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参考資料4 有効性評価に基づく子宮頸がん検診ガイドライン更新版2020年3月31日 (43 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_25869.html |
出典情報 | がん検診のあり方に関する検討会(第35回 5/25)《厚生労働省》 |
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XVII. おわりに
子宮頸がん検診は、子宮頸部の擦過細胞診によるスクリーニング検査法として広く行われてきた。
わが国でも 1950 年代後半から一部の自治体で行われるようになり、約 60 年の歴史がある。公益
社団法人日本臨床細胞学会が認定した細胞検査士は約 6,000 人存在しており、国際細胞学会の
国際細胞検査士の資格を有するものも多く、細胞診の精度が高いといわれてきた。
本ガイドラインの更新は、HPV 検査を子宮頸がん検診のなかに取り込むための世界的な動きに
呼応するものである。現在までに得られている証拠を吟味した結果、HPV 検査を含む子宮頸がん
検診は、細胞診を凌駕するほどの利益が得られると示す明確な根拠はなかった。諸外国での研究
はほぼ終了しており、現在日本で進行中の 2 つの研究の結果が報告された時点で、利益に関して
は再評価が必要となる。HPV 検査はハイリスクグループの絞り込みに有効であり、検診間隔を拡
大できるという利便性が確認された。また検診終了を細胞診より早められることもあり、生涯の検診
回数を大幅に減らすことも可能となる。しかしハイリスクグループに分類された場合、治療を要する
CIN3+に進展するかどうか長期間の経過観察が必要となるが、これは先行した欧米でも苦慮して
いる問題である。すべてを医療機関で観察するには、マンパワー不足やコンプライアンスの低下と
いう問題が発生するため、経過観察を中止するグループを設定する動きもみられる。わが国ではま
だ統一した見解がない状況であり、今後関連学会等での議論を期待するが、HPV 検査を含んだ
子宮頸がん検診が成功するか否かは、この経過観察を含めたアルゴリズムが、実臨床の世界で適
切に運用できるかどうかにかかっている。
米国では 2012 年に USPSTF をはじめとした複数のガイドラインで細胞診・HPV 検査併用法が
推奨された。最近報告されたレセプトを用いた受診状況の調査
95)では、細胞診検査の受診率が
2011 年以降徐々に減少し 2014 年には 10%前後低下し、30~49 歳の 4 割程度が併用法を受診
していた(ただし併用法の受診者は 2006 年から一貫して増加している)ことが示されており、異なる
検査法が併存しながら少しずつ移行していることがうかがわれる。わが国でも細胞診判定法である
ベセスダシステムが 2009 年に導入されて以降、従来の日母分類からの移行に相当な年数を要し
たことから、新しいシステムが臨床現場で容認されるまでには膨大な年数がかかることを理解せね
ばならない。特に、細胞診・HPV 検査併用法の場合に、慣れ親しんだ細胞診の結果のみに応じて
精密検査が区分・指導され、細胞診陰性・HPV 検査陽性者に適切な対応がなされない危険性が
懸念される。判定結果に基づくアルゴリズムが公表されたとしても、臨床医が習熟する期間を設け
ないと混乱を招く恐れが高いということを、検診の実施を検討する立場の者は理解する必要がある。
子宮頸がん検診は、子宮頸部の擦過細胞診によるスクリーニング検査法として広く行われてきた。
わが国でも 1950 年代後半から一部の自治体で行われるようになり、約 60 年の歴史がある。公益
社団法人日本臨床細胞学会が認定した細胞検査士は約 6,000 人存在しており、国際細胞学会の
国際細胞検査士の資格を有するものも多く、細胞診の精度が高いといわれてきた。
本ガイドラインの更新は、HPV 検査を子宮頸がん検診のなかに取り込むための世界的な動きに
呼応するものである。現在までに得られている証拠を吟味した結果、HPV 検査を含む子宮頸がん
検診は、細胞診を凌駕するほどの利益が得られると示す明確な根拠はなかった。諸外国での研究
はほぼ終了しており、現在日本で進行中の 2 つの研究の結果が報告された時点で、利益に関して
は再評価が必要となる。HPV 検査はハイリスクグループの絞り込みに有効であり、検診間隔を拡
大できるという利便性が確認された。また検診終了を細胞診より早められることもあり、生涯の検診
回数を大幅に減らすことも可能となる。しかしハイリスクグループに分類された場合、治療を要する
CIN3+に進展するかどうか長期間の経過観察が必要となるが、これは先行した欧米でも苦慮して
いる問題である。すべてを医療機関で観察するには、マンパワー不足やコンプライアンスの低下と
いう問題が発生するため、経過観察を中止するグループを設定する動きもみられる。わが国ではま
だ統一した見解がない状況であり、今後関連学会等での議論を期待するが、HPV 検査を含んだ
子宮頸がん検診が成功するか否かは、この経過観察を含めたアルゴリズムが、実臨床の世界で適
切に運用できるかどうかにかかっている。
米国では 2012 年に USPSTF をはじめとした複数のガイドラインで細胞診・HPV 検査併用法が
推奨された。最近報告されたレセプトを用いた受診状況の調査
95)では、細胞診検査の受診率が
2011 年以降徐々に減少し 2014 年には 10%前後低下し、30~49 歳の 4 割程度が併用法を受診
していた(ただし併用法の受診者は 2006 年から一貫して増加している)ことが示されており、異なる
検査法が併存しながら少しずつ移行していることがうかがわれる。わが国でも細胞診判定法である
ベセスダシステムが 2009 年に導入されて以降、従来の日母分類からの移行に相当な年数を要し
たことから、新しいシステムが臨床現場で容認されるまでには膨大な年数がかかることを理解せね
ばならない。特に、細胞診・HPV 検査併用法の場合に、慣れ親しんだ細胞診の結果のみに応じて
精密検査が区分・指導され、細胞診陰性・HPV 検査陽性者に適切な対応がなされない危険性が
懸念される。判定結果に基づくアルゴリズムが公表されたとしても、臨床医が習熟する期間を設け
ないと混乱を招く恐れが高いということを、検診の実施を検討する立場の者は理解する必要がある。