資料1-2 指定難病に係る新規の疾病追加について情報提供のあった疾病(個票(第54回指定難病検討委員会において検討する疾病)) (108 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_37543.html |
出典情報 | 厚生科学審議会 疾病対策部会指定難病検討委員会(第54回 1/31)《厚生労働省》 |
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○ 概要
1.概要
1)遺伝的インスリン抵抗症
遺伝的インスリン抵抗症(Genetic insulin resistance syndrome)は、遺伝的な原因によるインスリンシグナル
伝達障害により、高度にインスリン作用が低下するために生じる。1)インスリン受容体遺伝子(INSR)異常、
2)PI3Kp85α遺伝子(PIK3R1)異常(SHORT 症候群)、3)その他の遺伝子異常、4)原因遺伝子未同定に分
類される。
2.原因
インスリン受容体遺伝子または受容体の情報伝達に影響を及ぼす遺伝子の異常によって生じる。1)インス
リン受容体遺伝子(INSR)異常のうち、A 型インスリン抵抗症(Type A insulin resistance syndrome)は一般
的にはヘテロの異常が原因で生じ、その重症型である Donohue 症候群及び Rabson-Mendenhall 症候群は、
ホモまたは複合ヘテロの異常が原因で生じることが多い。2)PI3Kp85α遺伝子(PIK3R1)異常(SHORT 症候
群)は、インスリンの代謝調節作用発現に重要な役割を果たす PI3-キナーゼの調節サブユニット(p85α)を
コードする遺伝子の異常で生じる。3)その他の遺伝子異常は極めて稀であるが、Akt2 遺伝子(AKT2)異常、
TBC1D4 遺伝子(TBC1D4)異常、PKCε遺伝子(PRKCE)異常が原因として生じることが知られている。4)
原因遺伝子が同定されていない原因遺伝子未同定の症例も存在する。
3.症状
インスリン作用障害の程度によって、様々な程度の糖尿病を発症する。糖尿病については、インスリン作用
障害が軽微な場合、食事・運動療法でコントロール可能な場合もあるが、重篤な場合は大量のインスリンを
使用してもコントロールができず、容易に糖尿病性ケトアシドーシス、高血糖高浸透圧症候群、また、高イン
スリン血症による二次的代謝異常等に基づく致死的合併症を併発する。黒色表皮腫、多毛、多嚢胞性卵巣、
低出生体重などの特徴的所見を伴う場合がある。また、Donohue 症候群及び Rabson-Mendenhall 症候群
では、子宮内発育不全、特徴的顔貌、皮下脂肪減少、歯牙・爪の形成異常、松果体過形成なども伴い、
PI3Kp85α遺伝子(PIK3R1)異常(SHORT 症候群)の場合は、特徴的顔貌、Rieger 奇形などを伴う。
4.治療法
糖尿病に対しては経口血糖降下薬やインスリンを用いた治療が行われる。経口血糖降下薬やインスリンが
効果不十分な例で IGF-1 製剤が効果を示す場合もある。
5.予後
重症型である Donohue 症候群では新生児期や乳児期に、Rabson-Mendenhall 症候群の場合は小児期に
糖尿病性ケトアシドーシスや易感染性による重篤な合併症を併発することにより、死亡する例が多い。A 型
インスリン抵抗症や PI3Kp85α遺伝子(PIK3R1)異常(SHORT 症候群)は、小児期には高インスリン血症を
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