よむ、つかう、まなぶ。
【参考資料2】長谷川参考人提出資料 (46 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_49021.html |
出典情報 | 精神保健医療福祉の今後の施策推進に関する検討会(第4回 1/15)《厚生労働省》 |
ページ画像
ダウンロードした画像を利用する際は「出典情報」を明記してください。
低解像度画像をダウンロード
プレーンテキスト
資料テキストはコンピュータによる自動処理で生成されており、完全に資料と一致しない場合があります。
テキストをコピーしてご利用いただく際は資料と付け合わせてご確認ください。
通の言葉を持たず、通じ合うことはない。
資料
〈退院及び処遇改善請求に関する意見書〉
※ボールペンが許されていないので蛍光ペンで失礼い
本
当に孤立無援で、周りの人は皆、敵だっ
た。スマホも持ち込めず、誰とも連絡を
取ってはいけないといういわゆる「通信制限」
という措置のせいで、親しい人との連絡はもう
ずっと絶えていた。私の周りにいたのは、私の
状態にレッテルを貼っては拘束を指示する医
師。そして、
「ごめんね、先生の指示のもとに
動いていているから」と眉尻を下げて言う師長
を筆頭に、指示という名のもとに拘束を実行す
る看護師。それだけしか存在しない世界だった。
敵の世界にひとり封じ込められていると、外
の世界に対する信頼も薄れていく。今までどれ
ほど長年身近にいて優しくしてくれた人に対し
てさえも、だ。もう私のことを忘れてしまった
のではないか。何で助けに来てくれないのか。
当時の私にとって、私を拷問から救い出してく
れない時点で、彼ら彼女らは敵の側に居るもの
として感じられた。
最
後の最後の切り札は、患者の権利として
渡されていた、退院や処遇改善を要求す
ることのできる「精神医療審査会」の連絡先
だった。私はナースステーションの電話の子機
を借りて連絡し、届いた白紙の依頼書を記入し
た。先の尖ったボールペンは危険だから手にし
てはいけないとされ、先の丸い蛍光ペンでご
たします。
【請求を行う理由について】
私は拘束の即時解除及び退院を求めています。ま
ず、身体拘束を行う通知書には「自殺企図・自傷行
為が切迫している」と書かれていますが、入院時すで
に切迫した希死念慮はなく、誤ったアセスメントがなされ
ていたと言えます。また、入院日前日まで 8 h/ 日のアル
バイトを行っており社会生活能力も十分保たれていたの
にもかかわらず、全身の清潔保持から排泄に至るまで
を任さざるを得ない著しくプライバシーを侵害、人権を
侵害された状態におかれたことは、不当極まりなく、私
に大きな心的外傷を与えました。また、入院後も「現
在の」私のアセスメントを怠ったまま「薬剤の調整のた
め」という本来とは違う目的のため、拘束を解除しませ
んでした。重ね重ね、これは不当な拘束であり、人権
侵害にあたり、即時解除を求めます。
【退院請求の場合は、退院後どうするのか詳しく具
体的に書くこと。なお、処遇改善請求の場合は、
自由に意見を書いてください】
退院後は通っている大学で研究等を行う他、介護
ヘルパーやクリニックの予診とり等のアルバイトをして過
ごす予定です。そのためにも(単位取得やバイトの継
続)できるだけ早期の退院が、社会生活に直結しま
す。また、数時間でも、1 日でも、人権が守られること
は当然のことです。この病院には全くそのような姿勢が
みられません。即時拘束が解除されるよう、私を助けて
ください。病院では孤立無援です。
ちゃごちゃと拙い字を連ねた(資料)。
こ
の手紙は結局出されることがなかったか
ら、手元に残っている。順番待ちのた
い、ということだった。手紙を出しても意味が
め、審査に 2~3 か月かかると電話口で言われ
なかったのだ。拘束されている患者の 1 秒 1
て、ふざけた話だと思って諦めたのだ。しか
