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【参考資料2】長谷川参考人提出資料 (22 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_49021.html
出典情報 精神保健医療福祉の今後の施策推進に関する検討会(第4回 1/15)《厚生労働省》
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精神科病院における身体的拘束

(2)身体的拘束に係る連邦憲法裁判所の判決
2018 年 7 月、連邦憲法裁判所は、バーデン・ヴュルテンベルク州及びバイエルン州の精神
科病院に入院していた患者に対して実施された身体的拘束について、ドイツ連邦共和国基本法
(憲法に当たる。以下「基本法」という。)に違反しているとの判決(95)を下した。異議申立て
及び判決の概要は次のとおりである。
(ⅰ)憲法異議の申立て
2009 年 6 月、ミュンヘンの精神科病棟に入院した患者が 7 点拘束を受けたことに対し、患
者の申立人は、個人の自由に対する基本的権利は法律に基づいてのみ干渉されるところ、バイ
エルン州法には身体的拘束を認める具体的な根拠がないとして連邦憲法裁判所に憲法異議の申
立てを行った(96)。また、2015 年 3 月、バーデン・ヴュルテンベルク州の精神科病院に入院し
た別の患者が 5 点拘束(97)を受けたことについて、患者の申立人は、基本法に従えば身体的拘
束には裁判所の命令が必要であるとして連邦憲法裁判所に憲法異議の申立てを行った(98)。
(ⅱ)判決の概要
これらの異議申立てに対し、2018 年 7 月 24 日、連邦憲法裁判所は判決を下し、①患者の拘束は
人身の自由に対する基本権の侵害であること、②短期間(30 分未満)とは言えない 5 点拘束及び
7 点拘束は、基本法第 104 条第 2 項にいう自由剥奪に当たること、③基本法第 104 条第 2 項は自由
剥奪について裁判官の決定を得なければならないと定めており、その旨を手続法上整備することを
要請していること、④拘束によって自由を剥奪される者に対する保護を保障するため、毎日午前 6
時から午後 9 時まで裁判官が待機する必要があることを述べた(99)。その上で、バーデン・ヴュル
テンベルク州及びバイエルン州に対し、2019 年 6 月 30 日までに必要な法改正を行うよう命じた(100)。
(3)判決を受けた法改正
この判決を受けて、バーデン・ヴュルテンベルク州では精神障害者に対する身体的拘束の規
定を含む「精神障害者支援保護法(Psychisch-Kranken-Gesetz)」が改正され、2019 年 6 月 30
日に施行された(101)。同改正により、収容者の行動の可能性を広範又は完全に奪う自由剥奪を
伴う身体的拘束(102)は、認証を受けた施設の申請に基づき、裁判官の事前の命令によってのみ
認められるとされ(103)、その場合は原則として治療又は看護スタッフによる 1 対 1 のケアが確




Urteil des Zweiten Senats vom 24. Juli 2018 2 BvR 309/15. 2 BvR 502/16.
ibid., p.105.
身体的拘束のうち、両手両足と腹部を拘束する場合を「5 点拘束」、5 点拘束に加えて 2 箇所(胸部と額の周囲等)
を拘束する場合を「7 点拘束」という。
 柑本美和「精神科医療における行動制限―身体的拘束について―」『法と精神医療』36 号, 2022, pp.103-104.
 神野礼斉「患者の身体拘束の要件に関するドイツ連邦憲法裁判所判決」『広島法科大学院論集』16 号, 2020.3,
pp.283-284. <https://ir.lib.hiroshima-u.ac.jp/49200/files/4163>
(100) 同上, p.286.
(101) Psychisch-Kranken-Gesetze vom 25. Juni 2019 (GBI. 2019 S. 230). <https://www.landesrecht-bw.de/bsbw/document/jlrPsychKGBWrahmen>
(102) ここでいう身体的拘束とは、5 点拘束及び 7 点拘束だけでなく、30 分以上実施されると予測される全ての身体
的拘束を指すものとされている。
『論究ジュリスト』31 号, 2019.
(103) 渡邉斉志「精神科病院等における自由を剥奪する身体拘束に係る法規定の整備」
夏, p.173. なお、裁判官の命令が、施設内で生じる危険への対応に間に合わないおそれがある場合、施設は事後
的に裁判官の承認を求めることとされている。

国立国会図書館 調査及び立法考査局

レファレンス

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884 号

2024. 8

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