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産業保健委員会答申について (37 ページ)

公開元URL https://www.med.or.jp/nichiionline/article/011723.html
出典情報 産業保健委員会答申について(5/15)《日本医師会》
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注意を要する。
2012 年の職業性胆管がん発生を契機に、2014 年に SDS 対象化学物質のリ
スクアセスメントが義務化され、この度、ばく露防止のための措置を適切に実
施する制度が導入されたが、化学物質管理者の職務としては、戸惑いがあろう。
第 1 は、「本件事業場で発生した胆管がんについては、1,2-ジクロロプロパ
ンに長期間、高濃度ばく露したことが原因で発症した蓋然性が極めて高いと
判断する。」7)とされたが、1,2-ジクロロプロパンにばく露した時点では、IARC
は 1,2-ジクロロプロパンをグループ3(ヒトに対する発がん性について分類
できない。)としており、発がん性を予見することはできなかった。国連 GHS
発がん性分類の区分 1A、1B、2、IARC のグループ1、2A、2B のいずれに
も分類されていないものについては、今後も発がん性を予見することはでき
ない。
第 2 に発がん性に基づいて濃度基準値を設定することが困難であり、発が
ん物質は濃度基準値が設定されていないことから可能な限りばく露を低減す
ることとされている。日本産業衛生学会はがん原性に基づいて過剰発がん生
涯リスクレベルに対応する評価値を設けているが、6 物質にすぎない。その他
の発がん物質について、たとえ許容濃度が設けられていても、その値は発がん
性以外の有害性を根拠にしたものであるため、発がん性に対する管理に直接
用いることができない。
第 3 にばく露とがん発症との間に約十年から数十年の潜伏期があることか
ら、将来の発がんを見据えて、可能な限りばく露を低くすべきであるが、一次
予防としての行動変容は難しい。
第 4 は、発がんは確率的影響であり、確率的影響のリスクを正しく認知し、
行動を起こすことが難しい。
第 5 に発がん性に閾値がない、あるいはゼロに近い閾値のため、発がん物
質の取り扱いをなくさない限り、リスクゼロは不可能である。どこまで低リス
クならリスク保有を受忍するかについての合意形成が未成熟である。
第 6 に、リスクコミュニケーションが最も重要であるが、上述した事柄か
ら合意形成は難しい。
安衛則第97条の2で「1 年以内に 2 人以上の労働者が同様のがんに罹患
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