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【別添】新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き別冊罹患後症状のマネジメント(第3.0版) (39 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00402.html
出典情報 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き別冊罹患後症状のマネジメント(第3.0版)(10/20)《厚生労働省》
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●新型コロナウイルス感染症(COVID-19) 診療の手引き

別冊

罹患後症状のマネジメント・第 3.0 版 ● 6 神経症状へのアプローチ

症状が改善して社会復帰できる場合は特段問題ないが,回復に時間がかかる場合もある.そ

の際には,復職までに時間がかかる可能性があることを本人によく説明する.患者自身が復帰
できそうだと言って,完全な社会復帰を許可すると,疲労感・倦怠感のため復帰に失敗するこ

とがある ( 詳細は『12 罹患後症状と産業医学的アプローチ』参照 ).個々の状況を考えながら,
社会復帰の計画をたてる必要がある.神経症状の経過は症状により異なる.多くの症状は自然
に改善するが,特に認知機能低下の頻度や認知症のリスクについては重症者や高齢者で上昇す
る可能性も指摘されており,更なる検討が必要である.また,難治例では復職自体も非常に困
難な場合がある.

患者自身が,改善しないのではないだろうか,といった思いをもつ場合も多い.改善してい

る症状を患者と共有し,自信をもってもらうことも医師の役割である.COVID-19 罹患後症状
の外来経験は蓄積されつつあるが,罹患後症状に特異的な診断方法や治療方針は確立していな
いことを患者に説明することも適宜必要である.

6.専門医・拠点病院への紹介の目安・タイミング
診察した医師自身で,患者をフォロー可能と判断できる場合,
症候が改善してきている場合は,

ただちに専門医へ紹介をせずに,そのまま外来で経過を追跡するスタンスも重要である.
その際,
短期間で再診を行い,悪化があれば速やかに専門医へ紹介する.神経学的な訴えに対応できな

い場合は,早めに脳神経内科専門医を紹介することが望ましい.神経系に関わる検査を施行せ
ずに紹介をしたほうが,類似の検査の繰り返しによる患者負担を避けられる.また,罹患後症
状を疑う症例に対し,診療継続ができない医療機関においては,「COVID-19 の症状と罹患後

症状を含めて検討してもらいましょう」といったスタンスで,専門医療機関への紹介をするこ
とが望ましい.

7.専門医・拠点病院でのマネジメント
まず,COVID-19 とは関係のない疾患が存在する可能性を除外する.社会的に支障をきたす

認知障害が出現した患者では,認知機能検査や心理検査を検討する.COVID-19 以外の原因に
伴う認知症,特に治療可能な認知症を鑑別する.このために頭部 MRI や脳波,脳脊髄液検査な
どを行う.睡眠障害を認める場合は終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG 検査)を検討する.動悸や
頻脈,起立性低血圧を認める患者では,自律神経異常症を考慮する.

疲労感・倦怠感の原因は,感染後の何らかの臓器障害に伴うもの,精神疾患に伴うもの,そ

して特発性に分類できる.診察時には,原因を明らかにする目的で,臓器障害や精神疾患の検
索を行うことが推奨される.生活指導としては,活動の数時間から数日で疲労感・倦怠感の悪
化がみられる患者には,慎重なペース配分と休息が重要であることを伝える.

足 の し び れ 感 や 筋 力 低 下 を 呈 す る 患 者 で は,COVID-19 の 急 性 期 の 重 症 度 を 確 認 し,

critical illness neuropathy/myopathy や, 罹 患 後 症 状 と し て 報 告 さ れ て い る small fiber

neuropathy,さらにはギラン・バレー症候群や脊髄炎,COVID-19 関連筋炎(皮膚筋炎様)
などが急性期から遷延した可能性を考え,神経伝導検査や筋電図検査を行う.

重要なことは,身体症状や検査結果で異常を認めないという理由で診療を打ち切らないこと

である.患者には症状にあわせた生活に対するアドバイスを行い,リハビリテーションを含む
対症療法や心理的サポートを検討する.治療薬に関しては,現時点で有効性が確立されている
ものはなく,少なくとも侵襲的な治療は避けるべきである.現在,複数の臨床試験が進行中で
あり,今後の試験結果を注視する必要がある.

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