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【参考資料2】長谷川参考人提出資料 (33 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_49021.html |
出典情報 | 精神保健医療福祉の今後の施策推進に関する検討会(第4回 1/15)《厚生労働省》 |
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問う
「身体拘束」を
と。
品を作り、放映されている敏腕ディレクターで
しかしその考えは甘かった。やれることは全
もある。原発の放射能問題、ホームレス問題な
部やった。外国特派員協会での会見は、遺族の
ど広く社会問題に関心を持ち、身体拘束にも関
サベジさん親子、弁護士と長谷川の 4 名で行
心を持ってくれていた。会ったその瞬間から意
い、同時にこのメンバーで“精神科医療の身体
気投合し、夢中で話した。そしてテレビで放映
拘束を考える会”の発足を宣言した。その後
されるような番組を作り、身体拘束のことを社
は、会として内閣総理大臣及び厚労大臣宛ての
会に知らせて皆で議論できるようにしようと話
“精神科医療における身体拘束の状況の改善を
し合った。まずは知られなければ議論はできな
求める申入書”の発出、ネット上での署名活
い。
動、国会議員への説明……そしてこのような活
私の頭の中に常にあったのは「なぜケリーさ
動を進めつつ、パットさん(兄)と私は本丸と
んは死ななければならなかったのか?」だ。母
も言うべき厚生労働省にアポイントを取って訪
マーサさん、兄パットさんから、ケリーさんが
ねた。そしてカルテのコピーを手に、上述した
ニュージーランドで精神科病院に 1 か月余り
あまりに矛盾するカルテの内容を説明し、実に
入院した際は、身体拘束など全く受けたことが
いい加減な医療が行われていることを訴えた。
ないと聞いていた。なぜだろう? 何が違うの
命は返ってこないけれど。
だろう?
しかし厚労省の回答は「○○県からは『精神
その頃からニュージーランドに行ってケリー
保健福祉法上問題はなかった』と報告を受けて
さんが入院していた精神科病院を見てみたいと
いる」という木で鼻をくくったものだった。天
いう気持ちが高まっていった。ちょうどその
を仰ぎそうになりながらも、2 人で必死に訴え
頃、普段連絡など取らない知り合いのソーシャ
たが、先方は自動機械のようにその言葉を繰り
ルワーカーから電話がかかってきた。相談する
返すのみだった。その後、どうやって 2 人で
と、助成金を申し込んでみては?と。申し込ん
帰ったかは覚えていない。
だがそれは残念ながら落ちた。しかし自分の中
では勝手にマイケルとニュージーランドに行っ
てケリーさんが入院していた病院の中に入り、
サベジさんの母国ニュージーランドへ
実際のところを見せてもらい話を聞く、という
2017 年はサベジさんご一家と会を作り、と
イメージしかなかった。どうせ行くなら同国の
にかくひたすら走った年だった。その後母の
精神保健研究所にも日本の実態を知ってもらい
マーサさんは地震学の研究で世界を飛び回り、
助言をもらいたい……妄想はどんどん広がった。
兄のパットさんも仕事がだんだん忙しくなって
病院や研究所と 5 か月ほど交渉を続けるう
きた。ちょうどケリーさんが亡くなってから 1
ちに、なんとかケリーさんの担当医、精神保健
年後、1 人のカナダ人ディレクターのマイケ
研究所での責任者との面会など、訪問と撮影の
ル・ゴールドバーグ氏が私の所を訪ねて来られ
許可の段取りができた。最後まで難航したのが
た。
閉鎖病棟に入ることだったが、私 1 名がカメ
彼は日本語が堪能でフランス語も話すトリリ
ラ無しで入るということで落ち着いた。この時
ンガルだ。彼は既に NHK ワールドで 3 つの作
の映像を用いて NHK ハートネット TV が『身
閲覧情報:医学書院 10001
33
vol.25 no.5 精神看護 Sep 2022
445
2024/12/24 11:30:39
「身体拘束」を
と。
品を作り、放映されている敏腕ディレクターで
しかしその考えは甘かった。やれることは全
もある。原発の放射能問題、ホームレス問題な
部やった。外国特派員協会での会見は、遺族の
ど広く社会問題に関心を持ち、身体拘束にも関
サベジさん親子、弁護士と長谷川の 4 名で行
心を持ってくれていた。会ったその瞬間から意
い、同時にこのメンバーで“精神科医療の身体
気投合し、夢中で話した。そしてテレビで放映
拘束を考える会”の発足を宣言した。その後
されるような番組を作り、身体拘束のことを社
は、会として内閣総理大臣及び厚労大臣宛ての
会に知らせて皆で議論できるようにしようと話
“精神科医療における身体拘束の状況の改善を
し合った。まずは知られなければ議論はできな
求める申入書”の発出、ネット上での署名活
い。
動、国会議員への説明……そしてこのような活
私の頭の中に常にあったのは「なぜケリーさ
動を進めつつ、パットさん(兄)と私は本丸と
んは死ななければならなかったのか?」だ。母
も言うべき厚生労働省にアポイントを取って訪
マーサさん、兄パットさんから、ケリーさんが
ねた。そしてカルテのコピーを手に、上述した
ニュージーランドで精神科病院に 1 か月余り
あまりに矛盾するカルテの内容を説明し、実に
入院した際は、身体拘束など全く受けたことが
いい加減な医療が行われていることを訴えた。
ないと聞いていた。なぜだろう? 何が違うの
命は返ってこないけれど。
だろう?
しかし厚労省の回答は「○○県からは『精神
その頃からニュージーランドに行ってケリー
保健福祉法上問題はなかった』と報告を受けて
さんが入院していた精神科病院を見てみたいと
いる」という木で鼻をくくったものだった。天
いう気持ちが高まっていった。ちょうどその
を仰ぎそうになりながらも、2 人で必死に訴え
頃、普段連絡など取らない知り合いのソーシャ
たが、先方は自動機械のようにその言葉を繰り
ルワーカーから電話がかかってきた。相談する
返すのみだった。その後、どうやって 2 人で
と、助成金を申し込んでみては?と。申し込ん
帰ったかは覚えていない。
だがそれは残念ながら落ちた。しかし自分の中
では勝手にマイケルとニュージーランドに行っ
てケリーさんが入院していた病院の中に入り、
サベジさんの母国ニュージーランドへ
実際のところを見せてもらい話を聞く、という
2017 年はサベジさんご一家と会を作り、と
イメージしかなかった。どうせ行くなら同国の
にかくひたすら走った年だった。その後母の
精神保健研究所にも日本の実態を知ってもらい
マーサさんは地震学の研究で世界を飛び回り、
助言をもらいたい……妄想はどんどん広がった。
兄のパットさんも仕事がだんだん忙しくなって
病院や研究所と 5 か月ほど交渉を続けるう
きた。ちょうどケリーさんが亡くなってから 1
ちに、なんとかケリーさんの担当医、精神保健
年後、1 人のカナダ人ディレクターのマイケ
研究所での責任者との面会など、訪問と撮影の
ル・ゴールドバーグ氏が私の所を訪ねて来られ
許可の段取りができた。最後まで難航したのが
た。
閉鎖病棟に入ることだったが、私 1 名がカメ
彼は日本語が堪能でフランス語も話すトリリ
ラ無しで入るということで落ち着いた。この時
ンガルだ。彼は既に NHK ワールドで 3 つの作
の映像を用いて NHK ハートネット TV が『身
閲覧情報:医学書院 10001
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vol.25 no.5 精神看護 Sep 2022
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