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【参考資料2】長谷川参考人提出資料 (4 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_49021.html |
出典情報 | 精神保健医療福祉の今後の施策推進に関する検討会(第4回 1/15)《厚生労働省》 |
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精神科病院における身体的拘束
はじめに
日本において精神病床を有する病院は令和 4(2022)年 6 月末時点において 1,545 病院、精
神病床数は 30 万 8667 床、入院患者数は 25 万 8920 人に及び、長期入院や身体的拘束など、患
者の人権に関わる問題が深刻化している。身体的拘束は、同年において少なくとも 1 万 903 人
の入院患者に対して行われており、諸外国と比べ、その数は突出して多い(1)。身体的拘束は患
者の尊厳に関わる倫理的問題を提起するほか、患者の身体的、精神的側面においても弊害をも
たらすとされ、患者の死亡につながる場合もある。
本稿では、日本における精神障害者の身体的拘束に係る現状を概観し、身体的拘束の問題点、
身体的拘束の最小化が困難とされる背景、障害者権利条約に基づく対日審査において国際連合
障害者権利委員会から指摘された課題、身体的拘束に係る近年の政策動向について概略を述べ、
最後にドイツ、イギリス、イタリアの精神科病院、精神科病棟における身体的拘束の状況を紹
介する(2)。
Ⅰ
身体的拘束の現状
本章では、まず日本の精神科病院における身体的拘束の法律上の定義及び身体的拘束を行う
ことのできる要件について確認し、次いで統計及び研究から看取できる身体的拘束の実態につ
いて概観する。
1
身体的拘束の定義及び基準
(1)身体的拘束の定義
「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」(昭和 25 年法律第 123 号。以下「精神保健福
祉法」という。)第 36 条第 1 項によれば、「精神科病院の管理者は、入院中の者につき、その
医療又は保護に欠くことのできない限度において、その行動について必要な制限を行うことが
できる。」とされている。
さらに、「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第 36 条第 3 項の規定に基づき厚生労働
大臣が定める行動の制限」(昭和 63 年 4 月 8 日厚生省告示第 129 号)において、身体的拘束は
「衣類又は綿入り帯等を使用して、一時的に当該患者の身体を拘束し、その運動を抑制する行
動の制限」と定義されている。
*本稿におけるインターネット情報の最終アクセス日は、令和 6(2024)年 5 月 31 日である。
*文中における「現在」は、特に断り書きがない限り、令和 6(2024)年 5 月 31 日である。
⑴ 統計数値は、厚生労働省「精神保健福祉資料 630 調査 令和 4 年度」国立精神・神経医療研究センターウェ
ブサイト <https://www.ncnp.go.jp/nimh/seisaku/data/630.html> による。
⑵ なお、精神科病院のほか、一般医療、介護施設、障害者福祉施設においても身体的拘束が問題となり得るが、
本稿においては精神科病院における身体的拘束のみを扱う。また、精神科病院では、身体的拘束と同様に患者の「隔
離」も問題とされるが、本稿においては身体的拘束について述べる。なお、隔離とは、内側から患者本人の意思
によっては出ることができない部屋の中へ 1 人だけ入室させることにより、当該患者を他の患者から遮断する行
動の制限を指し、身体的拘束及び隔離を総称して「行動制限」という。
国立国会図書館 調査及び立法考査局
レファレンス
4
884 号
2024. 8
63
はじめに
日本において精神病床を有する病院は令和 4(2022)年 6 月末時点において 1,545 病院、精
神病床数は 30 万 8667 床、入院患者数は 25 万 8920 人に及び、長期入院や身体的拘束など、患
者の人権に関わる問題が深刻化している。身体的拘束は、同年において少なくとも 1 万 903 人
の入院患者に対して行われており、諸外国と比べ、その数は突出して多い(1)。身体的拘束は患
者の尊厳に関わる倫理的問題を提起するほか、患者の身体的、精神的側面においても弊害をも
たらすとされ、患者の死亡につながる場合もある。
本稿では、日本における精神障害者の身体的拘束に係る現状を概観し、身体的拘束の問題点、
身体的拘束の最小化が困難とされる背景、障害者権利条約に基づく対日審査において国際連合
障害者権利委員会から指摘された課題、身体的拘束に係る近年の政策動向について概略を述べ、
最後にドイツ、イギリス、イタリアの精神科病院、精神科病棟における身体的拘束の状況を紹
介する(2)。
Ⅰ
身体的拘束の現状
本章では、まず日本の精神科病院における身体的拘束の法律上の定義及び身体的拘束を行う
ことのできる要件について確認し、次いで統計及び研究から看取できる身体的拘束の実態につ
いて概観する。
1
身体的拘束の定義及び基準
(1)身体的拘束の定義
「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」(昭和 25 年法律第 123 号。以下「精神保健福
祉法」という。)第 36 条第 1 項によれば、「精神科病院の管理者は、入院中の者につき、その
医療又は保護に欠くことのできない限度において、その行動について必要な制限を行うことが
できる。」とされている。
さらに、「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第 36 条第 3 項の規定に基づき厚生労働
大臣が定める行動の制限」(昭和 63 年 4 月 8 日厚生省告示第 129 号)において、身体的拘束は
「衣類又は綿入り帯等を使用して、一時的に当該患者の身体を拘束し、その運動を抑制する行
動の制限」と定義されている。
*本稿におけるインターネット情報の最終アクセス日は、令和 6(2024)年 5 月 31 日である。
*文中における「現在」は、特に断り書きがない限り、令和 6(2024)年 5 月 31 日である。
⑴ 統計数値は、厚生労働省「精神保健福祉資料 630 調査 令和 4 年度」国立精神・神経医療研究センターウェ
ブサイト <https://www.ncnp.go.jp/nimh/seisaku/data/630.html> による。
⑵ なお、精神科病院のほか、一般医療、介護施設、障害者福祉施設においても身体的拘束が問題となり得るが、
本稿においては精神科病院における身体的拘束のみを扱う。また、精神科病院では、身体的拘束と同様に患者の「隔
離」も問題とされるが、本稿においては身体的拘束について述べる。なお、隔離とは、内側から患者本人の意思
によっては出ることができない部屋の中へ 1 人だけ入室させることにより、当該患者を他の患者から遮断する行
動の制限を指し、身体的拘束及び隔離を総称して「行動制限」という。
国立国会図書館 調査及び立法考査局
レファレンス
4
884 号
2024. 8
63