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【資料1】薬剤耐性ワンヘルス動向調査報告書2022(たたき台) (119 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_29073.html
出典情報 薬剤耐性ワンヘルス動向調査検討会(第10回 11/21)《厚生労働省》
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9. 今後の展望
本報告書は、昨年に引き続き、ワンヘルスの視点から、我が国におけるヒト、動物、農業、食品及び環境
の各分野の薬剤耐性菌の状況並びにヒト及び動物の抗菌薬の使用量(又は販売量)に関する情報を一つに集
約して掲載した。本報告書を踏まえて、多分野間の連携・協力が進むことによって AMR 対策の更なる前進が
期待されるとともに、今後も先進的な調査への取組を続けることが、世界の AMR 対策をリードする上でも重
要と考えられる。本報告書の一部は「薬剤耐性(AMR 対策アクションプラン 2016–2020」発表後のデータを
含んでおり、2017 年に引き続き、2018 年の全抗菌薬使用および、経口セファロスポリン薬、経口マクロラ
イド薬、経口フルオロキノロン薬を含む経口抗菌薬の使用においては、2013 年のデータと比較して減少傾向
にあるが、2020 年の目標値を達成するためには、さらなる AMR 対策の普及が必要である。具体的には、抗
微生物薬の手引き等を参考とし、急性気道感染症を中心に不必要な抗菌薬処方を減少させる必要がある。抗
菌薬適正使用の推進は、適切な抗菌薬を必要なときに使用できることが前提であり、基本的な抗菌薬の安定
供給を確保することが重要である。また、J-SIPHE や薬剤耐性(AMR)ワンヘルスプラットフォームなどの
システムを用い、地域毎の耐性菌情報や抗菌薬使用状況の情報を活用し、地域の状況に応じた抗菌薬の選択
や適切な感染対策の推進が望まれる。さらに、抗菌薬適正使用を進める上で、国民および医療従事者に対し
て様々な手法を用いた教育啓発活動を継続していく必要がある。
動物分野において、2017 年から開始した疾病にり患した愛玩動物由来の大腸菌において、第3世代セファ
ロスポリン及びフルオロキノロン系に対する耐性率が畜産動物由来の大腸菌と比較して高いことが確認され
た。そのことから、これまで実施してきた畜産分野の薬剤耐性対策に加え、2020 年から開始された愛玩動物
における慎重使用の手引きの普及等により薬剤耐性対策を継続・強化していくことが必要である。また、ア
クションプランの成果指標である健康な畜産動物由来大腸菌の第3世代セファロスポリン及びフルオロキノ
ロン系の抗菌剤に対する耐性率は低い水準が保たれており、目標を達成している状況にあると考えられる。
一方、畜産動物においてテトラサイクリン系の抗菌剤の販売量は 2018 年から 2020 年に減少しているが、ア
クションプランの成果指標である健康な畜産動物由来大腸菌のテトラサイクリン耐性率に変動がみられな
い。そのため、引き続きワクチンや抗菌剤の代替薬等の開発・実用化、使用の推進等により抗菌剤の使用機
会を低減し、適正かつ慎重な使用の推進を図るとともに、その耐性率の動向を確認していく必要がある。
本報告書においては、2019 年度に引き続き、ヒト、動物、農業における抗菌薬の使用量(又は販売量)の
比較が可能となり、各分野で使用されている抗菌薬の系統毎の使用量の違いが示されたこと、疾病にり患し
た愛玩動物に続き健康な愛玩動物の薬剤耐性率が報告されたこと、食品分野の薬剤耐性菌や環境における薬
剤耐性菌の動向データが充実したことなど大きな進展が見られ、来年以降も各分野の動向調査において進展
が期待される。さらに、今後は、薬剤耐性対策アクションプランの取組に掲げられた、ヒト、動物、食品等
における薬剤耐性に関する動向調査・監視に関するデータ連携等の取組により、日本における薬剤耐性対策
に貢献していくことが期待される。
現行のアクションプランは 2020 年までの 5 カ年計画で進められてきた。一部の指標は改善傾向にはある
が、改善の乏しい指標や新たに生じた課題はまだ多くあり、国際的な動きと協調しつつ継続的に取り組んで
いく必要がある。産官学が連携し異なる分野の担当組織の協力体制を推進しつつ、ヒトと動物と環境のリス
クを横断的に評価できる研究の推進を検討する。

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