よむ、つかう、まなぶ。
【別添】新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き別冊罹患後症状のマネジメント(第3.0版) (44 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00402.html |
出典情報 | 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き別冊罹患後症状のマネジメント(第3.0版)(10/20)《厚生労働省》 |
ページ画像
ダウンロードした画像を利用する際は「出典情報」を明記してください。
低解像度画像をダウンロード
プレーンテキスト
資料テキストはコンピュータによる自動処理で生成されており、完全に資料と一致しない場合があります。
テキストをコピーしてご利用いただく際は資料と付け合わせてご確認ください。
●新型コロナウイルス感染症(COVID-19) 診療の手引き
別冊
罹患後症状のマネジメント・第 3.0 版 ● 7 精神症状へのアプローチ
問診における具体的なポイントは,直ちに治療を要する身体疾患や器質性障害を除外するこ
とに加え,アルコールや薬物などの精神作用物質による障害もしくは依存症の有無について可
能な範囲で聴き取ることである.さらに,精神科既往歴および家族歴と,希死念慮や自殺企図
の有無も重要である.睡眠障害は睡眠のパターン
(入眠障害,
中途覚醒,
早朝覚醒など)
を聞いて,
まずは適切な睡眠衛生指導を行う.可能であれば,オープンクエスチョンを用い,患者自らの
表出力や思考の状態をみながら,困っている事や悩んでいる事を聴き取るように心がける.焦
燥感があるために性急な解決を求められたとしても,基本的には「共感」と「傾聴」による支
持的精神療法やカウンセリングを主眼とする.
抗不安薬や睡眠薬等の使用には注意が必要であり,特にベンゾジアゼピン系薬剤は,依存性,
筋力低下を伴うふらつき,認知機能低下などの副作用も懸念されることから,服薬のタイミン
グや投与量について慎重に検討した上で処方を開始するのが望ましい.
精神症状は,身体症状に比べて,患者本人の特性や周囲の環境に影響されて変化することが
多い.その結果,自分にあった医療提供者を求め転々とするような探索的な受療行動がみられ
ることもある.このように不安定な状態も精神症状の一環であるため,患者の想いを受容し,
できる限りサポートするといった姿勢が重症化予防に役立つと考えられる.
初期介入のヒントとして,厚生労働省科学障害者政策総合研究事業による『令和4年度版
新型コロナウイルス流行下におけるメンタルヘルス問題への対応マニュアル(https://mhlwgrants.niph.go.jp/project/163862)』も参照されたい.
6.専門医・拠点病院への紹介の目安・タイミング
身体的な訴えにもかかわらず明らかな異常所見がなく心理的な要因の関与が大きいと推察さ
れる場合においても,専門的治療を目的として直ちに精神科へ紹介するのではなく,一旦,総
合診療科などへの受診を勧め,受診先で内科的・心理的評価をするなどの段階を経た上で,必
要に応じて精神科で治療するというプロセスも考慮されたい.場合によっては,精神科医にコ
ンサルテーションを行いながら,そのままプライマリケア医における治療を継続することもあ
り得る.
なお,下記の①~④に当てはまるような症例では,大学病院・総合病院等の精神科,単科精
神科病院,精神科・心療内科のクリニックへの紹介も検討する.
①希死念慮など,緊急性を有する場合
②これ以上は対応困難,より専門的な医療を要すると判断できる場合
③患者との信頼関係の構築が難しいと感じられた場合
④患者側から転医の希望があった場合
また,身体症状を伴わない比較的軽度な精神症状を訴える患者には,精神保健福祉センター
または保健所の精神保健福祉担当部署を紹介することもできる.精神保健福祉センター・保健
所では治療は行わないものの,セルフケア,
ストレスマネジメントといった予防の側面を含めた,
メンタルヘルス全般に関する情報提供や助言・傾聴といった相談支援が行われる.また,就労
支援や障害福祉に関するさまざまな社会的資源へつなぐ活動も行われている(図 7-1)
.
43
別冊
罹患後症状のマネジメント・第 3.0 版 ● 7 精神症状へのアプローチ
問診における具体的なポイントは,直ちに治療を要する身体疾患や器質性障害を除外するこ
とに加え,アルコールや薬物などの精神作用物質による障害もしくは依存症の有無について可
能な範囲で聴き取ることである.さらに,精神科既往歴および家族歴と,希死念慮や自殺企図
の有無も重要である.睡眠障害は睡眠のパターン
(入眠障害,
中途覚醒,
早朝覚醒など)
を聞いて,
まずは適切な睡眠衛生指導を行う.可能であれば,オープンクエスチョンを用い,患者自らの
表出力や思考の状態をみながら,困っている事や悩んでいる事を聴き取るように心がける.焦
燥感があるために性急な解決を求められたとしても,基本的には「共感」と「傾聴」による支
持的精神療法やカウンセリングを主眼とする.
抗不安薬や睡眠薬等の使用には注意が必要であり,特にベンゾジアゼピン系薬剤は,依存性,
筋力低下を伴うふらつき,認知機能低下などの副作用も懸念されることから,服薬のタイミン
グや投与量について慎重に検討した上で処方を開始するのが望ましい.
精神症状は,身体症状に比べて,患者本人の特性や周囲の環境に影響されて変化することが
多い.その結果,自分にあった医療提供者を求め転々とするような探索的な受療行動がみられ
ることもある.このように不安定な状態も精神症状の一環であるため,患者の想いを受容し,
できる限りサポートするといった姿勢が重症化予防に役立つと考えられる.
初期介入のヒントとして,厚生労働省科学障害者政策総合研究事業による『令和4年度版
新型コロナウイルス流行下におけるメンタルヘルス問題への対応マニュアル(https://mhlwgrants.niph.go.jp/project/163862)』も参照されたい.
6.専門医・拠点病院への紹介の目安・タイミング
身体的な訴えにもかかわらず明らかな異常所見がなく心理的な要因の関与が大きいと推察さ
れる場合においても,専門的治療を目的として直ちに精神科へ紹介するのではなく,一旦,総
合診療科などへの受診を勧め,受診先で内科的・心理的評価をするなどの段階を経た上で,必
要に応じて精神科で治療するというプロセスも考慮されたい.場合によっては,精神科医にコ
ンサルテーションを行いながら,そのままプライマリケア医における治療を継続することもあ
り得る.
なお,下記の①~④に当てはまるような症例では,大学病院・総合病院等の精神科,単科精
神科病院,精神科・心療内科のクリニックへの紹介も検討する.
①希死念慮など,緊急性を有する場合
②これ以上は対応困難,より専門的な医療を要すると判断できる場合
③患者との信頼関係の構築が難しいと感じられた場合
④患者側から転医の希望があった場合
また,身体症状を伴わない比較的軽度な精神症状を訴える患者には,精神保健福祉センター
または保健所の精神保健福祉担当部署を紹介することもできる.精神保健福祉センター・保健
所では治療は行わないものの,セルフケア,
ストレスマネジメントといった予防の側面を含めた,
メンタルヘルス全般に関する情報提供や助言・傾聴といった相談支援が行われる.また,就労
支援や障害福祉に関するさまざまな社会的資源へつなぐ活動も行われている(図 7-1)
.
43