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資料1-2 指定難病に係る新規の疾病追加について情報提供のあった疾病(個票(第54回指定難病検討委員会において検討する疾病)) (68 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_37543.html
出典情報 厚生科学審議会 疾病対策部会指定難病検討委員会(第54回 1/31)《厚生労働省》
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フォン・ヒッペル・リンドウ病 von Hippel-Lindau disease (VHL 病)
○概要
1.概要
フォン・ヒッペル・リンドウ(VHL)病は常染色体顕性遺伝を示し、浸透率がほぼ 100%の希少難病である。
脳脊髄血管芽腫、網膜血管腫、膵病変、腎病変、褐色細胞腫、内リンパ嚢腫瘍、精巣上体嚢胞腺腫などを
合併する症候群である。小児期から中高年にかけて、生涯にわたって全身に発症を繰り返し複数回の手術
を要する。四肢の運動および知覚麻痺、めまい、視覚障害、聴覚障害など QOL の低下が著しく、腎機能障
害、糖尿病、副腎不全なども引き起こす。治療は対症療法のみであり、身体機能の温存には、一生涯にわ
たり検査を行い、適切な時期での治療介入を行うことが必須となる。多臓器に病変がおよぶため、疾患とし
ての全容が明らかにされていない。
2.原因
染色体3番短腕 25-26 にある VHL 遺伝子異常による蛋白機能の不活性化により引き起こされると考え
られている。VHL 遺伝子蛋白は hypoxia inducible factor (低酸素誘導因子)などいくつかの蛋白の分解に
関与しているが、その他にも多くの機能があるとされており、 VHL 遺伝子蛋白の機能の不活性化により発
症する様々な病態とその発症機構は未だ不明である。
3.症状
脳脊髄血管芽腫は主に神経症状(頭痛、嘔気・嘔吐、めまい、歩行困難、肢体の疼痛・運動異常・感覚
異常など)、網膜血管腫は視力低下、視野障害、歪視など、内リンパ嚢腫瘍(内耳)では、難聴、耳鳴り、め
まいなど、腎腫瘍は腎機能低下による腎不全症状、副腎褐色細胞腫はカテコールアミン産生による高血圧、
動悸、頻脈、胸痛、顔面蒼白、発汗、不安感、便秘など消化器症状や心不全などに加えて摘出による副腎
機能不全、膵腫瘍は膵機能低下による症状(消化酵素分泌の低下による消化不良、体重減少、インスリン
分泌低下による糖尿病)を引き起こす。いずれの病変も多発性、再発性に発症する。発症年齢は小児期か
ら中高年までと一生涯であるが、20~40 代での発症が最も多い。脳脊髄、眼、耳、膵、精巣は良性腫瘍で
あり、腎腫瘍は腎細胞癌であるが3㎝以内で治療介入を行えば良性腫瘍と同等に生命予後は良好である。
いずれの腫瘍も多発性再発性で複数回の治療を要することから、全身臓器の機能温存が非常に困難であ
り、QOL が低下することが問題点となる。
4.治療法
いずれの疾患も根治的な治療法はなく、また発症予防法もない。対症的な外科的治療が適応となるが、
多発性再発性であるため機能温存のために、適切な時期での治療介入が必要である。膵機能低下に対し
ては、インスリン補充療法や、副腎機能低下については、ステロイド補充療法、腎機能低下に対しては血液
透析が必要となる場合がある。
5.予後
VHL 病における各病変の進行は緩徐であり、複数の診療科で定期検査を継続し適切な時期に治療を行
えば生命予後自体は保たれる。しかし、多臓器において多発性再発性であり、各臓器への頻回の外科的
治療による機能障害が複数臓器において同時進行的に発生するため、QOL は著しく低下する。

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