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【資料No.1】★審査報告書 (72 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_26901.html |
出典情報 | 薬事・食品衛生審議会 薬事分科会(令和4年度第3回 7/20)、医薬品第二部会(令和4年度第6回 7/20)(合同開催)《厚生労働省》 |
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き、本剤は公衆衛生の観点からも非常に有益な薬剤になりうると考える。それぞれの観点について以下
で説明する。
感染性が消失し主な症状が回復したにも関わらず、罹患後症状に悩む患者が一定数存在し、1 つで
も存在すると QOL が低下するため社会的な問題になっている。その病態機序は不明な点が多いが、
ウイルスの残存やウイルスに感染した組織への直接的な障害、ウイルス感染後の免疫調整不全によ
る炎症の進行などが考えられている74)。第Ⅱb 相パートでは、罹患後症状として知られている味覚
異常及び嗅覚異常のスコアにおいて、投与開始から複数時点でプラセボ群と比較して有意な低下が
みられ、味覚異常又は嗅覚異常を有する被験者の割合もプラセボ群より低かった。これらの結果か
ら、本剤は感染直後の症状改善だけでなく、罹患後症状のリスクも低減する治療薬になりうると考
える。
COVID-19 発症初期の病態形成の原因はウイルス増殖による炎症反応であり75)、SARS-CoV-2 の感
染後早期に抗ウイルス薬による薬物治療を開始することで、ウイルス増殖を速やかに抑制し、ウイ
ルス感染に起因する過剰な炎症や免疫反応を抑えることが SARS-CoV-2 による感染症の治療に有益
である。そして、早期のウイルス消失が症状回復に繋がり、重症化を抑制する可能性も示唆されて
いる76)。国際共同第Ⅱ/Ⅲ相試験(T1221 試験)の第Ⅱa 相パート及び第Ⅱb 相パートの結果から、
本薬の優れた抗ウイルス効果が確認されていることから、本薬投与による早期のウイルス消失が重
症化抑制に繋がることが期待できる。
omicron 株では、従来株よりも伝播性が高いことが報告されており77)、ワクチン接種後のブレイク
スルー感染が問題となっている。感染者のウイルス量の推移をモデリングし、伝播が発生した世帯
内同居人との接触時のウイルス量を予測した結果、接触時のウイルス量が高くなるにつれて伝播す
る確率が増加することが示された78)。このシミュレーションに基づくと、ウイルス量を速やかに減
少させることで、伝播を抑制することが可能であると考えられることから、本薬の抗ウイルス効果
により、伝播抑制も期待できる。伝播抑制は、濃厚接触者の二次感染や家庭内感染のリスク低減に
有益であり、感染者増大による医療の逼迫を防ぐことが可能となる。また、一定期間の隔離を要す
ることで労働力の損失が問題となっており、伝播抑制により隔離期間の短縮や感染の制御が期待で
きる。
ICMRA のステートメントにもあるように、初期軽度から中等症含め COVID-19 のあらゆる重症度や
対象患者に対する治療薬の開発は、新しいベネフィットとなり得ると期待される79)。一方、現在、軽症
から中等症Ⅰの患者が大多数を占めるなかで、これらの患者への治療薬及び治療法は限られている。現
在承認されている治療薬には、軽症から中等症Ⅰの患者へ使用されるものはあるが、原則として重症化
リスク因子を有する患者に限定されている。さらに、一部の治療薬では、omicron 株に対して有効性が減
弱するおそれがあることから、投与が推奨されていないなどの課題もある。したがって、実臨床で大多
数を占める軽症から中等症Ⅰの患者へ使用できる薬剤は存在するものの、対象患者が限定的であり、治
療法として十分であると言い難いと考えられる。また、既存の医薬品は、ワクチン未接種の患者や現在
厚生労働省 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 別冊 罹患後症状のマネジメント(暫定版)2021 年 12 月 1 日
日本感染症学会 COVID-19 に対する薬物治療の考え方・第 13.1 版
76)
Int J Infect Dis 2021; 105: 532-9
77)
Nature 2022 doi: 10.1038/d41586-022-00632-3.
