【資料2】薬剤耐性ワンヘルス動向調査年次報告書2024(たたき台) (101 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_47987.html |
出典情報 | 薬剤耐性ワンヘルス動向調査検討会(第12回 1/8)《厚生労働省》 |
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検査所において保存管理している株(p.68, v. Salmonella spp.参照。全国 15 か所の食鳥処理場の鶏の
盲腸便から分離されたもの)である。多くの血清型は、コアゲノム系統樹上でも、血清型毎に他から
独立したクラスター(基本的には同じ血清型で構成されるグループ)を形成した(図 4)。
コアゲノム系統樹上で、テトラサイクリンやトリメトプリム、カナマイシン耐性遺伝子を保有する
株の多くは、系統樹上方に位置する Infantis クラスターと下方に位置する Schwarzengrund クラスタ
ーに含まれた。ESBL または ampC 遺伝子を保有する株は、全体の 3%にとどまっており、複数の系統
に散見された(なお、通常はプラスミド上に存在する ESBL または ampC 遺伝子が、実際に全てプラ
スミドに存在しているかどうかは、今回のゲノム解析からは分からない)。マクロライド耐性遺伝子
は、全体の 1%の株が保有し複数の系統から検出されたが、mph(A)保有の 12 株のうち 8 株(67%)は
Blockley クラスターに含まれた。
全データセットには 75 種類の血清型が含まれ、食品由来株と動物由来株では主要な血清型の分布が
類似していた(図 5)。具体的には各由来株の血清型頻度で上位二つは Schwarzengrund(食品由来株
のうち 62%、動物由来株のうち 72%)と Infantis(13%、19%)で一致し、これらは各由来株において
全体の 75%以上を占めた。一方、これら二つの由来株とヒト由来株の間には血清型の分布に違いが確
認された。ヒト由来株では Enteritidis(ヒト由来株のうち 20%。原因食品は主に鶏卵やその関連食品
であるが、上記の地方衛生研究所で扱っている食品検体に鶏卵は含まれない)、4:i:-(10%)、
Thompson(8%)が多いものの、全体として非常に多様であった。
検出された耐性遺伝子の内訳を、ヒト由来株、食品由来株、動物由来株の 3 群で比較したところ、
カナマイシン耐性遺伝子に関してはどの群でも aph(3')-Ia の割合が 98%以上であった(図 4)。しか
し、テトラサイクリン耐性遺伝子に関しては tet(A) の割合が食品由来株と動物由来株で 97%以上であ
る一方、ヒト由来株では 61%であり、ヒト由来株では tet(B)も 28%の割合で検出された。同様に、ト
リメトプリム耐性遺伝子に関しては dfrA14 の割合が食品由来株と動物由来株で 96%以上である一方、
ヒト由来株では 58%であり、ヒト由来株では dfrA12 が 18%、dfrA27 が 11%の割合で検出された。従
って、テトラサイクリン耐性遺伝子とトリメトプリム耐性遺伝子の保有パターンは明らかに、食品由
来株と動物由来株で類似している一方、ヒト由来株には相違が見られた。この相違は、前述の由来間
での血清型分布の違いが要因の一つであることが考えられた。
ホスホマイシン耐性遺伝子に関しては、検出されたのは 1,613 株中 43 株と低頻度であり、43 株中
39 株が fosA7 または fosA7.2 を保有していた。43 株の由来別での保有遺伝子の内訳として、fosA7.2
の割合は動物由来株では 100%(5/5 株)、ヒト由来株では 65%(13/20 株)であるのに対し、食品由
来株では 17%(3/18 株)であり、食品由来株と動物由来株の保有する遺伝子の割合が類似している訳
ではなかった。食品由来株では fosA7 の割合が 83%(15/18 株)であり、当該 15 株はすべて系統樹上
で隣接してクラスターを形成していた。そのうち 13 株は輸入鶏肉由来株であり、その影響で食品由来
株と動物由来株のホスホマイシン耐性遺伝子保有パターンが異なっていた可能性がある。
次に、食品からヒトへ耐性遺伝子保有株が伝播した可能性を検討した。ESBL 遺伝子のうち、ヒト由
来株と食品または動物由来株との双方に見つかったのは blaCTX-M-15 だけであり、血清型 Blockley(ヒト
3 株、食品 6 株)により形成されたクラスター内のヒト由来 3 株と食品由来 2 株が保有していた。
Blockley 株で作成したコアゲノム系統樹を図 6 上部に示した。blaCTX-M-15 保有の 5 株は他の耐性遺伝子
の保有において一致していて、これらのヒト由来株と食品由来株は、それぞれ分離年が 2017 年~2019
年と 2018 年であった(図 6 の Blockley 系統樹の二つの四角枠内)。ゲノム解析を行った少数の
Blockley 株中に極めて近縁 (6-10SNPs) のヒト由来株ー食品由来株のペア(図6の A cluster) が確認
されたことから、この blaCTX-M-15 保有のヒト由来株が食品由来株の伝播による可能性が強く示唆され
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