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資料3 指定難病に係る新規の疾病追加について情報提供のあった疾病(個票)(第55回指定難病検討委員会において検討する疾病) (77 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_37546.html |
出典情報 | 厚生科学審議会 疾病対策部会指定難病検討委員会(第54回 2/6)社会保障審議会 小児慢性特定疾病対策部会小児慢性特定疾病検討委員会(第2回 2/6)(合同開催)《厚生労働省》 |
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口唇赤血球症
○ 概要
1. 概要
赤血球は酸素・二酸化炭素の交換をするため、本来は中央が窪んだ円盤状の形態をとるが、赤血球膜
を構成するタンパク遺伝子の変異によって口唇状の形態になる疾患を口唇赤血球症と呼ぶ。遺伝性有口
赤血球症(hereditary stomatocytosis; HSt)は、脱水型(dehydrated hereditary stomatocytosis; DHS)、水
分過剰型(overhydrated hereditary stomatocytosis; OHS)、クリオハイドロサイトーシス(cryohydrocytosis;
CHC)の三つのサブタイプに大別される。
最も頻度の高い DHS は別名、遺伝性乾燥赤血球症(hereditary xerocytosis; Hx)と呼ばれ、赤血球膜陽
イオンチャネル遺伝子の活性化変異により溶血性貧血を発症する。2013 年に原因遺伝子が明らかにな
り、遺伝子検査による確定診断が可能になり、現在我が国で遺伝性球状赤血球症(HS)に次いで多く診
断される先天性溶血性貧血の病型であることが判明している。
2. 原因
DHS の病因は赤血球膜の機械刺激受容性カルシウムチャネル遺伝子(PIEZO1)またはカルシウム濃
度依存性カルシウムチャネル(Gardos チャネル)遺伝子(KCNN4)の機能獲得型変異による、常染色体顕
性(優性)遺伝性疾患である。赤血球浸透圧抵抗の増大で疑い、PIEZO1 あるいは KCNN4 遺伝子変異の
同定により診断する。
3.症状
慢性溶血性貧血を呈する。貧血の重症度には幅があるが、重症例は胎児腹水、胎児水腫で発症する。
PIEZO1 遺伝子変異による DHS 症例では、赤血球輸血非依存性ヘモクロマトーシスが 20 歳代から発症
し、肝・腎機能障害、糖尿病、不整脈、不妊症などが初発症状となることがある。病因未確定のまま脾臓
摘出術を施行した場合に術後重篤な静脈血栓症が発症する。一方、KCNN4 変異例においては脾摘によ
る溶血性貧血の改善を認めないため、本症には原因遺伝子変異の同定が極めて重要である。
4.治療法
赤血球輸血、除鉄療法などの対症療法が主体である。PIEZO1 変異による DHS の男性例では20歳以降
ヘモクロマトーシスを発症し、肝・腎機能障害、糖尿病、ホルモン異常や不整脈を呈する。遺伝子検査で確
定診断された症例に対しては、血清フェリチン値をモニタリングし、鉄キレート療法を開始する。
脾臓摘出術は無効であり、PIEZO1 変異例では脾摘後に重症な静脈血栓症を起こすリスクが大きく、脾摘
術は禁忌である。
本症は赤血球輸血を受けていなくてもヘモクロマトーシスを発症するため、日本では輸血後ヘモクロマトー
シスにのみ適応がある経口鉄キレート剤の投与が出来ない。鉄過剰状態を把握するため、肝臓鉄濃度
(LIC)の MRI 評価を実施することが望ましい。ヘモクロマトーシスが完成する前に造血幹細胞移植を検討す
ることが望ましい。
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○ 概要
1. 概要
赤血球は酸素・二酸化炭素の交換をするため、本来は中央が窪んだ円盤状の形態をとるが、赤血球膜
を構成するタンパク遺伝子の変異によって口唇状の形態になる疾患を口唇赤血球症と呼ぶ。遺伝性有口
赤血球症(hereditary stomatocytosis; HSt)は、脱水型(dehydrated hereditary stomatocytosis; DHS)、水
分過剰型(overhydrated hereditary stomatocytosis; OHS)、クリオハイドロサイトーシス(cryohydrocytosis;
CHC)の三つのサブタイプに大別される。
最も頻度の高い DHS は別名、遺伝性乾燥赤血球症(hereditary xerocytosis; Hx)と呼ばれ、赤血球膜陽
イオンチャネル遺伝子の活性化変異により溶血性貧血を発症する。2013 年に原因遺伝子が明らかにな
り、遺伝子検査による確定診断が可能になり、現在我が国で遺伝性球状赤血球症(HS)に次いで多く診
断される先天性溶血性貧血の病型であることが判明している。
2. 原因
DHS の病因は赤血球膜の機械刺激受容性カルシウムチャネル遺伝子(PIEZO1)またはカルシウム濃
度依存性カルシウムチャネル(Gardos チャネル)遺伝子(KCNN4)の機能獲得型変異による、常染色体顕
性(優性)遺伝性疾患である。赤血球浸透圧抵抗の増大で疑い、PIEZO1 あるいは KCNN4 遺伝子変異の
同定により診断する。
3.症状
慢性溶血性貧血を呈する。貧血の重症度には幅があるが、重症例は胎児腹水、胎児水腫で発症する。
PIEZO1 遺伝子変異による DHS 症例では、赤血球輸血非依存性ヘモクロマトーシスが 20 歳代から発症
し、肝・腎機能障害、糖尿病、不整脈、不妊症などが初発症状となることがある。病因未確定のまま脾臓
摘出術を施行した場合に術後重篤な静脈血栓症が発症する。一方、KCNN4 変異例においては脾摘によ
る溶血性貧血の改善を認めないため、本症には原因遺伝子変異の同定が極めて重要である。
4.治療法
赤血球輸血、除鉄療法などの対症療法が主体である。PIEZO1 変異による DHS の男性例では20歳以降
ヘモクロマトーシスを発症し、肝・腎機能障害、糖尿病、ホルモン異常や不整脈を呈する。遺伝子検査で確
定診断された症例に対しては、血清フェリチン値をモニタリングし、鉄キレート療法を開始する。
脾臓摘出術は無効であり、PIEZO1 変異例では脾摘後に重症な静脈血栓症を起こすリスクが大きく、脾摘
術は禁忌である。
本症は赤血球輸血を受けていなくてもヘモクロマトーシスを発症するため、日本では輸血後ヘモクロマトー
シスにのみ適応がある経口鉄キレート剤の投与が出来ない。鉄過剰状態を把握するため、肝臓鉄濃度
(LIC)の MRI 評価を実施することが望ましい。ヘモクロマトーシスが完成する前に造血幹細胞移植を検討す
ることが望ましい。
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