資料1-2-5診断基準等のアップデート案(第49回指定難病検討委員会資料) (91 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_25626.html |
出典情報 | 厚生科学審議会 疾病対策部会指定難病検討委員会(第49回 5/16)《厚生労働省》 |
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○ 概要
1.概要
甲状腺ホルモン不応症(Syndrome of Resistance to Thyroid Hormone:RTH)は、甲状腺ホルモンに対す
る標的臓器の反応性が減弱している家族性症候群として 1967 年、Refetoff らによって初めて報告され、レ
フェトフ症候群とも言われる疾患である。RTH は、甲状腺ホルモンの甲状腺ホルモン受容体(TR)を介した
作用の低下によるものとされている。TR をコードする遺伝子にはα型 TR(TRα)と TRβの2つがあるが、RTH
家系の約 85%に TRβ遺伝子変異が認めることから、RTH は TRβの異常症と同義と考えられるようになって
いる。残りの約 15%の家系における原因遺伝子は明らかでないが、TRβ遺伝子変異を伴う家系と変異が認
められない家系との臨床症状は全く区別がつかないことから、何らかの原因で TRβの機能が障害され発症
するものと考えられている。なお、2012 年 TRα変異を伴う症例が相次いで報告されたが、その臨床症状は
TRβの機能異常症である RTH とは大きく異なるものであった。
2.原因
本症の病因の解明に近づいたのは、1988 年、Sakurai らにより、RTH 患者においてβ型甲状腺ホルモン受
容体(TRβ)遺伝子に変異が同定されたことによる。その後、他の RTH 症例においても TRβ遺伝子変異が
次々と同定され、さらに、TRβ遺伝子改変マウス(ノックインマウス)においても本症の主な特徴である TSH
の抑制を伴わない血中 T4、T3 の高値(SITSH)が再現された。これらの知見により、RTH が TRβの機能異
常症であるという概念が確立した。また、変異 TRβは正常 TRβのみならず、正常 TRαの機能も阻害するドミ
ナントネガティブ作用を有する。このため、本症は例外的な1家系(TRβ遺伝子の大部分を含む領域が欠失
している家系)を除いて全て常染色体性顕性遺伝(優性遺伝)形式をとる。
3.症状
甲状腺腫と軽度の頻脈以外の症状を示さない症例が多いが、甲状腺中毒症症状が強く注意欠陥多動障
害や著しい頻脈を示す患者も多い。逆に受容体異常の程度が強いと、TRαと TRβ双方の働きを抑えてしま
うため、先天性甲状腺機能低下症の症状である知能発達遅延や低身長、難聴といった障害を伴う。
4.治療法
RTH の多くの症例では、甲状腺ホルモンに対する標的臓器の反応性の低下は甲状腺ホルモンが高値に
なり代償されており、治療を必要としない。しかし、一部の患者は血中甲状腺ホルモン濃度上昇による、頻
脈や落ち着きのなさなど甲状腺中毒症の症状を呈する。これらの症状に対し、β遮断薬による対症療法が
有効であることが多いが、この効果が充分でない場合は治療に難渋する。これまで、ドーパミン受容体作用
薬の投与が試みられてきたが、副作用や効果の持続性などの問題があり、一般的治療法としては確立さ
れていない。また、T3 誘導体であり、血中半減期が非常に短い Triac が TSH 分泌抑制のため使用された
が、その効果は限定的であり、しかも日本や米国では入手困難である。また、TSH 受容体拮抗薬による
TSH 作用の抑制が可能になれば、下垂体型不応症に有効である可能性が高く、その開発が望まれる。
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