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【参考資料2】長谷川参考人提出資料 (13 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_49021.html |
出典情報 | 精神保健医療福祉の今後の施策推進に関する検討会(第4回 1/15)《厚生労働省》 |
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精神科病院における身体的拘束
他方、厚生省は昭和 33(1958)年、精神病床を増設するまでの一時的措置として、各都道
(41)
を発出し、精神科の病床に必要な医師
府県知事宛てに事務次官通知(通称「精神科特例」)
数は一般病床の 3 分の 1、看護師・准看護師は 3 分の 2 でよいと認めた。この措置が現在も形
を変えて続き(42)、慢性的な人手不足を生む結果となり、多くの身体的拘束が行われる原因と
なっているとされる(43)。また、こうした人的配置が身体的拘束を長期化させているとの研究
もある(44)。
3
身体的拘束を前提とした教育、治療
精神科医療に携わる医療従事者は実情を知らないまま精神科病院で働き始め、隔離や身体的
拘束が自然な治療の選択肢として体に沁み込むように教育されるため、既成概念である隔離・
身体的拘束をどのように治療にいかすかという発想にたどり着くのが精一杯ではないか、との
見解がある(45)。
拘束具が整備されている病棟では、「拘束具があるから実施する」「過去に経験したから今回
も実施する」との現場判断が生じる可能性があることも指摘される(46)。拘束具の普及により、
身体的拘束を簡単に行えるようになったとの指摘もある(47)。
4
医療従事者の不安
拘束具の使用を取りやめることについて、医療従事者は大きな不安に直面することが知られ
ている。身体的拘束に対する看護師の意識調査では、看護師の 75% が「身体拘束をすると安
心感がある」と回答している(48)。これまでの研究から、身体的拘束を行わないことの医療従
事者の不安には、患者の安全性が脅かされるとの不安に加え、患者からの暴力等、様々な言動
に対する不安が存在することが看取できる。
(1)患者の安全性に対する不安
15 か所の精神科病院の医療従事者に対して実施した前述のアンケート調査では、回答者の
85.6% が、隔離・身体的拘束を行わないことによる不安として「本人の事故が起きるかもしれ
ない」と回答した。また、隔離・身体的拘束に対する認識としては「患者の保護のために行う
もの」と回答した者が 89.5%、「自殺企図防止に効果的」と回答した者が 81.8% であった(49)。
看護師を対象とした別の意識調査では、回答者全員が「身体拘束は患者の安全を守るために
㊶ 「特殊病院に置くべき医師その他の従業員の定数について」
(昭和 33 年 10 月 2 日発医第 132 号)厚生労働省ウェ
ブサイト <https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta6290&dataType=1&pageNo=1>
㊷ 現在の医療法施行規則(昭和 23 年厚生省令第 50 号)第 19 条に基づく人員配置は、一般病床においては患者
16 人につき医師 1 人、患者 3 人につき看護師 1 人であるのに対し、精神病床においては患者 48 人につき医師 1 人、
患者 4 人につき看護師 1 人である。
㊸ 「「身体拘束」日本はなぜ多いのか」『毎日新聞』(電子版)2021.3.17.
㊹ 野田寿恵ほか「精神科急性期における経時的な隔離・身体拘束中の危険性評価―ビジュアルアナログスケール
を用いた新たな評価表による試み―」『精神医学』58(10), 2016.10, p.861.
㊺ 蓑島豪智「隔離・身体的拘束が必要であるという「文化」「常識」を問い直してみる」『病院・地域精神医学』
61(2), 2019.2, p.29.
㊻ 東 前掲注⑽, p.948.
㊼ 「人を縛り付ける「身体拘束」 決めるのは誰か 闇に失われる民主主義」『毎日新聞』(電子版)2023.6.25.
㊽ 長田恵美子ほか「精神科閉鎖病棟における看護師の身体拘束に関する意識調査」『日本精神科看護学術集会誌』
60(2), 2018, pp.158-161.
㊾ 長谷川 前掲注㉖, pp.68, 74.
