資料1-2 指定難病に係る新規の疾病追加について情報提供のあった疾病(個票(第54回指定難病検討委員会において検討する疾病)) (17 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_37543.html |
出典情報 | 厚生科学審議会 疾病対策部会指定難病検討委員会(第54回 1/31)《厚生労働省》 |
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○ 概要
1.概要
神経核内封入体病 (Neuronal intranuclear inclusion disease : NIID)は、長らく共通する病理組織学的な
特徴に基づいて提唱されてきた神経変性疾患である。H&E 染色標本にてエオジン好性に染色され、抗ユビ
キチン抗体もしくは抗 p62 抗体により陽性に染色される核内封入体が、中枢神経系および末梢神経系の
神経細胞、glia 細胞、Schwann 細胞さらに一般臓器の細胞の核内に広く認められる神経変性疾患とされて
きた。当初は NIID 症例ごとに異なる臨床症候が報告されていたため臨床診断は困難とされ、多くの症例が
剖検で NIID と診断される状況であった。
2011 年に皮膚生検が NIID の生前診断に有効であると報告された後、頭部 MRI 画像上で白質脳症を呈
し、DWI (Diffusion weighted image) 画像にて、大脳の皮髄境界が高信号を呈するといった特徴的な所見を
呈する高齢発症の認知症例が多く診断されるようになっている。2019 年には、NIID の原因として
NOTCH2NLC 遺伝子の GGC リピート配列の延長が報告され、遺伝子解析での診断が可能となっている。
発症年齢については、小児発症例から 60 代以降の高齢発症例まで幅広く報告されている。高齢発症で認
知症および白質脳症を呈する症例が大多数を占めているが、比較的若年発症で末梢神経障害および筋力
低下を呈する症例、亜急性の脳炎様症状を呈する症例をはじめ、多彩な症状を呈する症例が報告されて
いる。
2.原因
NIID は神経系の細胞および一般臓器の細胞の核内に広く核内封入体を認めることを特徴とする。
NOTCH2NLC 遺伝子の GGC リピート配列の延長が原因とされているが、リピートの延長が認められていて
も発症しない症例も報告されており、現在も、封入体や遺伝要因を手がかりに発症機序および原因につい
ては研究が進められている。
3.症状
NOTCH2NLC 遺伝子の GGC リピート配列の延長を認めた NIID 150 例の解析では、初発症状として、もの
忘れを主訴とする群、筋力低下が前景となる群、さらに、もの忘れあるいは筋力低下が前景に立たない
NIID 症例群の3群が認められているが、いずれの群においても、末梢神経障害および自律神経障害を伴う
症例が多い。
もの忘れを初発症状に受診する症例は、平均発症年齢は 60 代後半で、縮瞳、失調、膀胱機能障害、遷
延する意識障害などが高頻度に認められている。また、意識障害、発熱、頭痛および嘔吐を呈する亜急性
の脳炎様の症状を認める症例もある。
筋力低下群については、発症年齢が平均で 20 代後半と、他の群に比べて低いかわりに、病期の長い傾
向が認められている。四肢筋力低下、感覚障害、縮瞳、膀胱機能障害、嘔吐発作などが認められる。末梢
神経障害に伴う症候に加えて自律神経障害に伴った症候が多く認められている。
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