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【別添】新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き別冊罹患後症状のマネジメント(第3.0版) (28 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00402.html |
出典情報 | 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き別冊罹患後症状のマネジメント(第3.0版)(10/20)《厚生労働省》 |
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●新型コロナウイルス感染症(COVID-19) 診療の手引き
別冊
罹患後症状のマネジメント・第 3.0 版 ● 4 循環器症状へのアプローチ
循環器症状へのアプローチ
Key Words
循環器病,急性冠症候群,心不全,心膜炎,BNP
1.はじめに
COVID-19 罹患に伴い,急性冠症候群(急性心筋梗塞や不安定狭心症),心不全,不整脈,
脳梗塞,血栓塞栓症などの循環器病が,感染急性期に合併するだけでなく,急性期以降におい
ても発症したという報告がある.そのため,COVID-19 の患者においては,急性期以降も循環
器病が合併する可能性に常に留意する必要がある.循環器病は,状況によっては致死的な状態
となる可能性もあるため,胸痛 , 息切れ,胸部不快感,動悸,四肢のむくみなどの症状を認め
た際には,循環器病を疑い,循環器専門医に相談することがすすめられる.
2.科学的知見
COVID-19 罹患に伴う循環器病の合併率については,患者の重症度や,感染の時期,地域な
どによりばらつきが大きく,海外からの報告では,COVID-19 罹患 5 ~ 7 カ月後までに 43 ~
89%(胸痛 5 ~ 76%,動悸 5 ~ 68%,呼吸困難感 18 ~ 88%,失神 10 ~ 20%)に認めら
れるとの報告もあるが,国内においてはその頻度は少ない可能性も指摘されている.
2020 年 4 月~ 5 月に COVID-19 罹患により入院した患者(平均入院期間 13.5 日,73%
で肺炎を認めた)を対象に COVID-19 罹患時から平均 60 日追跡したイタリアからの研究報
告では,わずか 13%しか症状の完全回復を認めておらず,全身倦怠感が 53%,呼吸困難感が
43.4%,胸痛が 21.7%に認められていた.COVID-19 に罹患して入院し,半数が2つ以上の
合併症を認め,27%が人工呼吸器の治療を受けた 1,077 人(平均年齢 58 歳,36%が女性)
を長期フォローアップ(退院後平均 5.9 カ月間)した英国からの研究報告では 29%しか罹患
前の状態まで改善を認めておらず,56%で倦怠感,48%で呼吸困難感,39%で痛みの症状悪
化を訴えていた.また,COVID-19 に罹患したが入院が不要であった患者を対象に,感染 4 カ
月後と 7 カ月後の症状を調べたドイツからの報告では,感染 4 カ月後に 8.6% が息切れ,9.7%
が全身倦怠感を認めていた.
国内では,2020 年 9 月~ 2021 年 9 月に COVID-19 に罹患して入院し,酸素投与が必要
な中等症以上の成人患者のうち,入院中または退院後3カ月以内に血中高感度トロポニンが陽
性か,BNP 100 pg/mL 以上,NT-proBNP 300 pg/mL 以上の 31 症例を対象として,退院
3 カ月後に心臓 MRI 検査を行った報告がある.MRI 上,13 例(42%)で心筋障害を示唆する
所見が認められ,8 例(26%)が心筋炎の基準を満たしていた.COVID-19 感染前から潜在的
に心筋障害や心不全が合併していた可能性は否定できないが,中等症以上の COVID-19 罹患
者で,心筋障害マーカーが陽性になった症例においては,心筋炎などによる心筋障害の可能性
も考慮して,経過観察を行う必要性がある.
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●新型コロナウイルス感染症(COVID-19) 診療の手引き
別冊
罹患後症状のマネジメント・第 3.0 版 ● 4 循環器症状へのアプローチ
循環器症状へのアプローチ
Key Words
循環器病,急性冠症候群,心不全,心膜炎,BNP
1.はじめに
COVID-19 罹患に伴い,急性冠症候群(急性心筋梗塞や不安定狭心症),心不全,不整脈,
脳梗塞,血栓塞栓症などの循環器病が,感染急性期に合併するだけでなく,急性期以降におい
ても発症したという報告がある.そのため,COVID-19 の患者においては,急性期以降も循環
器病が合併する可能性に常に留意する必要がある.循環器病は,状況によっては致死的な状態
となる可能性もあるため,胸痛 , 息切れ,胸部不快感,動悸,四肢のむくみなどの症状を認め
た際には,循環器病を疑い,循環器専門医に相談することがすすめられる.
2.科学的知見
COVID-19 罹患に伴う循環器病の合併率については,患者の重症度や,感染の時期,地域な
どによりばらつきが大きく,海外からの報告では,COVID-19 罹患 5 ~ 7 カ月後までに 43 ~
89%(胸痛 5 ~ 76%,動悸 5 ~ 68%,呼吸困難感 18 ~ 88%,失神 10 ~ 20%)に認めら
れるとの報告もあるが,国内においてはその頻度は少ない可能性も指摘されている.
2020 年 4 月~ 5 月に COVID-19 罹患により入院した患者(平均入院期間 13.5 日,73%
で肺炎を認めた)を対象に COVID-19 罹患時から平均 60 日追跡したイタリアからの研究報
告では,わずか 13%しか症状の完全回復を認めておらず,全身倦怠感が 53%,呼吸困難感が
43.4%,胸痛が 21.7%に認められていた.COVID-19 に罹患して入院し,半数が2つ以上の
合併症を認め,27%が人工呼吸器の治療を受けた 1,077 人(平均年齢 58 歳,36%が女性)
を長期フォローアップ(退院後平均 5.9 カ月間)した英国からの研究報告では 29%しか罹患
前の状態まで改善を認めておらず,56%で倦怠感,48%で呼吸困難感,39%で痛みの症状悪
化を訴えていた.また,COVID-19 に罹患したが入院が不要であった患者を対象に,感染 4 カ
月後と 7 カ月後の症状を調べたドイツからの報告では,感染 4 カ月後に 8.6% が息切れ,9.7%
が全身倦怠感を認めていた.
国内では,2020 年 9 月~ 2021 年 9 月に COVID-19 に罹患して入院し,酸素投与が必要
な中等症以上の成人患者のうち,入院中または退院後3カ月以内に血中高感度トロポニンが陽
性か,BNP 100 pg/mL 以上,NT-proBNP 300 pg/mL 以上の 31 症例を対象として,退院
3 カ月後に心臓 MRI 検査を行った報告がある.MRI 上,13 例(42%)で心筋障害を示唆する
所見が認められ,8 例(26%)が心筋炎の基準を満たしていた.COVID-19 感染前から潜在的
に心筋障害や心不全が合併していた可能性は否定できないが,中等症以上の COVID-19 罹患
者で,心筋障害マーカーが陽性になった症例においては,心筋炎などによる心筋障害の可能性
も考慮して,経過観察を行う必要性がある.
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