資料1-2 指定難病に係る新規の疾病追加について情報提供のあった疾病(個票(第54回指定難病検討委員会において検討する疾病)) (121 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_37543.html |
出典情報 | 厚生科学審議会 疾病対策部会指定難病検討委員会(第54回 1/31)《厚生労働省》 |
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○ 概要
1. 概要
中性脂肪蓄積心筋血管症(Triglyceride deposit cardiomyovasculopathy, TGCV)は、2008 年に我が国の
心臓移植待機症例から見出された新規疾患概念である。2009 年から厚生労働省難治性疾患克服研究事
業として研究が進められてきた。心筋細胞、血管平滑筋細胞等において、本来のエネルギー源である中性
脂肪(TG)の分解が何らかの原因で障害されるため、細胞内に TG が蓄積するとともにエネルギー不全
(Energy failure)が生じると考えられている。臓器レベルでは、心筋への TG 蓄積、TG 蓄積型のびまん性冠
動脈硬化を来し、患者は成人発症の心不全、冠動脈疾患、心室性不整脈等を呈する。TG が異所的に細胞
内に蓄積することが特徴で、血清 TG 値や体格指数 (Body mass index)などは、診断的価値がない。
2.原因
本症の発症の機構、病態進展機構は未解明である。
3.症状
生来健康で、青年期から壮年期に心症状、狭心症状等が出現する。発症後、長期の療養が必要で、最近
行われた TGCV 患者会のアンケート調査によると平均療養期間は 10 年(最短 7 か月~最長 27 年)であ
る。進行すると動悸、息切れ、労作時呼吸困難、易疲労感、浮腫、咳、体重増加、頻尿(特に夜間)などの
心不全症状を訴える。重症例では安静時呼吸困難、起座呼吸などを呈する。本症に認められる冠動脈病
変は、びまん性であることが特徴であり、狭心症は労作時のみならず安静時や夜間にも生じる。ニトログリ
セリン錠、亜硝酸薬が奏功しない場合がある。また、不整脈による脈の欠滞、動悸、意識消失発作などを来
す場合がある。心肺停止の既往を持つものが多く、突然死例の報告もある。Energy failure に関連する症状
として全身倦怠感、寒冷耐性の低下、空腹時の易疲労感を訴える場合がある。その他の臓器細胞障害とし
て、膵外分泌/内分泌細胞、糸球体足細胞、タイプ I 型線維、末梢血顆粒球(Jordans 異常、後述)等へ TG
蓄積が報告されている。上述の如く TGCV は、最近、発見された病態であり、認知度が低いため診断遅延、
別診断、未診断の問題が存在する。2013 年-2018 年のレジストリ調査では、発症から登録までの期間は約
10 年であった。
4.治療法
心不全、狭心症、不整脈に対する内科的或いは外科的な標準治療を受けているが、治療抵抗性である。
大阪大学医学部附属病院でアカデミア開発された治療薬 CNT-01(トリカプリン/トリスデカノインを主成分)
は、日本医療研究開発機構(AMED)の難治性疾患実用化研究事業として3度の医師主導治験が行われた
結果、CNT-01 は、2020 年 6 月 19 日、厚生労働省より先駆け審査指定制度対象品目に指定された(薬生
薬審発 0619 第 1 号)。その後、国内製薬企業が開発を承継、希少疾病用医薬品指定も受け、現在、第
IIb/III 相試験が行われている。
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