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別紙1○先進医療Bに係る新規技術の科学的評価等について (57 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000205617_00069.html
出典情報 先進医療会議(第131回 4/10)《厚生労働省》
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が示された。現在、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)肝炎等克服実用化
研究事業「肝硬変患者の QOL の向上及び予後改善に資する研究」として、多施設データが
調査されているとこだが、詳細な結果は明らかでない。当該 AMED 研究事業の先行研究で
は、累積生存率に関して、非代償性肝硬変患者の 3 年目/5 年目累積生存率は 57.1%/32.2%、
代償性肝硬変では 83.0% /61.1%であることが示されたが、研究期間が 2 年と限られていた
点が指摘されている 30)。日本透析医学会統計調査に基づく「わが国の慢性透析療法の現況
(2021 年 12 月 31 日現在)」において、慢性透析患者の死亡原因は心不全、感染症が多く、
続いて悪性新生物がおよそ 9%を占めている。感染症が漸増、脳血管障害が漸減するなか、
悪性新生物は一定に推移している。慢性透析患者の平均余命を踏まえ、本研究で対象とす
る肝硬変や慢性透析患者であっても、一定程度の生命予後が残されていることがわかる。
遠隔転移やリンパ節転移リスクの低い肉眼的食道粘膜内癌もしくは肉眼的胃粘膜内癌に対
しては内視鏡的切除(EMR/ESD)が標準治療であるが、透析患者や肝硬変等による出血
傾向を有する患者、抗血栓療法の休薬困難などの場合には、術後合併症を引き起こすリス
クが高いことから内視鏡的切除が敬遠されることがある。このような患者に対する外科的
切除はさらに術後合併症のリスクが上昇し、術後後遺症によって QOL の低下が起こる可
能性が高い。食道癌診療ガイドラインにおいても内視鏡的切除が困難な場合における APC
療法が選択肢として示され、一定の安全性や有効性が報告されている。しかしながら、APC
療法に係る手技は、診療報酬として評価されていないのが現状である。これまで日本消化
器内視鏡学会が中心となり診療報酬要望を行ってきたが、十分なエビデンスがないとの理
由から認められてこなかった経緯がある。高齢化が進む我が国においては、併存疾患等に
より EMR/ESD が困難な症例が増加すると予想され、手術と比べ低侵襲であり、EMR/ESD
と同程度の治療成績を有する APC 療法の保険収載が望まれる。標準治療である内視鏡的
切除のリスクが高い食道表在癌および胃粘膜癌患者を対象に、APC 療法の局所有効性と安
全性を検証する多施設共同非盲検単群臨床試験を実施する。
・本臨床研究の意義
EMR/ESD 適応の上部消化管粘膜内癌(食道表在癌及び早期胃癌)であっても、高齢や併
存疾患等により EMR/ESD が不耐の症例が増加することが考えられ、APC 療法の適応と
なる可能性がある。本多施設共同臨床研究によって一定の成績が得られれば、外科的切除
や EMR/ESD による合併症の低減と患者の QOL 維持に貢献し得る治療のオプションが 1
つ増えることにつながる可能性がある。高齢化が進む我が国においては意義深い研究であ
り、また、高い高齢化率を有する我が国の低侵襲内視鏡技術による治療成績を ESD が技術
的に困難な海外に対して公表できる。

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