資料1-2 指定難病に係る新規の疾病追加について情報提供のあった疾病(個票(第54回指定難病検討委員会において検討する疾病)) (63 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_37543.html |
出典情報 | 厚生科学審議会 疾病対策部会指定難病検討委員会(第54回 1/31)《厚生労働省》 |
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○ 概要
1.概要
紀 伊 半 島 南 部 は、グアム島 とともに筋 萎 縮 性 側 索 硬 化 症 ( ALS) の世 界 的 な多 発 地 域 とし
て知 られている。これらの地 域 には、パーキンソニズムと認 知 症 を主 症 状 とする特 異 な神 経 変 性
疾 患 であるパーキンソン認 知 症 複 合 ( parkinsonism-dementia complex、PDC) が多 発 しており、
ALSと密 接 な関 連 がある。(1)地域性:紀伊半島南部の和歌山県から三重県にまたがる、牟婁郡とその
周辺地域(具体的には、和歌山県田辺市から三重県松阪市を結んだライン以南)の居住者、あるいは居住
歴のあるもの。(2)臨床病型と臨床症状:臨床病型には、ALS型とPDC型がある。ALS型は、筋萎縮、線維束
性収縮、腱反射亢進、Babinski徴候などの上位と下位の運動ニューロン障害症状を示し、古典的なALSと
異なるところはない。PDC型は、パーキンソニズム(無動、筋強剛を主徴とし、時に振戦を伴いL-dopaへの
反応は不良)と認知症(意欲低下を主体とした前頭葉皮質下性認知症症状)を単独、もしくは複合して示す。
PDC型にALS症状を合併することがある。(3)神経病理学的所見:ALS型では典型的ALS所見を認める。
PDC型では黒質変性、基底核変性を認める。神経原線維変化の出現量は、PDC型では大量であり、ALS
型では少ない。好発部位は、脳幹被蓋の諸核、黒質、マイネルト核、間脳、側頭葉内側部で、分布は加齢
性変化を超えて広範囲である。PDC型の中にも、典型的ALS病変を認める症例がある。アミロイド老人斑を
伴う症例があるが、主体はタウ蛋白の蓄積である。
2.原因
これまでに、遺 伝 説 、環 境 因 説 ( 微 量 ミネラル /重 金 属 説 、ソテツに含 まれる神 経 毒 説 ) 、ウイル
ス説 などが提 唱 されたが、確 立 したものはない。ALS/PDC の中 枢 神 経 系 には、異 常 にリン酸 化
され たタウ 蛋 白 が 多 量 に 蓄 積 しており 、神 経 細 胞 死 との 関 連 が 推 察 され ている 。また、前 頭 側
頭 型 脳 葉 変 性 症 と筋 萎 縮 性 側 索 硬 化 症 で同 定 された TDP-43 蛋 白 質 とパーキンソン病 に出 現
するα-synuclein 蛋 白 質 の蓄 積 も確 認 されている。
3.症状
紀 伊 半 島 の ALS の臨 床 像 は、基 本 的 にその他 の地 域 の通 常 の ALS と大 差 がない。すなわち、
球 麻 痺 、四 肢 筋 萎 縮 、錐 体 路 徴 候 が主 症 状 で、病 期 の進 行 とともに呼 吸 筋 麻 痺 が出 現 する。
発 症 年 齢 は、平 均 60.0 歳 で、球 麻 痺 で発 症 するものが多 い。一 方 、 PDC の平 均 発 症 年 齢 は
66.5 歳 で、主 症 状 は、物 忘 れや意 欲 低 下 を主 徴 とする認 知 症 とパーキンソン症 状 で、多 くの症
例 で運 動 ニューロン徴 候 を合 併 する。ALS/PDC 症 例 の 約 80%に ALS もしくは PDC の家 族 歴
がある。
4.治療法
有 効 な治 療 法 はない。L-dopa は、一 部 の症 例 のパーキンソン症 状 に対 して有 効 なことがある。
ALS 症 状 に対 しては、リルゾールやエダラボンを使 用 する。認 知 症 状 に対 しては、コリンエステラ
ーゼ阻 害 薬 やグルタミン酸 NMDA 受 容 体 拮 抗 薬 が有 効 な場 合 がある。
5.予後
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