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資料3 指定難病に係る新規の疾病追加について情報提供のあった疾病(個票)(第55回指定難病検討委員会において検討する疾病) (3 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_37546.html |
出典情報 | 厚生科学審議会 疾病対策部会指定難病検討委員会(第54回 2/6)社会保障審議会 小児慢性特定疾病対策部会小児慢性特定疾病検討委員会(第2回 2/6)(合同開催)《厚生労働省》 |
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乳児発症 STING 関連血管炎
○ 概要
1.概要
自己炎症疾患は、自然免疫の制御異常による過剰な炎症性サイトカインの産生を特徴とする疾患で、様々
な組織や臓器病変を呈する。2011 年に遺伝性自己炎症疾患として、Ⅰ型インターフェロノパチーの概念が提
唱された(1)。乳児発症 STING 関連血管炎(Stimulator of interferon genes(STING)-associated vasculopathy
with onset in infancy: SAVI)はⅠ型インターフェロノパチーに分類され、発症年齢は新生児期から成人期まで
様々だが、通常乳児期早期から発症する。乳児期早期から全身性の炎症、皮膚血管炎、間質性肺疾患を特
徴とする。2014 年に STING をコードする STING1 遺伝子の機能獲得変異が原因であることが明らかになった
(2)。本疾患は、乳児期早期からの症状に対して治療介入が求められるが、従来の免疫抑制薬や副腎皮質ス
テロイドによる治療効果は限定的であり、呼吸器合併症に関連して致命的な経過をとることが多い。現在、新
たな治療法が開発されている。
2.原因
インターフェロン(IFN)遺伝子刺激因子(Stimulator of interferon genes:STING)は、STING1 遺伝子によって
コードされるタンパクで、Ⅰ型 IFN シグナルの活性化に介在する。STING は通常、ウイルスや細菌由来の二本
鎖 DNA を細胞質内で感知するセンサーの補助因子として作用する。細胞がウイルスの侵入やサイトカインの
刺激を受けると、STING を介してⅠ型 IFN が産生され、周辺の細胞では IFN 誘導性遺伝子(IFN-stimulated
genes:ISGs)の転写が促進され、抗ウイルス活性が誘導される。乳児発症 STING 関連血管炎では、STING の
機能獲得変異によって I 型インターフェロン産生が亢進する。STING の恒常的な活性化によって血清インター
フェロンαが上昇すると、T 細胞では STAT1 のリン酸化が亢進し ISGs の転写が誘導される。乳児発症 STING
関連血管炎の大半は STING1 のヘテロ接合性機能獲得変異が原因となるが(2)、ホモ接合性変異によって、
慢性的に STING が活性化する症例も存在するため(7)、遺伝子型と表現型についてさらなる検討を要する。
3.症状
乳児発症 STING 関連血管炎では、一般的に乳児期早期から全身性の炎症が遷延し、様々な臓器が障害さ
れる。乳児期から間質性肺疾患を発症し、肺線維症や肺気腫を合併することがある。間質性肺疾患は本疾患
の約 85%にみられ、生命予後に影響する重篤な合併症である。皮疹は、約 80%に合併し、手指や足指など指
趾先端に紅斑や紫斑がみられ、潰瘍や指趾壊疽、爪欠損を伴うことがある。また、耳や鼻、頬部など顔面に
紅斑や紫斑が現れ、中央部が潰瘍化することもある。Ⅰ型 IFN の持続的な過剰産生のため微熱を繰り返し、
高熱を伴うこともある。約半数の症例でみられるが、症状は多様であり、発熱のトリガーや熱型などの詳細は
わかっていない。関節炎は、約 35%の症例でみられ、5 歳あるいはそれ以前の早い時期に発症する。また、そ
の他の症状として、肺炎や皮膚感染症などの感染症は約 26%の頻度で報告されており、臓器障害あるいは全
