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【資料1】薬剤耐性ワンヘルス動向調査報告書2022(たたき台) (83 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_29073.html
出典情報 薬剤耐性ワンヘルス動向調査検討会(第10回 11/21)《厚生労働省》
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環境 AMR 対策の重要事項として、1)廃棄物が適切に処理されていない場合、環境は抗菌薬および
耐性菌で汚染されうる。2)廃棄物に含まれる抗菌薬や耐性菌の環境汚染が人間の健康に与える影響
については十分に理解されていない。3)耐性菌の人の健康へのリスクを理解するため、環境水のど
こに、どれだけの耐性菌が存在しているか評価する。4)環境水の耐性菌を測定するためにサンプリ
ングと試験方法を評価し、プラクティスを標準化することが挙げられている。また、日本の文献レビ
ューでは、処理後の流出水中や、それを受ける河川水中には相当量の耐性菌・耐性遺伝子が残存して
おり、環境汚染が懸念されること、本邦における臨床分離頻度が稀な耐性菌(KPC-2 や NDM-5 産生
菌等)が下水中から検出されており、下水は市中の薬剤耐性モニタリングに有用なことが報告されて
いる。国内外において環境中の薬剤耐性の存在証明がなされているが、環境 AMR の調査法や評価基
準が定まっていないことから、人や動物へのリスクに関するエビデンスが不十分である。
日本における下水 AMR について文献レビューを行った 8。1991 年~2021 年の対象論文 37 報のう
ち、26 報は AMR、10 報は抗菌薬、1 報は AMR と抗菌薬の両方であった。日本の下水中に ESBL 産
生菌、CRE、MDRP、MDRA、MRSA、VRE などの臨床的に重要な ARB、ARG、残留抗菌薬の存在が
示された。病院排水は臨床的に重要な ARB のリザーバーである可能性があるが、病院排水中の ARB
のヒトへの直接的リスクは明らかではない。また、日本で一般的に使用される抗菌薬は、下水中の
AMR の選択と拡散に寄与するかもしれない。ヒト、動物、環境における AMR 対策を推進していく必
要があるが、ヒトや動物と比べて環境中の AMR に関する知見はまだ乏しいため、日本における環境
AMR の実態調査や研究の進展が期待される。
これまで、院内感染事例では、実地疫学と分離菌の分子疫学解析の結果に基づいて、感染伝播や健
康影響のリスク評価を行う取組が行われてきているが、上述のとおり概して環境由来の薬剤耐性菌が
ヒト等の健康に影響を与えていることを示す研究結果は乏しい。海外では、河川灌漑水が原因と推定
される野菜への汚染 9 や水系レクリエーションにおける曝露リスク等への評価 10 も少しずつであるが
報告されつつあるため、ある一定のリスク循環が想定されている。現時点において環境リスクを論じ
るための確たる基準設定が難しい状況ではあるが、環境 AMR を定量的に調査・評価すること、そし
て健康リスクを評価しうる研究の実施や国内外の主要文献のレビューとリスクアセスメントを通し
て、環境 AMR 負荷の主要因を解明し、ヒトおよび動物への健康リスクへと発展しているのかを探究
していくことが急務である。環境中の薬剤耐性のヒト・動物へのリスクを評価するために、感染症へ
のヒト-動物-環境インターフェイスでの多分野にわたるワンヘルス・アプローチが不可欠である 11。

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