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【別添】新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き別冊罹患後症状のマネジメント(第3.0版) (38 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00402.html
出典情報 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き別冊罹患後症状のマネジメント(第3.0版)(10/20)《厚生労働省》
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●新型コロナウイルス感染症(COVID-19) 診療の手引き

別冊

罹患後症状のマネジメント・第 3.0 版 ● 6 神経症状へのアプローチ

4.フォローアップすべき所見・症状
表 6-1 を参照されたい.この中で,ブレインフォグは,「脳の中に霧がかかったような」広

義の認知障害の一種で,記憶障害,知的明晰さの欠如,集中力不足,精神的疲労,不安などを
包含する.
「頭がボーっとする」などの自覚症状が特徴的で,記憶障害,集中力低下などを伴う

と,戸惑いや焦りだけでなく,日常生活や就学・就労,職場復帰などの妨げにもなり得る.ブ
レインフォグの病態や評価方法は未確立であるが,SARS-CoV-2 への感染が脳構造の変化や
萎縮をきたし得るとの報告もあり,更なる知見の蓄積が必要と考えられる.

疲労感・倦怠感は頻度の高い症状である.一方,感染したという思い込みが,持続的な身体

的症状を引き起こし得るとの報告もあり,疲労感・倦怠感の原因を誤って COVID-19 としな
いために,適切な医学的評価が必要である.

5.プライマリケアにおけるマネジメント
神経学的な罹患後症状を訴える患者への問診や基本的な身体診察は必須である.同時に,神

経学的診察を可能な範囲で施行する.体位性頻脈症候群(POTS)などの除外のため,臥位と

立位の血圧と脈拍の確認を行う.COVID-19 罹患後に遷延,あるいは一旦改善後に出現する症
状は多彩で(表 6-1),どれが COVID-19 に関連するのかを判別することは容易ではない.患

者の訴えをよく聞き,「6-3 症状へのアプローチ」の手順で診療にあたる.感染から間もなく,
一定の日数が経過していない場合は罹患後症状の定義を満たさないこと,時間が経過すれば症
状は消失する可能性もあることを念頭におく.そのうえで,
個々の症状はどのような経過をとっ

てきたのかを確認する(例:手足のしびれ感は徐々に改善しているのか,悪化しているのか,
少し改善したがその後改善が得られないのか,など)
.すなわち具体的な症状を確認することが
重要である.他の医療機関を受診している場合は,それまでに受けた検査や治療も確認する.

検 査 デ ー タ で 異 常 所 見 が あ る 場 合 は, 発 症 前 の 検 査 デ ー タ を 確 認 で き れ ば 比 較 す る.

COVID-19 罹患前から有する疾患の有無を検討することも重要である.身体所見や検査結果に

異常がない場合でも,診療は中止せず,リハビリテーションを含む対症療法や心理的サポート
を考慮する.検査で異常がなくても,自覚症状が改善しない限りは,注意深くフォローするこ
とも重要である.亜鉛,フェリチンなどの低下を認める場合に,漫然と補充療法が継続される

こともあるが,患者の症状の改善がみられるのかどうかを検討すべきである.また,
『おくすり
手帳』による併用内服薬の確認や,サプリメントや個人輸入による内服歴なども確認する.

ブレインフォグは,うつ病の部分症状である場合や,高齢者ではアルツハイマー病などの早

期病態を反映している場合もある.また COVID-19 とは無関係に起こり得る症状として,ICU
退室例では,記憶力や注意力の低下,実行機能の障害,認知処理速度の低下などを約 30 ~

80% に認めることも知られている.さらに,筋痛性脳脊髄炎 / 慢性疲労症候群(ME/CFS)

体位性頻脈症候群(POTS)などに類似した症候がみられることもある.患者自身から ME/
CFS ではないかとの訴えがあり,自らがその専門家でない場合は,地域の実情に応じて速やか
に診療経験の豊富な医師への紹介を行う.実際,ME/CFS と罹患後症状の疲労感・倦怠感との

類似性も指摘されており,罹患後症状と ME/CFS には,慢性神経炎症や免疫異常などの類似
した病態があるとする報告もある . 一方で,現時点で罹患後症状に対して免疫療法のエビデン

スはなく,その治療についてはまだ慎重であるべきであるとの意見もあり,更なる検討が必要
である.精神的不調を訴える場合は,精神科専門医への紹介を行う.
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