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【参考資料2】長谷川参考人提出資料 (48 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_49021.html |
出典情報 | 精神保健医療福祉の今後の施策推進に関する検討会(第4回 1/15)《厚生労働省》 |
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退
院して 1 か月ほどが経った今。死んでい
ないからこれを書いているし、リスト
カットもしていない。それを医療者たちは、
「希死念慮の強くなる躁と鬱の混合状態を入院
で乗り越えた」と言うのかもしれないし、
「拘
いるように感じていた。
束によって衝動のコントロールがうまくなっ
「おかえりーー‼
た」と言うのかもしれないし、
「薬剤調整がう
寂しかったよ」とハグで
迎えてくれる人にも、あの時の「自分は孤立無
まくいった」と言うのかもしれない。
援だ」という感覚や「一番信頼するこの人にさ
何もやらかさないのを見て「最近調子いい
え私の経験は何も伝わらないのだ」という確信
ね」と言われるたび、世界との間にあるガラス
が水を差し、体を固くするしかなかった。
「拘
は厚くなる。今も私の内部にあるのは、あの時
束のどこがつらかった?」と問う人には、拘束
の記憶である。生きるための手段は、抑え込ま
の何たるかを想像できない敵を思い出して言葉
れている。周りの人に何かを伝えることにも、
を失ったし、
「大変だったね」と慰める人に
無力さを感じる。ふいに明日死ぬのかもしれな
は、大変という言葉の軽さに温度差を感じた。
いし、このまま歳を重ねるのかもしれない。ど
唯一、
「拘束はどんな人に対してもやっちゃい
ちらにしろ、やっぱり私は何かが欠けている。
けない」という大学の教員の言い訳のない言葉
だけが、風穴を開けてくれた。
524
閲覧情報:医学書院 10001
48
2024/12/11 10:32:22
院して 1 か月ほどが経った今。死んでい
ないからこれを書いているし、リスト
カットもしていない。それを医療者たちは、
「希死念慮の強くなる躁と鬱の混合状態を入院
で乗り越えた」と言うのかもしれないし、
「拘
いるように感じていた。
束によって衝動のコントロールがうまくなっ
「おかえりーー‼
た」と言うのかもしれないし、
「薬剤調整がう
寂しかったよ」とハグで
迎えてくれる人にも、あの時の「自分は孤立無
まくいった」と言うのかもしれない。
援だ」という感覚や「一番信頼するこの人にさ
何もやらかさないのを見て「最近調子いい
え私の経験は何も伝わらないのだ」という確信
ね」と言われるたび、世界との間にあるガラス
が水を差し、体を固くするしかなかった。
「拘
は厚くなる。今も私の内部にあるのは、あの時
束のどこがつらかった?」と問う人には、拘束
の記憶である。生きるための手段は、抑え込ま
の何たるかを想像できない敵を思い出して言葉
れている。周りの人に何かを伝えることにも、
を失ったし、
「大変だったね」と慰める人に
無力さを感じる。ふいに明日死ぬのかもしれな
は、大変という言葉の軽さに温度差を感じた。
いし、このまま歳を重ねるのかもしれない。ど
唯一、
「拘束はどんな人に対してもやっちゃい
ちらにしろ、やっぱり私は何かが欠けている。
けない」という大学の教員の言い訳のない言葉
だけが、風穴を開けてくれた。
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