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【別添】新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き別冊罹患後症状のマネジメント(第3.0版) (47 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00402.html |
出典情報 | 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き別冊罹患後症状のマネジメント(第3.0版)(10/20)《厚生労働省》 |
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●新型コロナウイルス感染症(COVID-19) 診療の手引き
別冊
罹患後症状のマネジメント・第 3.0 版 ●8 “ 痛み ” へのアプローチ
“ 痛み ” へのアプローチ
Key Words
頭痛,筋痛・関節痛,不活動(廃用),不安,抑うつ,痛覚変調性疼痛
1.はじめに
COVID-19 罹患後にさまざまな部位に痛みが生じ,その痛みが持続することがある.痛みの
部位は頭,喉,頸,胸,肩,腰,膝のほか全身広範囲にわたる.慢性疼痛は COVID-19 罹患
後に新規発症しやすい症状の一つであり,その痛み症状は筋痛,関節痛などを含む.罹患後疼
痛が引き起こされる要因として,ウイルスによる直接的または炎症性サイトカインによる神経・
筋組織のダメージのほか,PICS や長期安静,不活動(廃用)症候群など治療プロセスによる
影響が考えられる.多くの症状は時間経過とともに改善するが,症状は変動することがあり,
一部の患者で痛みが持続することにより不安や恐怖,活動低下・不活動も影響し,身体的のみ
ならず心理的な不調をきたして慢性化する可能性もあるため,適切な対応が必要とされる.診
療に当たるかかりつけ医等の医療者は,器質的疾患の鑑別診断・治療と並行し,短期(1カ月
程度)の一般的な疼痛治療や生活指導を行っても症状が改善しない,または増悪する場合には,
関係性を維持しつつ,専門医療機関と連携しながら診療を行うことが望ましい.
2.科学的知見
日本人を対象とした最近の報告では,COVID-19 罹患後にみられる主な疼痛症状は,疲労・
倦怠感,頭痛,胸痛,背部痛・腰痛,筋痛・関節痛であり,これらは国外の報告とも一致する.
COVID-19 に関係する筋骨格系の症状はこの 2 年間で増加しており,筋・関節痛と広範性疼痛
のほか,疲労,筋力低下,サルコペニアなどによる運動耐容能・身体パフォーマンス低下がある
(表
8-1)
.頭痛については,他の神経学的症状とともに遅れて発症した場合には二次的な原因を評
価することが必要とされる.
COVID-19 罹患後疼痛は,主に痛覚変調性疼痛(国際疼痛学会分類,
2021)に分類され,
通常,
併存症状(疲労,睡眠の質の低下,認知・情動障害など)を伴う.最初の COVID-19 発症か
ら 3 カ月以上経過した後に新規発症(de novo )する痛みは 75% にのぼり,そのうち神経障害
性疼痛は 7%余りで,以前から慢性疼痛を有する者のうち約 75%が感染後悪化する.これらの
ことから,COVID-19 罹患後疼痛は通常,慢性的な経過をたどり,痛覚変調性疼痛の特徴を有し,
他の疼痛タイプとは臨床的,疫学的に異なる特徴をもつ.また,COVID-19 罹患後症状は,線
維筋痛症や慢性疲労症候群と同様に,疼痛,疲労,不安・抑うつ,破局的思考,運動恐怖が増悪し,
身体機能や認知機能に悪影響を及ぼすが,それらに比べ痛みや疲労の程度は重くない.
日本人の罹患後症状をクラスター分析した報告によると,倦怠感に胸痛や呼吸困難感を伴う
群と,倦怠感に頭痛やブレインフォグを伴う群では生活への支障が大きく,休職や退職に至る
割合が高くなっており,QOL の低下がうかがえる.急性期の重症度が中等症~重症であった人
の 10%以上に関節痛と頭痛が 1 年以上残存し,回復までに 1 年以上要した者は頭痛 73.7%,
関節痛 65.5%,疲労 57.6%,胸痛 36.5%で,いずれも長期にわたり疼痛に苦悩していること
が示された.