身性の免疫異常、副腎皮質ステロイドや免疫抑制薬による医原性など複数の原因が疑われるが、詳細な機
序は不明である。自己免疫との関連が示唆される症状として、それぞれ 10%未満の頻度で自己免疫性甲状腺
炎、腎炎、筋炎がみられる。肝炎や胆管炎などの肝胆管異常が約 4%で報告されている。
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○ 概要
1.概要
自己炎症疾患は、自然免疫の制御異常による過剰な炎症性サイトカインの産生を特徴とする疾患で、様々
な組織や臓器病変を呈する。2011 年に遺伝性自己炎症疾患として、Ⅰ型インターフェロノパチーの概念が提
唱された(1)。乳児発症 STING 関連血管炎(Stimulator of interferon genes(STING)-associated vasculopathy
with onset in infancy: SAVI)はⅠ型インターフェロノパチーに分類され、発症年齢は新生児期から成人期まで
様々だが、通常乳児期早期から発症する。乳児期早期から全身性の炎症、皮膚血管炎、間質性肺疾患を特
徴とする。2014 年に STING をコードする STING1 遺伝子の機能獲得変異が原因であることが明らかになった
(2)。本疾患は、乳児期早期からの症状に対して治療介入が求められるが、従来の免疫抑制薬や副腎皮質ス
テロイドによる治療効果は限定的であり、呼吸器合併症に関連して致命的な経過をとることが多い。現在、新
たな治療法が開発されている。
2.原因
インターフェロン(IFN)遺伝子刺激因子(Stimulator of interferon genes:STING)は、STING1 遺伝子によって
コードされるタンパクで、Ⅰ型 IFN シグナルの活性化に介在する。STING は通常、ウイルスや細菌由来の二本
鎖 DNA を細胞質内で感知するセンサーの補助因子として作用する。細胞がウイルスの侵入やサイトカインの
刺激を受けると、STING を介してⅠ型 IFN が産生され、周辺の細胞では IFN 誘導性遺伝子(IFN-stimulated
genes:ISGs)の転写が促進され、抗ウイルス活性が誘導される。乳児発症 STING 関連血管炎では、STING の
機能獲得変異によって I 型インターフェロン産生が亢進する。STING の恒常的な活性化によって血清インター
フェロンαが上昇すると、T 細胞では STAT1 のリン酸化が亢進し ISGs の転写が誘導される。乳児発症 STING
関連血管炎の大半は STING1 のヘテロ接合性機能獲得変異が原因となるが(2)、ホモ接合性変異によって、
慢性的に STING が活性化する症例も存在するため(7)、遺伝子型と表現型についてさらなる検討を要する。
3.症状
乳児発症 STING 関連血管炎では、一般的に乳児期早期から全身性の炎症が遷延し、様々な臓器が障害さ
れる。乳児期から間質性肺疾患を発症し、肺線維症や肺気腫を合併することがある。間質性肺疾患は本疾患
の約 85%にみられ、生命予後に影響する重篤な合併症である。皮疹は、約 80%に合併し、手指や足指など指
趾先端に紅斑や紫斑がみられ、潰瘍や指趾壊疽、爪欠損を伴うことがある。また、耳や鼻、頬部など顔面に
紅斑や紫斑が現れ、中央部が潰瘍化することもある。Ⅰ型 IFN の持続的な過剰産生のため微熱を繰り返し、
高熱を伴うこともある。約半数の症例でみられるが、症状は多様であり、発熱のトリガーや熱型などの詳細は
わかっていない。関節炎は、約 35%の症例でみられ、5 歳あるいはそれ以前の早い時期に発症する。また、そ
の他の症状として、肺炎や皮膚感染症などの感染症は約 26%の頻度で報告されており、臓器障害あるいは全
身性の免疫異常、副腎皮質ステロイドや免疫抑制薬による医原性など複数の原因が疑われるが、詳細な機
序は不明である。自己免疫との関連が示唆される症状として、それぞれ 10%未満の頻度で自己免疫性甲状腺
炎、腎炎、筋炎がみられる。肝炎や胆管炎などの肝胆管異常が約 4%で報告されている。
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