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【参考資料2】長谷川参考人提出資料 (14 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_49021.html
出典情報 精神保健医療福祉の今後の施策推進に関する検討会(第4回 1/15)《厚生労働省》
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精神科病院における身体的拘束

必要だと(強く)思う」と回答している(50)。
人権への配慮を強化すれば、行動制限をより縮減することが要請されるのに対し、患者本人
の生命・身体・健康を保護するという要請を重視するならば、身体的拘束は安全確保のための
手段として正当化され得るとし、精神医療の現場は行動制限の最小化と医療安全管理・医療事
故防止との間のジレンマに悩んできたとの指摘がある(51)。
日本精神科病院協会の山崎學会長は、新聞取材のインタビューに対して「拘束しないで、患
者さんが逆に自殺したとか、転倒骨折したとかの方が怖い」と述べ、心は痛まないかとの問い
については「適切に法律で決まっている。患者さんの安全を考えて拘束して、なぜ心が痛むの?
しないことで、もっと変な結果が出る方がおっかないじゃないか」と答えている(52)。
(2)患者の暴力等に対する不安
精神科病院 15 か所の医療従事者を対象とする前述のアンケート調査によれば、医療従事者
の 4 分の 3 が患者から暴力を振るわれており、患者に対する具体的な不安として、84.5% が「患
者が物やスタッフに対して物品を投げつける」、84.3% が「他患が暴力をふるわれる」と回答
したほか、多くの医療従事者が「スタッフに敵意を示す」「仕返しを示唆する発言をする」「挑
発的な言動をとる」「スタッフに言葉で攻撃する」「大声をあげる」といった様々な患者の行為
に脅威を感じているとされた(53)。
別の研究でも、入院患者が危険な行動を再び起こす可能性が、身体的拘束を実施する際の判
断に一定程度加味されていると指摘されている(54)。


精神医療審査会の限界
精神医療審査会は、精神障害者の人権に配慮しつつその適正な医療及び保護を確保するため、

精神保健福祉法第 12 条に基づいて各都道府県に設置された組織であり、精神科病院に入院し
ている患者や保護者等から退院請求や処遇改善請求があった場合、その処遇等について専門的
かつ独立的な機関として審査を行うこととされている(55)。しかし、現状において、同審査会
は患者の人権擁護の役割を十分に果たせていないとの指摘がある。
主として問題とされるのは、①精神医療審査会の組織としての独立性、②審査会によって要
求が認められる事案の少なさ(56)、③審査にかかる時間の長さ(57)などである。
①については、各都道府県及び政令指定都市に設置され、各都道府県内に事務局があるため、
真に公正かつ独立した第三者機関たりえていないとの批判がある(58)。また、審査会において



長田ほか 前掲注㊽
岩下覚ほか「行動制限最小化と医療安全管理とのジレンマ」『日本精神科病院協会雑誌』41(6), 2022.6, pp.1516.
 「身体拘束 精神科病院協会の山崎学会長に聞く」『東京新聞』2023.7.7.
 長谷川 前掲注㉖, pp.74-79.
 野田ほか 前掲注㊹, p.860.
 川本哲郎「精神障害者の人権と法―行動制限(身体拘束と隔離)を中心にして―」
『同志社法学』70(6), 2019.3,
p.12. <https://doshisha.repo.nii.ac.jp/record/26831/files/028004030001.pdf>
 篠原由利子「精神医療審査会の機能と限界」
『社会福祉学部論集』15 号, 2019.3, pp.47-50, 55-56. <https://archives.
bukkyo-u.ac.jp/rp-contents/FO/0015/FO00150L045.pdf>
 同上, p.51.
 日本弁護士連合会「精神障害のある人の尊厳の確立を求める決議」2021.10.15, pp.12-13. <https://www.nichibenren.
or.jp/library/ja/civil_liberties/data/2021.pdf>

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884 号

2024. 8

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