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【参考資料2】長谷川参考人提出資料 (24 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_49021.html |
出典情報 | 精神保健医療福祉の今後の施策推進に関する検討会(第4回 1/15)《厚生労働省》 |
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精神科病院における身体的拘束
要件に係る規定と、日本の身体的拘束に近い意味を持つ機械的拘束に係る規定を、表 7 に示す。
表7
イギリス「1983 年精神保健法」行動指針における制限的介入・機械的拘束の主な規定
規定事項
行動指針
制限的介入全般に係る指針
26.36
制限的介入
の定義及び
26.37
要件
機械的拘束に係る指針
拘束の定義
及び要件
拘束の承認
規定内容
制限的介入とは、以下の目的で、患者の移動、自由、及び / 又は独立して行動す
る自由を意図的に制限する行為である。
・何も行動を起こさなければ患者又は他者に危害を及ぼす可能性が実際にある危
険な状況を、直ちに制御するため。
・患者や他者に対する危険を終息又は大幅に軽減するため。
制限的介入は、罰を与えたり苦痛又は屈辱を与えたりすることのみを目的として
使用してはならない。
人が患者の行動を制限したり、力を行使(又は力を行使すると威嚇)したりする
場合、次のようにすべきである。
・患者又は他者への危害を防ぐために必要な期間を超えて使用しない。
・危害に対して釣合いの取れた対応をする。
・制限を最小限に抑える手段とする。
26.40
制限的介入を検討する必要がある最も一般的な理由は以下のとおりである。
・患者による身体的暴行。
・危険な、脅迫的な又は破壊的な行動。
・自傷行為又は偶発的な身体的傷害の危険性。
・身体的疲労につながりそうな極端で長時間の過活動。
・逃亡又は逃亡の試み(1983 年精神保健法等に基づき拘禁されている場合)。
26.75
機械的拘束とは、患者の行動の制御を主目的として、器具(ベルトなど)を用い
て患者の身体の一部又は全体の動きを防止・制限・制圧することを指す。
26.76
機械的拘束は、他の拘束方法が安全に採用できない場合にのみ、例外的に使用さ
れる。機械的拘束は、制限を最小限に抑えるという原則に沿って使用されるべき
であり、緊急事態への無計画な対応であってはならない。機械的拘束は、適切な
人員配置の代わりに使用されるべきではない。
26.77
機械的拘束の使用は多職種による協議を経て承認される。
26.80
機械的拘束を受けている患者は継続的な観察下に置かれる必要がある。
26.81
機械的拘束の期間中、15 分ごとに看護師が患者の状態を確認する。
拘束中の観
察及び診察 26.82
登録医師が、機械的拘束の開始後少なくとも 1 時間以内に患者の診察を行う。そ
の後、少なくとも 4 時間ごとに、登録医師による継続的な診察を行う(看護スタッ
フの要請があればより頻繁に行う。)。診察には、患者が可能な限り快適であるこ
との確認や、患者の身体的・精神的健康状態の完全な評価が含まれる。
26.84
患者の臨床記録には、機械的拘束を決定した根拠、医学的・精神医学的評価 、拘
束開始時の患者の状態、拘束に対する反応、診察結果の詳細を記録する。
(出典)“26 Safe and therapeutic responses to disturbed behaviour,”Mental Health Act 1983: Code of Practice, 2015, pp.281314. <https://assets.publishing.service.gov.uk/media/5a80a774e5274a2e87dbb0f0/MHA_Code_of_Practice.PDF>; 藤井千代
「精神保健医療に関する制度の国際比較」(平成 30 年度厚生労働行政推進調査事業費補助金(障害者政策総合研
究事業(精神障害分野))精神科医療提供体制の機能強化を推進する政策研究 分担研究報告書)2019, pp.158159. 厚 生 労 働 科 学 研 究 成 果 デ ー タ ベ ー ス <https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2018/182091/201817041A_
upload/201817041A0011.pdf> を基に筆者作成。
(2)力の行使法の立法の契機
2010 年 9 月、精神治療のために王立ベスレム病院に自発的に入院したアフリカ系イギリス
人の青年オラセニ・ルイス(Olaseni Lewis)が興奮状態になったとして警察に通報され、11 人
の警察官によって拘束された後に死亡する事件が発生した(112)。2017 年 5 月に行われた検死審
問の結果、2 回にわたる機械的拘束等が死亡の一因であると結論づけられた(113)。この事件を
(112) 力の行使法は、ルイス青年の名から採った「セニ法(Seniʼs law)」という通称で呼ばれることが多い。
(113) “Olaseni Lewis: ʻExcessive forceʼ by officers led to death,”9 May 2017. BBC News website <https://www.bbc.com/news/
