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資料3 指定難病に係る新規の疾病追加について情報提供のあった疾病(個票)(第55回指定難病検討委員会において検討する疾病) (67 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_37546.html |
出典情報 | 厚生科学審議会 疾病対策部会指定難病検討委員会(第54回 2/6)社会保障審議会 小児慢性特定疾病対策部会小児慢性特定疾病検討委員会(第2回 2/6)(合同開催)《厚生労働省》 |
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サラセミア
○ 概要
1.概要
ヒトヘモグロビンはαグロビン鎖とβグロビン鎖、それぞれ 2 つずつ、4 つのサブユニットから構成される。
グロビン遺伝子(HBA1、HBA2 または HBB)における病原性変異によって、α鎖とβ鎖の量的不均衡が生じ
た結果、赤血球寿命の短縮を来す疾患をサラセミア(thalassemia)といい、常染色体顕性(優性)遺伝性疾患
である。保因者、軽症例が熱帯熱マラリアに対する抵抗性を獲得するため、東南・南・西アジア、地中海沿岸、
アフリカ、中南米などで頻度が高い。
2.原因
合成抑制をきたさない正常なヘモグロビン鎖が赤血球内で相対的に余剰となり、ヘモグロビン単量体から
ヘムが遊離することで酸化ストレスが増大して赤血球膜に傷害を与えることによる。βヘモグロビン鎖は四量
体を取りうるが、α鎖は四量体を構成することができないため、α鎖が余剰となるβサラセミアのほうがより
重症となる。
3.症状
重症例は胎児水腫、中等症以上では、新生児期の早発・遷延性黄疸、慢性貧血、黄疸、胆石、脾腫などで
気付かれる。軽症例では健診等でヘモグロビン濃度の軽度低下、赤血球数増加および平均赤血球容積
(MCV)の低下により気が付かれる。過労、感染症や薬剤服用を契機に貧血が顕性化することがある。β鎖
グロビン遺伝子(HBB)の両アレル変異を有するサラセミアは溶血が顕著で脾摘術、最重症型には造血細胞
移植が行われる。同遺伝子の片アレル変異を有する日本人軽症サラセミアの約 10%も dominant β
thalassemia と呼ばれ溶血が強く脾摘術が必要な例がある。脾摘術後のこれらの患者は成人期に血栓症をお
こすため、成人へ移行期医療が課題となる疾患群である。
4.治療法
赤血球輸血、除鉄療法などの対症療法が主体であるが、上述のように脾摘術が必要な場合がある。頻回
の赤血球輸血を要する例、無効造血が著明な例に対してはヘモクロマトーシス発症前に造血幹細胞移植の
施行を考慮する。
5.予後
重症例では早期から計画的な輸血が必要であるが、高度の貧血を放置すると肝脾腫、発育遅滞、骨の変
形など高度な慢性消耗状態となる。適切な赤血球輸血、除鉄療法を実施しても QOL 低下は著しい。無効造
血に起因するヘモクロマトーシスに対して、本邦では経口鉄キレート剤の使用が保険診療上認められていな
いため、HLA 適合ドナーからの造血細胞移植を考慮する必要がある。
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○ 概要
1.概要
ヒトヘモグロビンはαグロビン鎖とβグロビン鎖、それぞれ 2 つずつ、4 つのサブユニットから構成される。
グロビン遺伝子(HBA1、HBA2 または HBB)における病原性変異によって、α鎖とβ鎖の量的不均衡が生じ
た結果、赤血球寿命の短縮を来す疾患をサラセミア(thalassemia)といい、常染色体顕性(優性)遺伝性疾患
である。保因者、軽症例が熱帯熱マラリアに対する抵抗性を獲得するため、東南・南・西アジア、地中海沿岸、
アフリカ、中南米などで頻度が高い。
2.原因
合成抑制をきたさない正常なヘモグロビン鎖が赤血球内で相対的に余剰となり、ヘモグロビン単量体から
ヘムが遊離することで酸化ストレスが増大して赤血球膜に傷害を与えることによる。βヘモグロビン鎖は四量
体を取りうるが、α鎖は四量体を構成することができないため、α鎖が余剰となるβサラセミアのほうがより
重症となる。
3.症状
重症例は胎児水腫、中等症以上では、新生児期の早発・遷延性黄疸、慢性貧血、黄疸、胆石、脾腫などで
気付かれる。軽症例では健診等でヘモグロビン濃度の軽度低下、赤血球数増加および平均赤血球容積
(MCV)の低下により気が付かれる。過労、感染症や薬剤服用を契機に貧血が顕性化することがある。β鎖
グロビン遺伝子(HBB)の両アレル変異を有するサラセミアは溶血が顕著で脾摘術、最重症型には造血細胞
移植が行われる。同遺伝子の片アレル変異を有する日本人軽症サラセミアの約 10%も dominant β
thalassemia と呼ばれ溶血が強く脾摘術が必要な例がある。脾摘術後のこれらの患者は成人期に血栓症をお
こすため、成人へ移行期医療が課題となる疾患群である。
4.治療法
赤血球輸血、除鉄療法などの対症療法が主体であるが、上述のように脾摘術が必要な場合がある。頻回
の赤血球輸血を要する例、無効造血が著明な例に対してはヘモクロマトーシス発症前に造血幹細胞移植の
施行を考慮する。
5.予後
重症例では早期から計画的な輸血が必要であるが、高度の貧血を放置すると肝脾腫、発育遅滞、骨の変
形など高度な慢性消耗状態となる。適切な赤血球輸血、除鉄療法を実施しても QOL 低下は著しい。無効造
血に起因するヘモクロマトーシスに対して、本邦では経口鉄キレート剤の使用が保険診療上認められていな
いため、HLA 適合ドナーからの造血細胞移植を考慮する必要がある。
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