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パブリックコメント「令和6年度厚生労働科学研究」 別添(令和6年度厚生労働科学研究の概要) (89 ページ)

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出典情報 「令和6年度厚生労働科学研究」に対する御意見募集について(8/4)《厚生労働省》
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(2)これまでの研究成果の概要、及び政策等への活用又は実用化に向けた取組
【課題名】油症患者の支援と治療研究(令和3~5年度)
【概要】
・全国油症一斉検診における血中の PCB・ダイオキシン類の測定方法の正確性と感度を
検証した。
・測定方法の改良によって、測定時間の短縮、及び使用する消耗品の削減を試みた。
・検診データベースの整備を行い、油症患者の死因調査を継続的に施行できる体制を構
築した。
・死因調査によって、油症患者ではがんによる死亡リスクが一般集団と比較して高いが、
がん以外の疾患による死亡リスクは差がないことが明らかとなったが、主要な交絡因
子による調整は実施できておらず、解釈には注意を要する。
・油症患者の生活の質の向上につながる各種セミナーの開催と油症に関する診療連携を
行った。
【成果の活用】より正確で迅速な血中の PCB・ダイオキシン類の測定方法を確立するこ
とで、油症を含めたダイオキシン中毒症が生じた場合の被害状況の詳細な把握が可能
になる。各種セミナーの開催を通して、油症患者の生活支援だけではなく、油症患者
同士の交流による油症の情報共有などが促進され、油症検診・次世代調査の参加率の
増加が期待される。
【課題名】ダイオキシン類の生体内動態・次世代健康影響に関する研究(令和3~5年
度)
【概要】体脂肪による補正を行い、ダイオキシン類の濃度変化を検討したが、従来の報
告と同様にダイオキシン類の半減期が約 10 年の群と平均寿命よりも長い群があるこ
とが確認された。
【成果の活用】ダイオキシン類の生体内動態を把握する上で貴重な知見である。カネミ
油症に限らずダイオキシン類による健康被害が生じた場合には、人体にどの程度のダ
イオキシン類が残留するか、予測モデルの構築につながると考えられる。
【課題名】ダイオキシン類の毒性を緩和する治療法の確立(令和3~5年度)
【概要】
・ダイオキシン類によって活性化された AHR が炎症を起こすメカニズムにおいて、活性
酸素の産生による酸化ストレスが重要な働きをすることが明らかとなった。このメカ
ニズムを抑制する薬剤として、糖尿病治療薬であるメトホルミン、漢方薬である黄連
解毒湯にその可能性があることを報告した。
・ダイオキシン類の受容体である AHR が、オートファジーの誘導に関与することが明ら
かとなった。また、糖尿病治療薬であるメトホルミンが AHR を介してオートファジー
を誘導することが明らかとなった。さらに、ダイオキシン類による酸化ストレスをメ
トホルミンが抑制する機構が明らかとなった。
・ AHR の 働 き を 調 節 し て 病 態 を 改 善 す る 治 療 用 AHR 調 節 薬 (Therapeutic AHRModulating Agent; TAMA、一般名タピナロフ)による炎症性皮膚疾患の治療(国内第
III 相試験)を令和4年度より開始した。
・タピナロフが抗炎症性サイトカインである IL-37 を誘導することにより、幅広い炎症
性疾患・ダイオキシン中毒(油症含む)に対して有効性を発揮する可能性を示した。
【成果の活用】芳香族炭化水素受容体の働きを制御する薬剤であるタピナロフの開発に
よって、ダイオキシン類による毒性障害に対する新たな治療が可能になりつつある。
現在は、アトピー性皮膚炎・乾癬に関して臨床試験を行っているが、今後は油症の皮
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