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●新型コロナウイルス感染症(COVID-19) 診療の手引き
別冊
罹患後症状のマネジメント・第 3.0 版 ●8 “ 痛み ” へのアプローチ
“ 痛み ” へのアプローチ
Key Words
頭痛,筋痛・関節痛,不活動(廃用),不安,抑うつ,痛覚変調性疼痛
1.はじめに
COVID-19 罹患後にさまざまな部位に痛みが生じ,その痛みが持続することがある.痛みの
部位は頭,喉,頸,胸,肩,腰,膝のほか全身広範囲にわたる.慢性疼痛は COVID-19 罹患
後に新規発症しやすい症状の一つであり,その痛み症状は筋痛,関節痛などを含む.罹患後疼
痛が引き起こされる要因として,ウイルスによる直接的または炎症性サイトカインによる神経・
筋組織のダメージのほか,PICS や長期安静,不活動(廃用)症候群など治療プロセスによる
影響が考えられる.多くの症状は時間経過とともに改善するが,症状は変動することがあり,
一部の患者で痛みが持続することにより不安や恐怖,活動低下・不活動も影響し,身体的のみ
ならず心理的な不調をきたして慢性化する可能性もあるため,適切な対応が必要とされる.診
療に当たるかかりつけ医等の医療者は,器質的疾患の鑑別診断・治療と並行し,短期(1カ月
程度)の一般的な疼痛治療や生活指導を行っても症状が改善しない,または増悪する場合には,
関係性を維持しつつ,専門医療機関と連携しながら診療を行うことが望ましい.
2.科学的知見
日本人を対象とした最近の報告では,COVID-19 罹患後にみられる主な疼痛症状は,疲労・
倦怠感,頭痛,胸痛,背部痛・腰痛,筋痛・関節痛であり,これらは国外の報告とも一致する.
COVID-19 に関係する筋骨格系の症状はこの 2 年間で増加しており,筋・関節痛と広範性疼痛
のほか,疲労,筋力低下,サルコペニアなどによる運動耐容能・身体パフォーマンス低下がある
(表
8-1)
.頭痛については,他の神経学的症状とともに遅れて発症した場合には二次的な原因を評
価することが必要とされる.
COVID-19 罹患後疼痛は,主に痛覚変調性疼痛(国際疼痛学会分類,
2021)に分類され,
通常,
併存症状(疲労,睡眠の質の低下,認知・情動障害など)を伴う.最初の COVID-19 発症か
ら 3 カ月以上経過した後に新規発症(de novo )する痛みは 75% にのぼり,そのうち神経障害
性疼痛は 7%余りで,以前から慢性疼痛を有する者のうち約 75%が感染後悪化する.これらの
ことから,COVID-19 罹患後疼痛は通常,慢性的な経過をたどり,痛覚変調性疼痛の特徴を有し,
他の疼痛タイプとは臨床的,疫学的に異なる特徴をもつ.また,COVID-19 罹患後症状は,線
維筋痛症や慢性疲労症候群と同様に,疼痛,疲労,不安・抑うつ,破局的思考,運動恐怖が増悪し,
身体機能や認知機能に悪影響を及ぼすが,それらに比べ痛みや疲労の程度は重くない.
日本人の罹患後症状をクラスター分析した報告によると,倦怠感に胸痛や呼吸困難感を伴う
群と,倦怠感に頭痛やブレインフォグを伴う群では生活への支障が大きく,休職や退職に至る
割合が高くなっており,QOL の低下がうかがえる.急性期の重症度が中等症~重症であった人
の 10%以上に関節痛と頭痛が 1 年以上残存し,回復までに 1 年以上要した者は頭痛 73.7%,
関節痛 65.5%,疲労 57.6%,胸痛 36.5%で,いずれも長期にわたり疼痛に苦悩していること
が示された.
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