすることが

のセットを買ってください」と言われてしま

ある。私はこれも真実だと思っている。光があ

う。ケリーさんはニュージーランド在住中、1

れば必ず影がある。本連載ではこの“真実”を

か月余り精神科病院に入院したことがあった

通じて、皆さんお一人お一人の心に何かが届

が、そこで身体拘束を受けることは一切なかっ

き、新たな一歩が踏み出されることを心から

た。日本の精神科病院では、医師の指示に従っ

願って執筆するものである。

てベッドまで歩く人を身体拘束することに家族
が驚いたのは言うまでもない。
身体拘束を受けたまま 10 日間経った 5 月 10

身体拘束されるまで

日に、ケリーさんは心肺停止の状態で発見され

ケリーさんは、アメリカ生まれで幼い頃に家
族と共にニュージーランドに移住した。ニュー

た。その後転送先の病院で 5 月 17 日に亡く
なった。27 歳だった。

ジーランドと米国の両方の国籍を持っていた。
兄の影響もあり日本語が好きで、ずっと日本に
行くことを願っていた。2015 年に夢を叶え、

サベジさん家族からの相談

JET プログラム(The Japan Exchange and Teaching

ケリーさんの死からしばらく経ってから、母

Programme:語学指導等を行う外国青年招致事業)

マーサさん、兄パットさんはスケジュール調整

の中で来日し、鹿児島県志布志市の小学校など

をして一緒に私の大学を訪れた。2 人は、
「な

で ALT(Assistant Language Teacher: 外 国 語 指 導 助

ぜ日本ではこのようなことが起こるのか?」と

手)として働き始めた。2 か月に 1 回開かれる

必死に訴えられた。

外国語を学ぶ地元住民との懇親パーティーにも

私は、3 つのするべきことを考えた。1 つは

積極的に参加するような親しみやすい人柄だっ

医療事故調査の調査依頼。2 つ目はカルテを取

た。

り寄せて経過を把握すること。3 つ目はとにか

ところが 2017 年 4 月に精神に不調をきた
し、鹿児島から兄のいる横浜の家に身を寄せ静

くこの事実を世の中に知らせようということ
だった。しかしこれらは困難を極めた。

養していた。4 月 29 日に躁状態となり、突然

1 つ目の医療事故調査制度は、医療法で定め

大声をあげたり外に飛び出そうとするなど落ち

られたもので、医療事故が発生した医療機関に

着きがなくなり、翌 30 日に警察官を呼び、神

おいて院内調査を行い、その調査報告を民間の

奈川県内の精神科病院に向かった。そこで措置

第三者機関(医療事故調査・支援センター)が収

入院をすることになった。そして入院と同時に

集・分析することで再発防止につなげるとい

閲覧情報:医学書院 10001

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vol.25 no.5 精神看護 Sep 2022
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2024/12/24 11:30:39