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【別添】新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き別冊罹患後症状のマネジメント(第3.0版) (41 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00402.html |
出典情報 | 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き別冊罹患後症状のマネジメント(第3.0版)(10/20)《厚生労働省》 |
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7
●新型コロナウイルス感染症(COVID-19) 診療の手引き
別冊
罹患後症状のマネジメント・第 3.0 版 ● 7 精神症状へのアプローチ
精神症状へのアプローチ
Key Words
睡眠障害,不安,抑うつ,集中力低下,認知機能低下,認知症
1.はじめに
COVID-19 の拡大が人々の精神面に及ぼす影響は,パンデミック発生当初から懸念されてい
る.精神症状の発現機序については,ウイルス感染に伴う激しい炎症および免疫反応が生じ,
さまざまな臓器と組織に異常をきたすことにより,血管透過性亢進,血液脳関門(Blood-brain
barrier)における能動輸送障害,およびサイトカインストームと呼ばれる免疫応答異常などの
諸説が言われているが,いまだ解明されていない点が多い.ここでは,COVID-19 罹患と精神
疾患の関連性について,科学的知見に基づき,プライマリケアにおける介入時の留意点や,診
断および治療の流れについて概説する.
2.科学的知見
欧米を中心とする TriNetX と呼ばれる約 8,900 万人の大規模健康保険データを用いた研究
では,COVID-19 罹患に関連して新規発症リスクが有意に増大した精神症状として,不安,抑
うつ,不眠,精神病性障害,認知機能低下,認知症,てんかんなどがあげられている.この研
究では,不安や抑うつのリスク増大は一過性であったが,精神病性障害,認知機能低下,認知
症,てんかんは 2 年間の追跡後もリスク増大が続いており,少なくとも前者と後者のリスク増
大の病因・メカニズムは異なるものであることが示唆された.小児においては,認知機能低下,
てんかん,不眠以外の症状では COVID-19 罹患との有意な関係は認められず,大半の症例では,
一過性に症状が現れるものの,比較的良好な経過をたどることも明らかにされた.
デンマークの国民ベースのコホート調査では,SARS-CoV-2 PCR 陽性者において,陰性者
に比べて,70 歳以上の高齢者で精神疾患(ICD-10:F00-F99)の発症リスクが約 25%増大
し,向精神薬の処方は約 57%増大した.ただし,COVID-19 以外の入院,およびそれ以外の
ウイルスによる肺炎・呼吸器感染症での入院においても同程度のリスク増大がみられたことか
ら,COVID-19 に特異的ではない可能性もある.
ドイツでは,COVID-19 罹患後の日常生活における障害の程度をたずねる自記式アンケー
ト調査が行われ,疲労感・倦怠感,呼吸困難感,集中力低下,身体症状症による心理的な苦痛
(SSD-12)
,うつ病(PHQ-2)などで日常生活における障害との有意な関連が示された.
小児における感染者/非感染者を比較したメンタルヘルス障害関連のメタ解析では,不安,
抑うつ,食欲の問題などがあげられている.
国内の新たな知見では,都市部を対象に行われた横断研究や,インターネットを利用した大
規模アンケート調査の報告などがある.これらの調査研究では,COVID-19 感染と不安や抑う
つとの関連は明らかに示されたが,精神病性障害など持続的な精神症状との関連は示されてい
ない.
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●新型コロナウイルス感染症(COVID-19) 診療の手引き
別冊
罹患後症状のマネジメント・第 3.0 版 ● 7 精神症状へのアプローチ
精神症状へのアプローチ
Key Words
睡眠障害,不安,抑うつ,集中力低下,認知機能低下,認知症
1.はじめに
COVID-19 の拡大が人々の精神面に及ぼす影響は,パンデミック発生当初から懸念されてい
る.精神症状の発現機序については,ウイルス感染に伴う激しい炎症および免疫反応が生じ,
さまざまな臓器と組織に異常をきたすことにより,血管透過性亢進,血液脳関門(Blood-brain
barrier)における能動輸送障害,およびサイトカインストームと呼ばれる免疫応答異常などの
諸説が言われているが,いまだ解明されていない点が多い.ここでは,COVID-19 罹患と精神
疾患の関連性について,科学的知見に基づき,プライマリケアにおける介入時の留意点や,診
断および治療の流れについて概説する.
2.科学的知見
欧米を中心とする TriNetX と呼ばれる約 8,900 万人の大規模健康保険データを用いた研究
では,COVID-19 罹患に関連して新規発症リスクが有意に増大した精神症状として,不安,抑
うつ,不眠,精神病性障害,認知機能低下,認知症,てんかんなどがあげられている.この研
究では,不安や抑うつのリスク増大は一過性であったが,精神病性障害,認知機能低下,認知
症,てんかんは 2 年間の追跡後もリスク増大が続いており,少なくとも前者と後者のリスク増
大の病因・メカニズムは異なるものであることが示唆された.小児においては,認知機能低下,
てんかん,不眠以外の症状では COVID-19 罹患との有意な関係は認められず,大半の症例では,
一過性に症状が現れるものの,比較的良好な経過をたどることも明らかにされた.
デンマークの国民ベースのコホート調査では,SARS-CoV-2 PCR 陽性者において,陰性者
に比べて,70 歳以上の高齢者で精神疾患(ICD-10:F00-F99)の発症リスクが約 25%増大
し,向精神薬の処方は約 57%増大した.ただし,COVID-19 以外の入院,およびそれ以外の
ウイルスによる肺炎・呼吸器感染症での入院においても同程度のリスク増大がみられたことか
ら,COVID-19 に特異的ではない可能性もある.
ドイツでは,COVID-19 罹患後の日常生活における障害の程度をたずねる自記式アンケー
ト調査が行われ,疲労感・倦怠感,呼吸困難感,集中力低下,身体症状症による心理的な苦痛
(SSD-12)
,うつ病(PHQ-2)などで日常生活における障害との有意な関連が示された.
小児における感染者/非感染者を比較したメンタルヘルス障害関連のメタ解析では,不安,
抑うつ,食欲の問題などがあげられている.
国内の新たな知見では,都市部を対象に行われた横断研究や,インターネットを利用した大
規模アンケート調査の報告などがある.これらの調査研究では,COVID-19 感染と不安や抑う
つとの関連は明らかに示されたが,精神病性障害など持続的な精神症状との関連は示されてい
ない.
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