資料1-2 指定難病に係る新規の疾病追加について情報提供のあった疾病(個票(第54回指定難病検討委員会において検討する疾病)) (24 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_37543.html |
出典情報 | 厚生科学審議会 疾病対策部会指定難病検討委員会(第54回 1/31)《厚生労働省》 |
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○ 概要
1. 概要
N–methyl–D–aspartate (NMDA) 受容体抗体脳炎は、3 ヶ月以内に急速に進行する新たな神経・精神症候
と NMDA 受容体を標的とする自己抗体によって生じる自己免疫介在性脳炎・脳症である。本邦の自己免疫
介在性脳炎・脳症のうち、最も頻度の高い疾患である。多くは若年女性に発症するが、乳児から高齢者ま
で幅広い年齢に分布する。急性期免疫治療が奏功する予後良好な群がある一方、再発を繰り返し、認知
機能障害や行動異常をはじめとした症候を残し、慢性の経過を呈する群がある。
2.原因
NMDA 受容体を標的とする自己抗体 (IgG 型 GluN1 抗体) が原因となり、NMDA 受容体に関連するシナプ
ス伝達が障害され、急速に進行する神経・精神症候を呈する。
3.症状
3 ヶ月以内に急速に進行する新規の神経・精神症候を呈する。精神・行動異常もしくは認知機能障害、言
語促拍、発語量低下、無言をはじめとした言語障害、けいれん発作、運動異常 (ジスキネジアもしくは筋強
剛・姿勢異常など)、意識レベルの低下、自律神経障害もしくは中枢性低換気などの臨床症候を呈し、約 7
割は集中治療室での治療が必要である。記銘力障害、注意力障害を含めた認知機能障害、精神・行動異
常が長期に遷延することがある。全患者の約 8 割が女性である。卵巣奇形腫を併発することがあるが、多く
は良性である。
4.治療法
急性期および維持期においてエビデンスの確立した治療法はない。急性期の治療として、ステロイドパル
ス療法、免疫グロブリン大量静注療法 (IVIg)、血液浄化療法による免疫修飾療法が行われることが多い。
これらの治療に抵抗する場合、リツキシマブ、シクロホスファミド静注療法が行われることがある。けいれん
発作には抗てんかん薬を、精神症候には向精神薬をはじめとした対症療法が行われることがある。呼吸障
害、重度の自律神経障害には全身管理が必要である。腫瘍を併発する場合には外科的治療などを行う。
免疫修飾療法、対症療法、全身管理、リハビリテーションなどを集学的に行う。
5.予後
急性期の免疫修飾療法により、発症から 24 ヶ月間に modified Rankin Scale (mRS) が 2 以下に改善する
症例は約 8 割である。急性期に呼吸不全により死亡に至ることがある。長期的に、記銘力障害、注意力障
害を含めた認知機能障害、精神・行動異常が遷延し、免疫抑制療法による維持療法を要することが多い。
再発率は 20-25%とされているが、これまでの報告では観察期間が十分ではなく、長期的な再発率は明ら
かにされていない。
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