よむ、つかう、まなぶ。
【参考資料２】長谷川参考人提出資料 (27 ページ)
出典
| 公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_49021.html |
| 出典情報 | 精神保健医療福祉の今後の施策推進に関する検討会（第4回 1／15）《厚生労働省》 |
ページ画像
ダウンロードした画像を利用する際は「出典情報」を明記してください。
低解像度画像をダウンロード
プレーンテキスト
資料テキストはコンピュータによる自動処理で生成されており、完全に資料と一致しない場合があります。
テキストをコピーしてご利用いただく際は資料と付け合わせてご確認ください。
精神科病院における身体的拘束
当化される要件を示している。
2009 年 8 月、イタリア南部のヴァッロ・デッラ・ルカーニアにあるサン・ルカ病院の SPDC
において、小学校教師が 83 時間にわたって機械的拘束を受けた後、肺水腫で死亡する事件が
発生した。約 9 年間の裁判の後、2018 年 6 月 20 日、破毀院は被告の医師及び看護師らに対し
て 7 か月から 1 年 3 か月の懲役刑を言い渡した（131）。破毀院の判決によれば、機械的拘束が正
当化されるのは、刑法第 54 条で想定される場合、すなわち、①他者に危害を及ぼす現在の危
険性（抽象的な可能性に基づいて予防的に拘束することは許されない。）、②それ以外の危険の
必然性（代替手段では患者の健康を保護することができない場合であり、その適否の判断は医
師の慎重な判断に委ねられる。）、③比例性（厳密に必要な範囲内で適用されなければならな
い。）、の 3 要件を満たす場合に限られ、これらの要件を満たさない場合、拘束は違法であり、
それを適用する医療従事者は、患者から個人の自由を剥奪することとなるとされた（132）。
（3）機械的拘束の実施状況
最近の報道によれば、イタリアの 20 州のうち、7 つの州又は地域の病院の SPDC における
2022 年の機械的拘束の実施数は、表 8 のとおりである。イタリア全土の網羅的な統計ではな
いが、地域によって相当なばらつきがあることが分かる。なお、フリウリ＝ヴェネツィア・ジュ
リア州では、何年もの間、機械的拘束は行われておらず、シチリア州では前年より 116 件、ト
レント自治県では 21 件減少したのに対し、ロンバルディア州では前年より 179 件、ウンブリ
ア州では 7 件増加したと報じられている（133）。
表８
イタリアの 7 つの州又は地域の SPDC における機械的拘束の実施件数（2022 年）
フリウリ =
ヴェネツィア・
ジュリア州
ロンバル
ディア州
ウンブリア州
ラツィオ州
シチリア州
トレント
自治県
エミリア＝
ロマーニャ州
0
2,705
111
1,280
939
196
199
（注）エミリア＝ロマーニャ州については 2021 年の件数である。
（出典）Ludovica Jona,“In Italia si legano ancora i pazienti psichiatrici ai letti, anche i minorenni,”Corriere della Sera,
2024.3.12. <https://www.corriere.it/cronache/24_marzo_07/italia-si-legano-ancora-pazienti-psichiatrici-letti-ancheminorenni-767bb23c-dc9d-11ee-9cc9-ae75d527b8c3.shtml> を基に筆者作成。
これまでの研究によれば、イタリアにおける精神科病棟の入院患者に対する機械的拘束の実
施率は 3.8 ～ 20% と考えられている（134）。2019 年から 2021 年までの 3 年間、ジェノヴァ大学（イ
タリア）の精神医学部門に連続して入院した被験者 799 名を対象とした最近の調査では、その
うち 14.1%（113 名）が機械的拘束を受けたとの結果が報告されている（135）。
(131) Giordano Cotichelli,“Morte Mastrogiovanni, condanne ridotte per medici e infermieri,”Nurse 24+it, 2018.11.15.
<https://www.nurse24.it/infermiere/attualita-infermieri/ridotta-condanna-cassazione-morte-mastrogiovanni.html>
(132) Cass. pen., sez. V, 20/06/2018, n. 50497, pp.44-51.
(133) Ludovica Jona,“In Italia si legano ancora i pazienti psichiatrici ai letti, anche i minorenni,”Corriere della Sera, 2024.3.12.
<https://www.corriere.it/cronache/24_marzo_07/italia-si-legano-ancora-pazienti-psichiatrici-letti-anche-minorenni767bb23c-dc9d-11ee-9cc9-ae75d527b8c3.shtml>
(134) Andrea Aguglia et al.,“Mechanical Restraint in Inpatient Psychiatric Unit: Prevalence and Associated Clinical Variables,”
Medicina, 59(10), 2023 October, p.2. <https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC10607962/pdf/medicina-59-01847.
pdf>
(135) ibid., p.7.
