【参考資料2】薬剤耐性ワンヘルス動向調査報告書2023 (83 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_47987.html |
出典情報 | 薬剤耐性ワンヘルス動向調査検討会(第12回 1/8)《厚生労働省》 |
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73)。セファロスポリン(CEZ、セファレキシンまたは CTX)含有培地で分離された CTX 耐性大腸
菌は、366 検体中 5 個体(1.4%、14 株)から分離された。分離された動物はシカ 243 個体中2個体
(0.8%、6 株)、アナグマ 6 個体中 1 個体(16.7%、2 株)、キツネ 4 個体中 1 個体(25%、3 株)
およびアライグマ 2 個体中 1 個体(50%、2 株)であった。キツネ由来 1 株が AmpC βラクタマーゼ
産生株(CMY-2)であったが、その他は ESBL 産生株(CTX-M-27、CTX-M-55、CTX-M-1)であっ
た。NA 含有培地ではキノロン耐性大腸菌が、366 検体中 17 検体(4.6%)から 35 株分離され、分離
された動物はシカ(10 頭、4.1%)、ハクビシン(1 頭、13.6%)、タヌキ(1 頭、12.5%)、キツネ
(2 頭、50%)およびアライグマ(1 頭、50%)であった。キノロン耐性株は DNA ジャイレースま
たはトポイソメラーゼ IV のキノロン耐性決定領域(QRDR)に変異が認められ、一部の株(シカ 1
頭、キツネ 2 頭)がプラスミド性キノロン耐性遺伝子(qnrB19)を保有していた。
近年、都市部に生息する野生動物を対象にした抗菌剤含有分離培地を用いた調査が報告された(表
73)。2016~2017 年に神奈川県内で捕獲されたタヌキ 80 頭中 20 頭から CTX 含有培地で CTX 耐性菌
が 20 株分離された(25%)。産生する β-ラクタマーゼの内訳は 18 株が CMY-2(n=7)、CTX-M14(n=5)、CTX-M-2(n=2)、CTX-M-1(n=1)、CTX-M-55(n=1)、DHA-1(n=1)を、1
株が CMY-2 と CTX-M-14 を保有したが、1 株は不明であった。2018 年に奈良公園を中心とした市街
地でシカの排泄便を収集して、NA 含有培地を用いてキノロン耐性大腸菌を分離した。59 個体中 41
個体(69.5%)から NA 耐性大腸菌が分離され、その内 22 個体から分離した NA 耐性大腸菌がフルオ
ロキノロンにも耐性を示した。この地域では遺伝子型が類似した薬剤耐性菌が複数のシカで観察され、
シカ-シカ間の伝播(種内伝播)によって高率に耐性菌が分布することが示唆されている。また、
2019~2020 年に奈良公園を中心とした市街地、2018~2021 年に市街地周辺の里山、2019 年に県内
山間部で収集したシカ糞便からセファレキシン含有培地と NA 含有培地を用いて耐性大腸菌を分離し
た。CTX 耐性大腸菌は市街地のシカ(24.3%、35/144)と里山のシカ(4.3%、1/23)から分離され
たが、山間部のシカ(0/30)からは分離されなかった。また、キノロン耐性大腸菌について、CPFX
耐性大腸菌は市街地のシカ(11.1%、16/144)と里山の(4.3%、1/23)から分離されたが、山間部
のシカ(0/30)からは分離されなかった。市街地の複数のシカが保有する薬剤耐性菌と里山のシカ
が保有する薬剤耐性菌の遺伝子型は異なり、市街地のシカから里山のシカへの薬剤耐性菌の拡散は認
められなかった。
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