秒は、生き地獄でありながら医療者の権力のも
も、退院後に知り合いの精神科医に聞いてみた
とに封じ込められ、顧みられることはない。
ら、審査で病院側の判断が覆るケースはほぼな
522
閲覧情報:医学書院 10001
こうして私は完全に“モノ”に成り果てた。
46
2024/12/11 10:32:22
資料
〈退院及び処遇改善請求に関する意見書〉
※ボールペンが許されていないので蛍光ペンで失礼い
本
当に孤立無援で、周りの人は皆、敵だっ
た。スマホも持ち込めず、誰とも連絡を
取ってはいけないといういわゆる「通信制限」
という措置のせいで、親しい人との連絡はもう
ずっと絶えていた。私の周りにいたのは、私の
状態にレッテルを貼っては拘束を指示する医
師。そして、
「ごめんね、先生の指示のもとに
動いていているから」と眉尻を下げて言う師長
を筆頭に、指示という名のもとに拘束を実行す
る看護師。それだけしか存在しない世界だった。
敵の世界にひとり封じ込められていると、外
の世界に対する信頼も薄れていく。今までどれ
ほど長年身近にいて優しくしてくれた人に対し
てさえも、だ。もう私のことを忘れてしまった
のではないか。何で助けに来てくれないのか。
当時の私にとって、私を拷問から救い出してく
れない時点で、彼ら彼女らは敵の側に居るもの
として感じられた。
最
後の最後の切り札は、患者の権利として
渡されていた、退院や処遇改善を要求す
ることのできる「精神医療審査会」の連絡先
だった。私はナースステーションの電話の子機
を借りて連絡し、届いた白紙の依頼書を記入し
た。先の尖ったボールペンは危険だから手にし
てはいけないとされ、先の丸い蛍光ペンでご
たします。
【請求を行う理由について】
私は拘束の即時解除及び退院を求めています。ま
ず、身体拘束を行う通知書には「自殺企図・自傷行
為が切迫している」と書かれていますが、入院時すで
に切迫した希死念慮はなく、誤ったアセスメントがなされ
ていたと言えます。また、入院日前日まで 8 h/ 日のアル
バイトを行っており社会生活能力も十分保たれていたの
にもかかわらず、全身の清潔保持から排泄に至るまで
を任さざるを得ない著しくプライバシーを侵害、人権を
侵害された状態におかれたことは、不当極まりなく、私
に大きな心的外傷を与えました。また、入院後も「現
在の」私のアセスメントを怠ったまま「薬剤の調整のた
め」という本来とは違う目的のため、拘束を解除しませ
んでした。重ね重ね、これは不当な拘束であり、人権
侵害にあたり、即時解除を求めます。
【退院請求の場合は、退院後どうするのか詳しく具
体的に書くこと。なお、処遇改善請求の場合は、
自由に意見を書いてください】
退院後は通っている大学で研究等を行う他、介護
ヘルパーやクリニックの予診とり等のアルバイトをして過
ごす予定です。そのためにも(単位取得やバイトの継
続)できるだけ早期の退院が、社会生活に直結しま
す。また、数時間でも、1 日でも、人権が守られること
は当然のことです。この病院には全くそのような姿勢が
みられません。即時拘束が解除されるよう、私を助けて
ください。病院では孤立無援です。
ちゃごちゃと拙い字を連ねた(資料)。
こ
の手紙は結局出されることがなかったか
ら、手元に残っている。順番待ちのた
い、ということだった。手紙を出しても意味が
め、審査に 2~3 か月かかると電話口で言われ
なかったのだ。拘束されている患者の 1 秒 1
て、ふざけた話だと思って諦めたのだ。しか
秒は、生き地獄でありながら医療者の権力のも
も、退院後に知り合いの精神科医に聞いてみた
とに封じ込められ、顧みられることはない。
ら、審査で病院側の判断が覆るケースはほぼな
522
閲覧情報:医学書院 10001
こうして私は完全に“モノ”に成り果てた。
46
2024/12/11 10:32:22