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参考資料4 有効性評価に基づく子宮頸がん検診ガイドライン更新版2020年3月31日 (36 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_25869.html |
出典情報 | がん検診のあり方に関する検討会(第35回 5/25)《厚生労働省》 |
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XV. 考察
1. 利益に関して
今回 HPV 検査を含む子宮頸がん検診については、細胞診を対照群とした無作為化比較試験
がヨーロッパを中心に行われたが、その研究計画は様々であり、その結果を統合することは困難で
あった。特に検診間隔や、検診結果に伴うその後のアルゴリズムが、各国の事情を踏まえて異なり、
また研究途中での変更もみられた。研究が行われた国内での導入を見越した動きかもしれないが、
統合して解析を行うことの是非さえ議論になるものであり、統合解析の精度を必ずしも保証できる
設定ではなかった。また中間解析にあたる報告も多数みられ、なかには同一の研究でありながら対
象者数が発表のたびに異なるものや、組織診断を再評価したものもみられた。今回評価した研究
はいずれも最終解析あるいはそれに近い段階の成績を用いたが、全体的な研究の質という点では
疑問が感じられた。特に HPV 検査陽性者すべてにコルポスコピーを行ったイタリアの NTCC 第 1
相試験の浸潤がん罹患率減少効果だけがとびぬけて大きく、アルゴリズムの影響が大きいと考えら
れた。この研究の主任研究者であるイタリアの Ronco の pool 解析 15)は、HPV 検査による検診の
有効性評価を示す研究として広く用いられているが、NTCC 第 1 相試験の結果が強く反映されて
いると考えられる。今回の検討においては、この pool 解析に含まれていない研究も含めた解析を
試みた。
HPV 検査を含むすべての検診手法(HPV 検査単独法、細胞診・HPV 検査併用法)を統合した
解析では、浸潤がん罹患率減少効果において細胞診単独法を上回る弱い証拠が得られた。評価
した無作為化比較試験の対象人数が少ないあるいは追跡期間が短いことからのパワー不足の可
能性が示唆された一方で、予測区間の広がりからは細胞診単独法を上回る場合と、下回る場合が
存在することも示唆された。評価した個々の研究は様々な対象年齢・検診間隔・判定毎のアルゴリ
ズムを採用していることから、場合によっては細胞診単独法の効果を下回る場合もありえることには
注意が必要である。今後国内で行われている評価研究の結果が出た場合に追加解析が必要とな
るであろう。
現在、国内で直ちに治療対象となるのは、CIN3 以上の病変であり、CIN2 については一部の
例を除き経過観察の対象になっている。浸潤がん罹患率減少効果および CIN3+罹患率減少効
果というエンドポイントについては、今回の解析においても、細胞診を行った対照群と HPV 検査を
含む検査を行った介入群との間で点推定値は下回るものの強い証拠は得られなかった。したがっ
て、HPV 検査を含む検診手法と従来の細胞診との間に、直ちに治療対象となる病変を減少させる
という意味での明確な差があるとは言えないと解釈すべきである。
HPV 検査を含んだ検査と細胞診との相違は、感度が高いという点につきるが、それは研究とし
て検査陽性者をもれなく管理し、診断に結びつけた場合という前提である。HPV 検査を含んだ検
査では要精検率が 10%を超える可能性があり、一般化した場合に精検受診率が大幅に低下する
ことが懸念される。この場合は、診断につながる割合が低下するため、研究で得られた感度は得ら
れないことになる。更に HPV 検査陽性者のその後の CIN3+罹患例を把握・治療できないと、従来
1. 利益に関して
今回 HPV 検査を含む子宮頸がん検診については、細胞診を対照群とした無作為化比較試験
がヨーロッパを中心に行われたが、その研究計画は様々であり、その結果を統合することは困難で
あった。特に検診間隔や、検診結果に伴うその後のアルゴリズムが、各国の事情を踏まえて異なり、
また研究途中での変更もみられた。研究が行われた国内での導入を見越した動きかもしれないが、
統合して解析を行うことの是非さえ議論になるものであり、統合解析の精度を必ずしも保証できる
設定ではなかった。また中間解析にあたる報告も多数みられ、なかには同一の研究でありながら対
象者数が発表のたびに異なるものや、組織診断を再評価したものもみられた。今回評価した研究
はいずれも最終解析あるいはそれに近い段階の成績を用いたが、全体的な研究の質という点では
疑問が感じられた。特に HPV 検査陽性者すべてにコルポスコピーを行ったイタリアの NTCC 第 1
相試験の浸潤がん罹患率減少効果だけがとびぬけて大きく、アルゴリズムの影響が大きいと考えら
れた。この研究の主任研究者であるイタリアの Ronco の pool 解析 15)は、HPV 検査による検診の
有効性評価を示す研究として広く用いられているが、NTCC 第 1 相試験の結果が強く反映されて
いると考えられる。今回の検討においては、この pool 解析に含まれていない研究も含めた解析を
試みた。
HPV 検査を含むすべての検診手法(HPV 検査単独法、細胞診・HPV 検査併用法)を統合した
解析では、浸潤がん罹患率減少効果において細胞診単独法を上回る弱い証拠が得られた。評価
した無作為化比較試験の対象人数が少ないあるいは追跡期間が短いことからのパワー不足の可
能性が示唆された一方で、予測区間の広がりからは細胞診単独法を上回る場合と、下回る場合が
存在することも示唆された。評価した個々の研究は様々な対象年齢・検診間隔・判定毎のアルゴリ
ズムを採用していることから、場合によっては細胞診単独法の効果を下回る場合もありえることには
注意が必要である。今後国内で行われている評価研究の結果が出た場合に追加解析が必要とな
るであろう。
現在、国内で直ちに治療対象となるのは、CIN3 以上の病変であり、CIN2 については一部の
例を除き経過観察の対象になっている。浸潤がん罹患率減少効果および CIN3+罹患率減少効
果というエンドポイントについては、今回の解析においても、細胞診を行った対照群と HPV 検査を
含む検査を行った介入群との間で点推定値は下回るものの強い証拠は得られなかった。したがっ
て、HPV 検査を含む検診手法と従来の細胞診との間に、直ちに治療対象となる病変を減少させる
という意味での明確な差があるとは言えないと解釈すべきである。
HPV 検査を含んだ検査と細胞診との相違は、感度が高いという点につきるが、それは研究とし
て検査陽性者をもれなく管理し、診断に結びつけた場合という前提である。HPV 検査を含んだ検
査では要精検率が 10%を超える可能性があり、一般化した場合に精検受診率が大幅に低下する
ことが懸念される。この場合は、診断につながる割合が低下するため、研究で得られた感度は得ら
れないことになる。更に HPV 検査陽性者のその後の CIN3+罹患例を把握・治療できないと、従来