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【資料2】薬剤耐性ワンヘルス動向調査年次報告書2024(たたき台) (108 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_47987.html
出典情報 薬剤耐性ワンヘルス動向調査検討会(第12回 1/8)《厚生労働省》
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Campylobacter spp.
2021-2024 年に国立感染症研究所が受け入れゲノム解析を実施した Campylobacter spp. 682 株(う
ち食品由来(首都圏に流通する鶏肉由来)が 57 株、動物由来(と畜場の牛と豚の直腸便由来および食
鳥処理場の鶏の盲腸便由来)が 364 株と、ヒト由来が 261 株)のゲノムデータから、Campylobacter

jejuni(635 株)と Campylobacter coli(47 株)それぞれについてコアゲノム系統樹を構築した(図
11、12)。系統樹の横には CC(Clonal Complex)と由来、テトラサイクリン、フルオロキノロン、
マクロライド、アミノグリコシドに対する耐性遺伝子の保有もしくは耐性に寄与する変異の有無を示
した。C. jejuni で最も頻度の多い CC は ST-21 complex(232/635 = 37%)である一方、C. coli で最
も頻度が多いのは ST-828 complex(32/47 = 68%)であった。耐性遺伝子のうち最も保有頻度の高い
テトラサイクリン耐性遺伝子には、tet(O)と tet(O/M/O) という 2 種類が存在するが、C. jejuni におけ
るその内訳(由来ごとの、テトラサイクリン耐性遺伝子保有株のうちの tet(O)保有株の割合)は、ヒ
ト由来株で 52%、食品由来株で 45%、動物由来株で 44%であり、群間で有意な違いはなかった。マク
ロライド耐性に寄与する因子として検出されたのは、50S リボソームタンパク L22 のアミノ酸置換と
23S rRNA 遺伝子の塩基置換であり、erm(B) は検出されなかった。50S リボソームタンパク L22 のア
ミノ酸置換または 23S rRNA 遺伝子の塩基置換を有していた株の割合は、C. coli では 43%、C. jejuni
では 15%であった。
菌の分離されたホストに関して、C. jejuni の由来ホストは豚以外(ヒト、鶏、牛)である(図 11、
13)一方、C. coli の由来ホストは豚が過半数であった(図 12、14)。C. jejuni と C. coli それぞれに
おいて、由来間で CC(又は ST)の内訳を比較すると、どちらの種でも由来間に CC 内訳の明瞭な類
似は認められなかった(図 13、14)。また、C. coli は C. jejuni よりも、テトラサイクリン耐性に寄与
する遺伝子、マクロライド耐性に寄与する変異、アミノグリコシド耐性に寄与する遺伝子の保有割合
が高かった(図 15)。テトラサイクリン耐性に寄与する遺伝子、フルオロキノロン耐性に寄与する変
異、マクロライド耐性に寄与する変異、アミノグリコシド耐性に寄与する遺伝子のうち 3 種類以上を
有する場合を多剤耐性と定義した場合、その割合は、C. coli で 45%、C. jejuni で 5%であった。なお、

C. jejuni、C. coli 両方とも ESBL 遺伝子を保有する株は見つからなかった。
さらに、C. jejuni の系統樹上で隣接しているヒト由来株と食品由来株のうち、それらの間の枝長が
短く(コアゲノムの塩基配列を比較した際の SNP の数が少ない)、ヒト由来株の分離年が食品由来株
の分離年(2024 年)に比較的近い時期(2022 年、2023 年)の組合せを図 16 に示した。これらの株
の組合せは、ST-21 complex、ST-48 complex、ST-22 のいずれかに属していた(このうち ST-22
は、ギラン・バレー症候群発症のリスクが高いことで知られている)。これらのヒト由来株ー食品由
来株のペアごとに、コアゲノム上の SNP を検出したところ、SNP 数は少なくとも 23 個であった。今
回分析しているヒト由来株と食品由来株は、同一食中毒事例のヒトと原因食品から分離されたもので
はないが、Salmonella で検出されたのと同レベルに極めて近縁な株のペアは、C. jejuni では見つから
なかった。一方、C. coli では、ヒト由来株と食品由来株の間の枝長が C. jejuni のように短い組合せは
見つからなかった。今回の解析では、C. jejuni の食品由来の株数はヒト由来株の約 1/5 であり、食品
を介したヒトへの C. jejuni の伝播の可能性を検討するには、さらなる食品由来株サンプルのデータの
拡充が望まれる。

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