72
レファレンス
884 号
国立国会図書館 調査及び立法考査局
2024. 8
13
他方、厚生省は昭和 33(1958)年、精神病床を増設するまでの一時的措置として、各都道
(41)
を発出し、精神科の病床に必要な医師
府県知事宛てに事務次官通知(通称「精神科特例」)
数は一般病床の 3 分の 1、看護師・准看護師は 3 分の 2 でよいと認めた。この措置が現在も形
を変えて続き(42)、慢性的な人手不足を生む結果となり、多くの身体的拘束が行われる原因と
なっているとされる(43)。また、こうした人的配置が身体的拘束を長期化させているとの研究
もある(44)。
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身体的拘束を前提とした教育、治療
精神科医療に携わる医療従事者は実情を知らないまま精神科病院で働き始め、隔離や身体的
拘束が自然な治療の選択肢として体に沁み込むように教育されるため、既成概念である隔離・
身体的拘束をどのように治療にいかすかという発想にたどり着くのが精一杯ではないか、との
見解がある(45)。
拘束具が整備されている病棟では、「拘束具があるから実施する」「過去に経験したから今回
も実施する」との現場判断が生じる可能性があることも指摘される(46)。拘束具の普及により、
身体的拘束を簡単に行えるようになったとの指摘もある(47)。
4
医療従事者の不安
拘束具の使用を取りやめることについて、医療従事者は大きな不安に直面することが知られ
ている。身体的拘束に対する看護師の意識調査では、看護師の 75% が「身体拘束をすると安
心感がある」と回答している(48)。これまでの研究から、身体的拘束を行わないことの医療従
事者の不安には、患者の安全性が脅かされるとの不安に加え、患者からの暴力等、様々な言動
に対する不安が存在することが看取できる。
(1)患者の安全性に対する不安
15 か所の精神科病院の医療従事者に対して実施した前述のアンケート調査では、回答者の
85.6% が、隔離・身体的拘束を行わないことによる不安として「本人の事故が起きるかもしれ
ない」と回答した。また、隔離・身体的拘束に対する認識としては「患者の保護のために行う
もの」と回答した者が 89.5%、「自殺企図防止に効果的」と回答した者が 81.8% であった(49)。
看護師を対象とした別の意識調査では、回答者全員が「身体拘束は患者の安全を守るために
㊶ 「特殊病院に置くべき医師その他の従業員の定数について」
(昭和 33 年 10 月 2 日発医第 132 号)厚生労働省ウェ
ブサイト <https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta6290&dataType=1&pageNo=1>
㊷ 現在の医療法施行規則(昭和 23 年厚生省令第 50 号)第 19 条に基づく人員配置は、一般病床においては患者
16 人につき医師 1 人、患者 3 人につき看護師 1 人であるのに対し、精神病床においては患者 48 人につき医師 1 人、
患者 4 人につき看護師 1 人である。
㊸ 「「身体拘束」日本はなぜ多いのか」『毎日新聞』(電子版)2021.3.17.
㊹ 野田寿恵ほか「精神科急性期における経時的な隔離・身体拘束中の危険性評価―ビジュアルアナログスケール
を用いた新たな評価表による試み―」『精神医学』58(10), 2016.10, p.861.
㊺ 蓑島豪智「隔離・身体的拘束が必要であるという「文化」「常識」を問い直してみる」『病院・地域精神医学』
61(2), 2019.2, p.29.
㊻ 東 前掲注⑽, p.948.
㊼ 「人を縛り付ける「身体拘束」 決めるのは誰か 闇に失われる民主主義」『毎日新聞』(電子版)2023.6.25.
㊽ 長田恵美子ほか「精神科閉鎖病棟における看護師の身体拘束に関する意識調査」『日本精神科看護学術集会誌』
60(2), 2018, pp.158-161.
㊾ 長谷川 前掲注㉖, pp.68, 74.
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レファレンス
884 号
国立国会図書館 調査及び立法考査局
2024. 8
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