86
レファレンス
884 号
国立国会図書館 調査及び立法考査局
2024. 8
27
当化される要件を示している。
2009 年 8 月、イタリア南部のヴァッロ・デッラ・ルカーニアにあるサン・ルカ病院の SPDC
において、小学校教師が 83 時間にわたって機械的拘束を受けた後、肺水腫で死亡する事件が
発生した。約 9 年間の裁判の後、2018 年 6 月 20 日、破毀院は被告の医師及び看護師らに対し
て 7 か月から 1 年 3 か月の懲役刑を言い渡した（131）。破毀院の判決によれば、機械的拘束が正
当化されるのは、刑法第 54 条で想定される場合、すなわち、①他者に危害を及ぼす現在の危
険性（抽象的な可能性に基づいて予防的に拘束することは許されない。）、②それ以外の危険の
必然性（代替手段では患者の健康を保護することができない場合であり、その適否の判断は医
師の慎重な判断に委ねられる。）、③比例性（厳密に必要な範囲内で適用されなければならな
い。）、の 3 要件を満たす場合に限られ、これらの要件を満たさない場合、拘束は違法であり、
それを適用する医療従事者は、患者から個人の自由を剥奪することとなるとされた（132）。
（3）機械的拘束の実施状況
最近の報道によれば、イタリアの 20 州のうち、7 つの州又は地域の病院の SPDC における
2022 年の機械的拘束の実施数は、表 8 のとおりである。イタリア全土の網羅的な統計ではな
いが、地域によって相当なばらつきがあることが分かる。なお、フリウリ＝ヴェネツィア・ジュ
リア州では、何年もの間、機械的拘束は行われておらず、シチリア州では前年より 116 件、ト
レント自治県では 21 件減少したのに対し、ロンバルディア州では前年より 179 件、ウンブリ
ア州では 7 件増加したと報じられている（133）。
表８
イタリアの 7 つの州又は地域の SPDC における機械的拘束の実施件数（2022 年）
フリウリ =
ヴェネツィア・
ジュリア州
ロンバル
ディア州
ウンブリア州
ラツィオ州
シチリア州
トレント
自治県
エミリア＝
ロマーニャ州
0
2,705
111
1,280
939
196
199
（注）エミリア＝ロマーニャ州については 2021 年の件数である。
（出典）Ludovica Jona,“In Italia si legano ancora i pazienti psichiatrici ai letti, anche i minorenni,”Corriere della Sera,
2024.3.12. <https://www.corriere.it/cronache/24_marzo_07/italia-si-legano-ancora-pazienti-psichiatrici-letti-ancheminorenni-767bb23c-dc9d-11ee-9cc9-ae75d527b8c3.shtml> を基に筆者作成。
これまでの研究によれば、イタリアにおける精神科病棟の入院患者に対する機械的拘束の実
施率は 3.8 ～ 20% と考えられている（134）。2019 年から 2021 年までの 3 年間、ジェノヴァ大学（イ
タリア）の精神医学部門に連続して入院した被験者 799 名を対象とした最近の調査では、その
うち 14.1%（113 名）が機械的拘束を受けたとの結果が報告されている（135）。
(131) Giordano Cotichelli,“Morte Mastrogiovanni, condanne ridotte per medici e infermieri,”Nurse 24+it, 2018.11.15.
<https://www.nurse24.it/infermiere/attualita-infermieri/ridotta-condanna-cassazione-morte-mastrogiovanni.html>
(132) Cass. pen., sez. V, 20/06/2018, n. 50497, pp.44-51.
(133) Ludovica Jona,“In Italia si legano ancora i pazienti psichiatrici ai letti, anche i minorenni,”Corriere della Sera, 2024.3.12.
<https://www.corriere.it/cronache/24_marzo_07/italia-si-legano-ancora-pazienti-psichiatrici-letti-anche-minorenni767bb23c-dc9d-11ee-9cc9-ae75d527b8c3.shtml>
(134) Andrea Aguglia et al.,“Mechanical Restraint in Inpatient Psychiatric Unit: Prevalence and Associated Clinical Variables,”
Medicina, 59(10), 2023 October, p.2. <https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC10607962/pdf/medicina-59-01847.
pdf>
(135) ibid., p.7.
86
レファレンス
884 号
国立国会図書館 調査及び立法考査局
2024. 8
27