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【参考資料2】長谷川参考人提出資料 (20 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_49021.html |
出典情報 | 精神保健医療福祉の今後の施策推進に関する検討会(第4回 1/15)《厚生労働省》 |
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精神科病院における身体的拘束
3 要件を満たす場合に限り対象となる旨を明示する。
③「多動又は不穏が顕著である場合」の記載は更に明確化し、「多動又は不穏が顕著である場
合であって、そのまま放置すれば患者の生命にまで危険が及ぶおそれや重大な身体損傷のおそ
れがある場合」とする。また、患者が身体的合併症のために「そのまま放置すれば患者の生命
にまで危険が及ぶおそれや重大な身体損傷のおそれがある場合」についても、上記に準じて判
断する旨を明示する。
4
告示 130 号基準の改正案に対する批判
検討会の報告書及び野村総研の報告書に関し、特に関係団体による議論の的となったのは、
告示 130 号基準の改正である。告示 130 号基準は昭和 63(1988)年に策定されて以来、現在
に至るまで 36 年間改定されず、慎重な扱いがなされていただけに(88)、その動向が注視された。
(1)検討会の報告書に対する批判
令和 4(2022)年 10 月 20 日に開催された参議院予算委員会において、参考人として招致さ
れた杏林大学保健学部の長谷川利夫教授は、現行にない「治療が困難」というその要素を加え
ることは、今までよりも医師の裁量を広げることになるとした(89)。また、日本弁護士連合会は、
「多動又は不穏が顕著な場合」の厳格な解釈基準が示されず、多動又は不穏が顕著であること
を前提として「治療の困難性」という追加要件を付すことで、むしろ同要件の拡大解釈を許容
するものになっていると指摘し、検討会の報告書が提示した案に反対した(90)。
(2)野村総研の報告書に対する批判
野村総研の報告書の提案からは、検討会の報告書において論議を呼んだ治療の困難性に関す
る要件が取り除かれたが、関係者からはなお論点が指摘された。
日本弁護士連合会の小林元治会長は、野村総研の報告書の提言は不適切な身体的拘束をか
えって広く認めることになるとし、次の 3 点を挙げて批判した。①極めて限定的な緊急の場合
にしか認められない身体的拘束について、「切迫」ではなく「おそれ」とし、単なる予測段階
で認めることとしていること。②記載イメージにある「必要な期間」は、医師の主観的な治療
方針や、病院の人的・物的体制といった医療側の事情・判断に委ねられるおそれがあること。③身
体的合併症のために「そのまま放置すれば患者の生命にまで危険が及ぶおそれや重大な身体損
傷のおそれがある場合」の身体的拘束については、本人の同意なく身体的拘束を行った上で治
療することを認めることとなり、現行法上は認められていない強制治療を許容すること(91)。
「全国「精神病」者集団」は、告示 130 号基準が定める身体的拘束の要件のうち「多動又は
不穏が顕著な場合」について、「これまで単に多動又は不穏というだけで身体的拘束を開始し
「法改正伴わず 異様 自由奪う判断「厚労相に白紙委任」」『東京新聞』2023.7.2.
第 210 回国会参議院予算委員会会議録第 2 号 令和 4 年 10 月 20 日 p.41.
日本弁護士連合会「厚生労働省「地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制の実現に向けた検討会」報告書
の身体的拘束要件の見直しに対する意見書」2022.10.19, pp.2-3. <https://www.nichibenren.or.jp/library/pdf/document/
opinion/2022/221019_2.pdf>
小林元治「「厚生労働省令和 4 年度障害者総合福祉推進事業 精神科医療における行動制限最小化に関する調
査研究―報告書―」に対する会長声明」2023.9.7. 日本弁護士連合会ウェブサイト <https://www.nichibenren.or.jp/
document/statement/year/2023/230907.html>
国立国会図書館 調査及び立法考査局
レファレンス
20
884 号
2024. 8
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3 要件を満たす場合に限り対象となる旨を明示する。
③「多動又は不穏が顕著である場合」の記載は更に明確化し、「多動又は不穏が顕著である場
合であって、そのまま放置すれば患者の生命にまで危険が及ぶおそれや重大な身体損傷のおそ
れがある場合」とする。また、患者が身体的合併症のために「そのまま放置すれば患者の生命
にまで危険が及ぶおそれや重大な身体損傷のおそれがある場合」についても、上記に準じて判
断する旨を明示する。
4
告示 130 号基準の改正案に対する批判
検討会の報告書及び野村総研の報告書に関し、特に関係団体による議論の的となったのは、
告示 130 号基準の改正である。告示 130 号基準は昭和 63(1988)年に策定されて以来、現在
に至るまで 36 年間改定されず、慎重な扱いがなされていただけに(88)、その動向が注視された。
(1)検討会の報告書に対する批判
令和 4(2022)年 10 月 20 日に開催された参議院予算委員会において、参考人として招致さ
れた杏林大学保健学部の長谷川利夫教授は、現行にない「治療が困難」というその要素を加え
ることは、今までよりも医師の裁量を広げることになるとした(89)。また、日本弁護士連合会は、
「多動又は不穏が顕著な場合」の厳格な解釈基準が示されず、多動又は不穏が顕著であること
を前提として「治療の困難性」という追加要件を付すことで、むしろ同要件の拡大解釈を許容
するものになっていると指摘し、検討会の報告書が提示した案に反対した(90)。
(2)野村総研の報告書に対する批判
野村総研の報告書の提案からは、検討会の報告書において論議を呼んだ治療の困難性に関す
る要件が取り除かれたが、関係者からはなお論点が指摘された。
日本弁護士連合会の小林元治会長は、野村総研の報告書の提言は不適切な身体的拘束をか
えって広く認めることになるとし、次の 3 点を挙げて批判した。①極めて限定的な緊急の場合
にしか認められない身体的拘束について、「切迫」ではなく「おそれ」とし、単なる予測段階
で認めることとしていること。②記載イメージにある「必要な期間」は、医師の主観的な治療
方針や、病院の人的・物的体制といった医療側の事情・判断に委ねられるおそれがあること。③身
体的合併症のために「そのまま放置すれば患者の生命にまで危険が及ぶおそれや重大な身体損
傷のおそれがある場合」の身体的拘束については、本人の同意なく身体的拘束を行った上で治
療することを認めることとなり、現行法上は認められていない強制治療を許容すること(91)。
「全国「精神病」者集団」は、告示 130 号基準が定める身体的拘束の要件のうち「多動又は
不穏が顕著な場合」について、「これまで単に多動又は不穏というだけで身体的拘束を開始し
「法改正伴わず 異様 自由奪う判断「厚労相に白紙委任」」『東京新聞』2023.7.2.
第 210 回国会参議院予算委員会会議録第 2 号 令和 4 年 10 月 20 日 p.41.
日本弁護士連合会「厚生労働省「地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制の実現に向けた検討会」報告書
の身体的拘束要件の見直しに対する意見書」2022.10.19, pp.2-3. <https://www.nichibenren.or.jp/library/pdf/document/
opinion/2022/221019_2.pdf>
小林元治「「厚生労働省令和 4 年度障害者総合福祉推進事業 精神科医療における行動制限最小化に関する調
査研究―報告書―」に対する会長声明」2023.9.7. 日本弁護士連合会ウェブサイト <https://www.nichibenren.or.jp/
document/statement/year/2023/230907.html>
国立国会図書館 調査及び立法考査局
レファレンス
20
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