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【参考資料2】長谷川参考人提出資料 (3 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_49021.html |
出典情報 | 精神保健医療福祉の今後の施策推進に関する検討会(第4回 1/15)《厚生労働省》 |
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精神科病院における身体的拘束
要
①
旨
精神保健福祉法第 36 条第 1 項は、「精神科病院の管理者は、入院中の者につき、その
医療又は保護に欠くことのできない限度において、その行動について必要な制限を行う
ことができる」と定めている。また、昭和 63 年 4 月 8 日厚生省告示第 130 号は、身体
的拘束は自殺企図又は自傷行為が著しく切迫している場合などにおいて、他によい代替
方法がない場合に限り用い、できる限り早期に他の方法に切り替えるよう努めなければ
ならないと定めている。
②
日本で身体的拘束を受けた患者数は、平成 15(2003)年から平成 25(2013)年の間
に倍増しており、平成 29(2017)年にピークを迎えた後も 1 万人超の状態が続き、高
止まりとなっている。身体的拘束の実施率について国際比較を行った研究によれば、日
本の実施率は、諸外国と比べ、突出して高い。
③
身体的拘束には人権の侵害のおそれがある上、患者の身体的健康を損ない、精神的苦
痛をもたらすなどの弊害があるにもかかわらず、精神科病院において多くの身体的拘束
が実施されている。その要因として、認知症の高齢患者の増加、精神科病院の人手不足、
身体的拘束を所与の前提とした医療スタッフの教育や患者の治療、患者の安全性や患者
による暴力に係る医療スタッフの不安、患者の人権を守る役割を担う精神医療審査会の
機能的限界などが考えられる。
④
国連障害者権利委員会が障害者権利条約に基づき実施した対日審査の結果、2022 年 9
月に取りまとめられた総括所見においても、精神科病院における障害者の身体的拘束は
「懸念をもって注目する」事項に挙げられ、精神障害者の強制治療を合法化し虐待につ
ながる全ての法規定を廃止するなどの勧告が出されている。現在、政府は、厚生省告示
第 130 号が定める身体的拘束の基準を明確化する検討を行っている。
⑤
ドイツにおいては、2018 年に連邦憲法裁判所が、身体の自由を継続的に剥奪するに
は裁判官による決定が必要であるとの判決を下し、連邦及び一部の州では同判決を受け
て 2019 年に法改正が行われた。イギリスにおいては、2018 年に「精神保健施設(力の
行使)法」が制定され、精神保健施設における行動制限の実施に係る透明性を確保する
ための様々な措置が規定された。イタリアでは精神科病院は廃止された一方、これを代
替する総合病院における精神科病棟等では身体的拘束が実施されており、その削減に向
けた取組が行われている。
62
レファレンス
884 号
国立国会図書館 調査及び立法考査局
2024. 8
3
要
①
旨
精神保健福祉法第 36 条第 1 項は、「精神科病院の管理者は、入院中の者につき、その
医療又は保護に欠くことのできない限度において、その行動について必要な制限を行う
ことができる」と定めている。また、昭和 63 年 4 月 8 日厚生省告示第 130 号は、身体
的拘束は自殺企図又は自傷行為が著しく切迫している場合などにおいて、他によい代替
方法がない場合に限り用い、できる限り早期に他の方法に切り替えるよう努めなければ
ならないと定めている。
②
日本で身体的拘束を受けた患者数は、平成 15(2003)年から平成 25(2013)年の間
に倍増しており、平成 29(2017)年にピークを迎えた後も 1 万人超の状態が続き、高
止まりとなっている。身体的拘束の実施率について国際比較を行った研究によれば、日
本の実施率は、諸外国と比べ、突出して高い。
③
身体的拘束には人権の侵害のおそれがある上、患者の身体的健康を損ない、精神的苦
痛をもたらすなどの弊害があるにもかかわらず、精神科病院において多くの身体的拘束
が実施されている。その要因として、認知症の高齢患者の増加、精神科病院の人手不足、
身体的拘束を所与の前提とした医療スタッフの教育や患者の治療、患者の安全性や患者
による暴力に係る医療スタッフの不安、患者の人権を守る役割を担う精神医療審査会の
機能的限界などが考えられる。
④
国連障害者権利委員会が障害者権利条約に基づき実施した対日審査の結果、2022 年 9
月に取りまとめられた総括所見においても、精神科病院における障害者の身体的拘束は
「懸念をもって注目する」事項に挙げられ、精神障害者の強制治療を合法化し虐待につ
ながる全ての法規定を廃止するなどの勧告が出されている。現在、政府は、厚生省告示
第 130 号が定める身体的拘束の基準を明確化する検討を行っている。
⑤
ドイツにおいては、2018 年に連邦憲法裁判所が、身体の自由を継続的に剥奪するに
は裁判官による決定が必要であるとの判決を下し、連邦及び一部の州では同判決を受け
て 2019 年に法改正が行われた。イギリスにおいては、2018 年に「精神保健施設(力の
行使)法」が制定され、精神保健施設における行動制限の実施に係る透明性を確保する
ための様々な措置が規定された。イタリアでは精神科病院は廃止された一方、これを代
替する総合病院における精神科病棟等では身体的拘束が実施されており、その削減に向
けた取組が行われている。
62
レファレンス
884 号
国立国会図書館 調査及び立法考査局
2024. 8
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