uk-england-london-39863209>
国立国会図書館 調査及び立法考査局
レファレンス
24
884 号
2024. 8
83
要件に係る規定と、日本の身体的拘束に近い意味を持つ機械的拘束に係る規定を、表 7 に示す。
表7
イギリス「1983 年精神保健法」行動指針における制限的介入・機械的拘束の主な規定
規定事項
行動指針
制限的介入全般に係る指針
26.36
制限的介入
の定義及び
26.37
要件
機械的拘束に係る指針
拘束の定義
及び要件
拘束の承認
規定内容
制限的介入とは、以下の目的で、患者の移動、自由、及び / 又は独立して行動す
る自由を意図的に制限する行為である。
・何も行動を起こさなければ患者又は他者に危害を及ぼす可能性が実際にある危
険な状況を、直ちに制御するため。
・患者や他者に対する危険を終息又は大幅に軽減するため。
制限的介入は、罰を与えたり苦痛又は屈辱を与えたりすることのみを目的として
使用してはならない。
人が患者の行動を制限したり、力を行使(又は力を行使すると威嚇)したりする
場合、次のようにすべきである。
・患者又は他者への危害を防ぐために必要な期間を超えて使用しない。
・危害に対して釣合いの取れた対応をする。
・制限を最小限に抑える手段とする。
26.40
制限的介入を検討する必要がある最も一般的な理由は以下のとおりである。
・患者による身体的暴行。
・危険な、脅迫的な又は破壊的な行動。
・自傷行為又は偶発的な身体的傷害の危険性。
・身体的疲労につながりそうな極端で長時間の過活動。
・逃亡又は逃亡の試み(1983 年精神保健法等に基づき拘禁されている場合)。
26.75
機械的拘束とは、患者の行動の制御を主目的として、器具(ベルトなど)を用い
て患者の身体の一部又は全体の動きを防止・制限・制圧することを指す。
26.76
機械的拘束は、他の拘束方法が安全に採用できない場合にのみ、例外的に使用さ
れる。機械的拘束は、制限を最小限に抑えるという原則に沿って使用されるべき
であり、緊急事態への無計画な対応であってはならない。機械的拘束は、適切な
人員配置の代わりに使用されるべきではない。
26.77
機械的拘束の使用は多職種による協議を経て承認される。
26.80
機械的拘束を受けている患者は継続的な観察下に置かれる必要がある。
26.81
機械的拘束の期間中、15 分ごとに看護師が患者の状態を確認する。
拘束中の観
察及び診察 26.82
登録医師が、機械的拘束の開始後少なくとも 1 時間以内に患者の診察を行う。そ
の後、少なくとも 4 時間ごとに、登録医師による継続的な診察を行う(看護スタッ
フの要請があればより頻繁に行う。)。診察には、患者が可能な限り快適であるこ
との確認や、患者の身体的・精神的健康状態の完全な評価が含まれる。
26.84
患者の臨床記録には、機械的拘束を決定した根拠、医学的・精神医学的評価 、拘
束開始時の患者の状態、拘束に対する反応、診察結果の詳細を記録する。
(出典)“26 Safe and therapeutic responses to disturbed behaviour,”Mental Health Act 1983: Code of Practice, 2015, pp.281314. <https://assets.publishing.service.gov.uk/media/5a80a774e5274a2e87dbb0f0/MHA_Code_of_Practice.PDF>; 藤井千代
「精神保健医療に関する制度の国際比較」(平成 30 年度厚生労働行政推進調査事業費補助金(障害者政策総合研
究事業(精神障害分野))精神科医療提供体制の機能強化を推進する政策研究 分担研究報告書)2019, pp.158159. 厚 生 労 働 科 学 研 究 成 果 デ ー タ ベ ー ス <https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2018/182091/201817041A_
upload/201817041A0011.pdf> を基に筆者作成。
(2)力の行使法の立法の契機
2010 年 9 月、精神治療のために王立ベスレム病院に自発的に入院したアフリカ系イギリス
人の青年オラセニ・ルイス(Olaseni Lewis)が興奮状態になったとして警察に通報され、11 人
の警察官によって拘束された後に死亡する事件が発生した(112)。2017 年 5 月に行われた検死審
問の結果、2 回にわたる機械的拘束等が死亡の一因であると結論づけられた(113)。この事件を
(112) 力の行使法は、ルイス青年の名から採った「セニ法(Seniʼs law)」という通称で呼ばれることが多い。
(113) “Olaseni Lewis: ʻExcessive forceʼ by officers led to death,”9 May 2017. BBC News website <https://www.bbc.com/news/
uk-england-london-39863209>
国立国会図書館 調査及び立法考査局
レファレンス
24
884 号
2024. 8
83