78)
Elife 2021; 10: e69302
79)
ICMRA SARS-CoV-2 治療薬及び臨床試験ワークショップ:http://www.icmra.info/drupal/news/20july2020/summary
74)
75)
70
ゾコーバ錠 125 mg_塩野義製薬株式会社_審査報告書
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で説明する。
感染性が消失し主な症状が回復したにも関わらず、罹患後症状に悩む患者が一定数存在し、1 つで
も存在すると QOL が低下するため社会的な問題になっている。その病態機序は不明な点が多いが、
ウイルスの残存やウイルスに感染した組織への直接的な障害、ウイルス感染後の免疫調整不全によ
る炎症の進行などが考えられている74)。第Ⅱb 相パートでは、罹患後症状として知られている味覚
異常及び嗅覚異常のスコアにおいて、投与開始から複数時点でプラセボ群と比較して有意な低下が
みられ、味覚異常又は嗅覚異常を有する被験者の割合もプラセボ群より低かった。これらの結果か
ら、本剤は感染直後の症状改善だけでなく、罹患後症状のリスクも低減する治療薬になりうると考
える。
COVID-19 発症初期の病態形成の原因はウイルス増殖による炎症反応であり75)、SARS-CoV-2 の感
染後早期に抗ウイルス薬による薬物治療を開始することで、ウイルス増殖を速やかに抑制し、ウイ
ルス感染に起因する過剰な炎症や免疫反応を抑えることが SARS-CoV-2 による感染症の治療に有益
である。そして、早期のウイルス消失が症状回復に繋がり、重症化を抑制する可能性も示唆されて
いる76)。国際共同第Ⅱ/Ⅲ相試験(T1221 試験)の第Ⅱa 相パート及び第Ⅱb 相パートの結果から、
本薬の優れた抗ウイルス効果が確認されていることから、本薬投与による早期のウイルス消失が重
症化抑制に繋がることが期待できる。
omicron 株では、従来株よりも伝播性が高いことが報告されており77)、ワクチン接種後のブレイク
スルー感染が問題となっている。感染者のウイルス量の推移をモデリングし、伝播が発生した世帯
内同居人との接触時のウイルス量を予測した結果、接触時のウイルス量が高くなるにつれて伝播す
る確率が増加することが示された78)。このシミュレーションに基づくと、ウイルス量を速やかに減
少させることで、伝播を抑制することが可能であると考えられることから、本薬の抗ウイルス効果
により、伝播抑制も期待できる。伝播抑制は、濃厚接触者の二次感染や家庭内感染のリスク低減に
有益であり、感染者増大による医療の逼迫を防ぐことが可能となる。また、一定期間の隔離を要す
ることで労働力の損失が問題となっており、伝播抑制により隔離期間の短縮や感染の制御が期待で
きる。
ICMRA のステートメントにもあるように、初期軽度から中等症含め COVID-19 のあらゆる重症度や
対象患者に対する治療薬の開発は、新しいベネフィットとなり得ると期待される79)。一方、現在、軽症
から中等症Ⅰの患者が大多数を占めるなかで、これらの患者への治療薬及び治療法は限られている。現
在承認されている治療薬には、軽症から中等症Ⅰの患者へ使用されるものはあるが、原則として重症化
リスク因子を有する患者に限定されている。さらに、一部の治療薬では、omicron 株に対して有効性が減
弱するおそれがあることから、投与が推奨されていないなどの課題もある。したがって、実臨床で大多
数を占める軽症から中等症Ⅰの患者へ使用できる薬剤は存在するものの、対象患者が限定的であり、治
療法として十分であると言い難いと考えられる。また、既存の医薬品は、ワクチン未接種の患者や現在
厚生労働省 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 別冊 罹患後症状のマネジメント(暫定版)2021 年 12 月 1 日
日本感染症学会 COVID-19 に対する薬物治療の考え方・第 13.1 版
76)
Int J Infect Dis 2021; 105: 532-9
77)
Nature 2022 doi: 10.1038/d41586-022-00632-3.
78)
Elife 2021; 10: e69302
79)
ICMRA SARS-CoV-2 治療薬及び臨床試験ワークショップ:http://www.icmra.info/drupal/news/20july2020/summary
74)
75)
70
ゾコーバ錠 125 mg_塩野義製薬株式会社_審査報告書
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