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切れ目のないポリファーマシー対策を提供するための薬物療法情報提供書作成ガイド (12 ページ)
出典
公開元URL | https://www.ncgg.go.jp/hospital/kenshu/news/20250331.html |
出典情報 | 切れ目のないポリファーマシー対策を提供するための薬物療法情報提供書作成ガイド(3/31)《国立長寿医療研究センター》 |
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切れ目のないポリファーマシー対策を提供するための
薬物療法情報提供書作成ガイド
高齢者総合機能評価(CGA)と
ポリファーマシー対策
3
3
薬剤起因性老年症候群
3.1)
Key Points
・老年症候群とは加齢に伴い増加する高齢者特有の症状で、転倒や不眠、便秘、
尿失禁などが挙げられる。
・老年症候群の症状の訴えがあるとき、必ず治療薬により改善しうる病状かどう
か、適格に評価する。
・新規に顕在化した症状が直近で開始した薬の副作用、すなわち薬剤性老年症候群
である可能性を考慮する。
高齢者では、生活習慣病や臓器障害(心不全や呼吸不全、腎不全など)の治療を行うほか、
老年症候群に対する対応が必要である。老年症候群とは、加齢に伴い出現しやすい身体症
状・精神症状のことで、原因は同じ症状でも患者によりさまざまであり、通常薬物を中心と
した治療を要する病態である。代表的なものでは、転倒や尿失禁、物忘れ、やせ、食欲低下
などであり、他にもふらつき・歩行障害、便秘、不眠、褥瘡等非常に多数ある。これら老年
症候群の原因は必ずしも疾患と診断することができないものが多いが、複数の臓器障害が
関与していたり、原因が判別できなかったりする。老年症候群は寿命を短縮させるインパク
トのある症状であり、単に高齢者にとって困った症状であるだけでない。また、治療のため
に薬が増えることで薬物有害作用の可能性が高くなる。
近年、これらの老年症候群の中には、マネジメントのためのガイドラインも発刊されてい
る。不眠症 1)や便秘 2)、慢性疼痛 3)、褥瘡 4)などはガイドラインが出ており、もの忘れにつ
いては認知症のガイドライン 5)、「やせ」についてはサルコペニアのガイドライン 6)がその
症状の鑑別や治療に有用と考えられるため、各ガイドラインにおける推奨について確認さ
れたい。
しかしながら、高齢者の訴える症状は病態を正確に反映していない場合がある。例えば、
高齢者が「眠れない」というときに、安易に不眠症であるから睡眠薬が効果的と考えて処方
がされるべきではない。日中の昼寝が原因で夜眠れなくなっている場合には、必ずしも夜に
長時間の睡眠は必要ではない。また、「眠れない」という理由が不眠ではなく、夜間頻尿が
原因の場合には、睡眠薬の使用以前に泌尿器系疾患の鑑別が必要である。
同様に便秘症にしても、数日に一回であっても形状は硬便でなければ、定義上は便秘とは
いえない。排便の習慣は個々に異なる場合もあり、頻度のみならず固さの評価が必要である。
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薬物療法情報提供書作成ガイド
高齢者総合機能評価(CGA)と
ポリファーマシー対策
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薬剤起因性老年症候群
3.1)
Key Points
・老年症候群とは加齢に伴い増加する高齢者特有の症状で、転倒や不眠、便秘、
尿失禁などが挙げられる。
・老年症候群の症状の訴えがあるとき、必ず治療薬により改善しうる病状かどう
か、適格に評価する。
・新規に顕在化した症状が直近で開始した薬の副作用、すなわち薬剤性老年症候群
である可能性を考慮する。
高齢者では、生活習慣病や臓器障害(心不全や呼吸不全、腎不全など)の治療を行うほか、
老年症候群に対する対応が必要である。老年症候群とは、加齢に伴い出現しやすい身体症
状・精神症状のことで、原因は同じ症状でも患者によりさまざまであり、通常薬物を中心と
した治療を要する病態である。代表的なものでは、転倒や尿失禁、物忘れ、やせ、食欲低下
などであり、他にもふらつき・歩行障害、便秘、不眠、褥瘡等非常に多数ある。これら老年
症候群の原因は必ずしも疾患と診断することができないものが多いが、複数の臓器障害が
関与していたり、原因が判別できなかったりする。老年症候群は寿命を短縮させるインパク
トのある症状であり、単に高齢者にとって困った症状であるだけでない。また、治療のため
に薬が増えることで薬物有害作用の可能性が高くなる。
近年、これらの老年症候群の中には、マネジメントのためのガイドラインも発刊されてい
る。不眠症 1)や便秘 2)、慢性疼痛 3)、褥瘡 4)などはガイドラインが出ており、もの忘れにつ
いては認知症のガイドライン 5)、「やせ」についてはサルコペニアのガイドライン 6)がその
症状の鑑別や治療に有用と考えられるため、各ガイドラインにおける推奨について確認さ
れたい。
しかしながら、高齢者の訴える症状は病態を正確に反映していない場合がある。例えば、
高齢者が「眠れない」というときに、安易に不眠症であるから睡眠薬が効果的と考えて処方
がされるべきではない。日中の昼寝が原因で夜眠れなくなっている場合には、必ずしも夜に
長時間の睡眠は必要ではない。また、「眠れない」という理由が不眠ではなく、夜間頻尿が
原因の場合には、睡眠薬の使用以前に泌尿器系疾患の鑑別が必要である。
同様に便秘症にしても、数日に一回であっても形状は硬便でなければ、定義上は便秘とは
いえない。排便の習慣は個々に異なる場合もあり、頻度のみならず固さの評価が必要である。
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